好きだと素直に言えたなら、

あん

episode7

「寒いでしょ、これ」

車を出す前に潤は自分が来ていたパーカーを私にくれた。

「寒くないの?」
「なんか歌いながら運転してたら暑くなっちゃったんだよね」

相変わらず兄は変人だ。
遠慮なく羽織らせてもらうと潤の温もりを感じる。

「よっしーさん居なかったの?」
「居たけど、先帰ったの」
「じゃあ渉くんと2人きりだったんだ?」
「そうだけど?なに?」
「いや?なんでもないけど?」

なにか言いたげな兄はきっと私が渉くんのことを好きだということを気付いている。
言ってはないけど分かってるはず。

「渉くんに言ったの?ニューヨーク行くこと」
「言ってない」

今日言うつもりだったんだけど、楽しくてつい言い忘れてしまった。

「言ってもきっと何とも思わないよ」
「おいおい、いつものポジティブな美怜さんはどこに行ってしまったんだ」

わざとふざけて声を低くしてそう言う。

「♪ずっと傍に居たって結局ただの観客だ」
「♪感情のないI'm sorry.」

それから家に着くまでずっと二人で熱唱し続けた。
こんな兄もいるし、なんだかんだ今が幸せなんだよな。

それが壊れるのが怖いんだ。

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コメント

  • Kまる

    気づいたら全部読んでた、更新待ってますね

    1
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