好きだと素直に言えたなら、

あん

episode5

「美怜ちゃん、何で帰るの?」

動画の撮影も終わって帰る準備をしていた時、よっしーさんにそう言われた。

「電車で帰ります」
「タクシー呼ぼうか、その格好じゃ嫌でしょ?」

よっしーさんはものすごく気が利く人なんだ。
いつもこうやって私に優しくしてくれる。

「はいこれ。余ったらクリーニング代に使って」

そう言って私に1万円札を渡してくる。

「大丈夫ですよ。タクシーはもったいないから潤に来れるか連絡してみるんで」

私は渡された1万円札を無理矢理よっしーさんの財布に戻した。

「そっか。じゃ俺もう行くね」
「はい、お疲れ様です」
「お疲れ〜」

帰っていったよっしーさんと入れ違いで渉くんがリビングに戻って来る。

「服、ごめんね。汚しちゃって」

カメラが止まったところでは声のトーンもワントーン下がる渉くん。
カメラがある時のふざけていて頼りない姿とは別人のようだ。

「気にしないでください」

ーーピロンーー

(あと30分位かかりそう)

迎えを頼んだ潤からそう連絡が来た。

(分かった。ありがとう)

「潤が迎えに来てくれるんだって?」
「そうなんです。30分位かかるみたい」
「そっか。ここでゆっくりしてていいよ。何もないけど」

そう言って渉くんは飲み物を出してくれた。

「あ、本好きなんですか?」
「うん。俺意外と本読むんだよ」
「意外ですか?」
「よくそう言われるよ」

私の中では渉くんは色んなことを知っている真面目な人っていう印象が強いからか、意外には感じなかった。

「あ、この本私も読みました」

私の好きなミステリー作家の本を見つけた。

「俺、その人の出した本は全部読んでる」
「え、私もです。好きなんですよね〜」
「あ、こっち来て」

手招きされ、渉くんについて行くと本が沢山並んだ部屋に案内された。


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