消えない思い

樹木緑

第148話 沖縄

バレー部がインハイを控えていたので、
それが終わった後の平日の火・水・木を使って、
僕と佐々木先輩は沖縄の宮古島へやって来た。

お盆前だったので混雑はさけれたけれど、
夏休みの沖縄とあってか、飛行機は満席だった。

飛行機を降りて空港を出ると、
そこはもう南国の世界だった。

空港まではホテルの送迎バスが迎えに来てくれるらしく、
僕達は外に出た後、指定の場所まで移動した。

バスは既に僕達を待っていてくれて、
ホテルまでの短い時間をバスの中から街並みを楽しんだ。

ホテルに着くと、僕はその外観に目を見張った。
このホテルはヴィラと呼ぶらしく、
一つ一つの部屋が孤立していた。

ちょうど真っ白いスパニッシュ風の
コテージが並んで立っている様な感じだ。

中に入ると、部屋の裏側は海に面していて、
プールまで付いていた。

また南国のリゾートにあるように、
裏側の一面はガラスで覆われていているか、
吹き抜けのポーチになっていたので、海が一見出来た。

ポーチにはジャグジーやハンモックなどもあり、
流石ビーチリゾート言う感じだった。

それでも、一つ一つの部屋はフェンスの様に
高い壁で覆われていたので他の部屋からは覗けず、
プライバシーは守られていた。

「どうだ? 気に入ったか?」

「先輩これ、気に入ったか?
じゃ無いですよ。
一体いくら掛かったんですか?」

「そんな事はお前は気にしなくて良いんだ。
それより、夕食までまだ時間あるけど、お前はどうしたい?

ビーチを散歩してみるか?
それとも少し休むか?」

実を言うと僕はその日は朝から少し調子が悪かった。
ずっと眠れない日が続いたので、
疲れが一気に出たのだろうと思った。

「僕、最近興奮し過ぎて眠れなかったので、
少し休んでも良いですか?」

「ああ、構わないさ。
お前、少し顔が赤いけど、気分は大丈夫か?

夏風邪は何とかが引くって言う名言があるけど、
気分悪かったらちゃんといえよ?
お前のことだから腹出して寝てたんだろう?」

「先輩〜 それ、僕にバカって言ってますか〜?」

「良いから、ほら、横になれ!」

そう言って先輩は笑いながら僕をベッドの上に押しやった。

「あ、このベッド気持ちいい!
この前の名古屋も良かったけど、
このベッドは一段と……」

そう言ってるうちに僕はスーっと眠りに落ちた。
先輩が隣に居ると言う事は、
凄く安心出来て居心地が良い。

それも手伝って、眠りに落ちるのは
早かった。

どれ位眠っていたのか分からないけど、
目が覚めると、すっかりと日が落ちて外は暗くなっていた。
でもプールのエリアには明々と明かりが付いていて、
先輩が泳いでいるのが見えた。

