消えない思い

樹木緑

第88話 何かあったの?

「おはようございます、佐々木先輩」

僕は朝一番で先輩に会えて凄く嬉しかった。

でも、先輩は少し目を泳がせながら、

「おはよう」

と言っただけで、僕とは目を合わせずに

「ちょっと浩二借りて行っていいか?」

と尋ねてきた。

その問いに、僕は 

『はい』

以外言えなかった。

おはようだけ?
僕にもっと話すこと無いの?
何故そんなよそよそしいの?
何か昨日あったの?

何の説明もされないまま、
僕は校門に一人残され、
去っていく先輩たちを見送っていた。

「おはよう赤城君!」

そう言って校門を潜ったのは奥野さんだった。

「あ、奥野さん、おはようございます」

「どうしたの?
こんなところでボーっとしちゃって。
ちゃんと朝ごはん食べてきた?」

奥野さんの温かい言葉に、
少し泣きそうになりながらも、

「今日は後かたずけ頑張ろうね」

と頑張って笑顔を作った。

そんな僕を悟ってか、

「ねえ、何かあったの?
何故泣きそうな顔をしているの?」

と奥野さんが尋ねてきた。

「僕は大丈夫です!
さ、教室へ急ぎましょう!」

そうカラ元気で答えて、
奥野さんと一緒に自転車置き場まで
歩いて行った。

サッシの良い奥野さんは、恐らく、
これ以上聞いてはいけないと思ったのか、
それ以上突っ込んで聞いては来なかった。

そんな奥野さんに気使いに、
僕は何時も救われている。

「ねえ、赤城君って明日は何か予定あるの?」

奥野さんの突然の質問に
ビックリしながらも、

「明日は矢野先輩と出かける約束が……」

と言うと、

「あら、丁度良かった!
何も無かったら、先輩と二人で
家で臨時のバイトしない?
時給弾むわよ!」

と、思っても居なかった質問が返って来た。

「それ、面白そうですね。
僕、矢野先輩に聞いておきますね」

そう言うと、早速先輩にメッセージを送った。

すると以外にも直ぐに返事が返って来た。

あれ?
佐々木先輩と話してるんじゃなかったの?
別に大した用事では無かった?

そう思いながらメッセージの返事を見ると、

「勿論OKだよ。
楽しそうだね。
じゃあ、明日は何時に
奥野さんの所へ行けばいいのかな?」

とあった。

「奥野さん、
先輩、OKらしいですよ。
明日は何時に行けばいいですか?」

奥野さんはパッと目を見開いて嬉しそうに、

「ヤリー!
本当に良いの?
うわ~ 明日が楽しみ!
女の子のお客様が増えるかも!」

と言って舌をペロッとだした。
そして続けて、

「それじゃあ、10時に良いかな?
お昼が始まる前に色々と説明しておきたいし!」

「僕は全然大丈夫ですよ。
先輩にもそのように伝えておきますね」

そう言って、僕達は教室へと急いだ。

簡単なHRがあった後、
全校生徒はグラウンドへ出て、
テントやテーブル、
体育祭で使った応団幕や備品、装飾品
その他もろもろのものを方付け始めた。

佐々木先輩が、
生徒会役員席で色々と指示を出しながら
こまごまと動き回っているのが目についた。

やっぱり、落ち着いて