ベッドルームはプールのすぐ目の前に面していて、
ガラスドアを全開にすることができる。

いつの間にか先輩がカラスドアを全開にし,
風通しを良くしていた。

海から吹く風が気持ちよくて、
起きがけに少しボーッとして先輩を見ていた。

「お、目覚めたか?」

先輩がプールサイドに寄ってきて、
僕が目覚めた事に気付くと、プールからさっと出てきた。

その姿に僕はギョッとした。
何と先輩は全裸で泳いでいたのだ。

「せ、せ、先輩! 何と言うハレンチな格好で……」

僕が目を丸々としていると、

「南国って開放的な気分になるよな?
お前も裸で入ってみるか?
気持ちいぞ!」

そう言って濡れた体をタオルで拭いた。

プールの水が先輩の髪から、体から滴る姿を見ると、
僕の心臓が跳ねた。

目の前に全裸で立つ先輩にドギマギとしていると、
ドアのベルが鳴った。

「あ、ルームサービスだな。
お前が寝てたからレストランをキャンセルして
ルームサービスに変えてもらったよ。
フードのクオリティーは同じはずだ」

そう言って颯爽とローブを纏うと、
ドアまで行き夕食を受け取っていた。

カートを押して先輩が部屋に戻ってくると、
予め用意してあったテーブルの上に夕食を並べた。

「ほら、食うぞ。
起きてこいよ」

先輩がそう声をかけると、
僕はベッドの中から起き出してテーブルについた。

「どうだ? 気分は?」

「まだボーッとしてます」

そう言うと、先輩が自分のおでこを僕のおでこにくっつけた。

「ん~? 少し熱いな。
熱あるのかな?」

「体中火照ってるって感覚は有るんですけど、
熱があるって感じじゃ無いんですよね。
少しは怠くはあるんですけど……
きっと興奮疲れだと思います。
ずっと眠れない日が続いたので……

それより、お腹はペコペコで食欲は問題ありません!
さあ、食べましょう!」

そう言って僕はサラダに手を付けた。

メインはホワイトソースのシーフードパスタだった。

「お前、パスタ好きだからパスタにしたけど……よかったか?」

「はい~
すごくおいしいです!」

「先輩のそれは何ですか?
何だか斬新な料理ですね。
それ、鯛ですよね?」

「多分な。
ファンシーな名前の付いた料理で
鯛がメインって書いてあったからな」

「流石は沖縄ですね。
海の幸が美味しい~」

そう言って僕はほっぺを抱えた。

「どうだ? 食べた後はお前もひと泳ぎしてみるか?
火照った体に気持ちいいかもだぞ?」

「そうですね、そうしましょう」

そして僕たちは食事を終えた後、
プールで涼むことにした。
でも僕はちゃんと海パンを履いていた。

足をそっとつけると、水は程よい水温で、
僕は準備運動をした後、

「えい!」

と鼻を摘んでプールに飛び込んだ。

水の冷たさが体に染み込んで、
凄く気持ちよかった。

暫く泳いでいると、ほ照りも取れて、
身体もいい具合にクールダウンしたので、
暫く休憩しようとプールにサイドにあったテーブルに腰掛けたら、
先輩がクラスにノンアルコールのシャンパンを持ってきてくれた。

「ちょっと遅くなったけど、
誕生日おめでとう」

佐々木先輩がそう言って僕のグラスに乾杯すると、
僕は一気にシャンパンを喉に流し込んだ。

「これ、本当にノンアルコールですか?
僕、また何だか火照って……」

そう言った瞬間、先輩の唇が僕の唇に重なった。

「お前の唇……
ゾッとするほど赤い……」

そう言って先輩は僕の唇を指でなぞった。

先輩を見上げた僕は彼を見て驚いた。

先輩は顔を真っ赤にして、

「フーッ、フーッ」

と肩で浅く息をし、汗をかいていた。

「もしかして先輩…… 発情してる……?」

先輩の息は荒く、
先輩こそ顔が火照った様にして、
潤んだ瞳で僕を見下ろして来た。

「お前、未だ気付いてないのか?」

「え?」

「要……」

先輩が僕の手を引いてベッドまで連れて来てくれると、
僕を一気にベッドに押し倒した。

そして激しく僕の唇を奪うと、
僕の体は次第に熱くなり、
先輩の熱と先輩の発情した匂いで
何かが音を立てて崩れた。

ドクン、ドクン。

「先輩……」

「やっと気付いたのか?」

「僕、発情してる?」

先輩はコクリと頷くと、
僕の首筋めがけてキスの雨を降らせて来た。

先輩の唇の感覚と共に、僕の鼓動は早くなり、
体の熱が強みを増して行った。

「あ、僕、抑制剤がカバンに……」

そう言ってカバンに手を伸ばした時、
先輩の手が僕の腕を掴んだ。

「飲むな……」

「え?」

「抑制剤は飲まないでくれ!」

「でも……」

「大丈夫だ。
責任は取る!
素のままのお前が感じたい……」

少し迷ったけど、
僕はカバンに向けて伸ばした手を引き、
そまま先輩の背にそっとその手を回した。

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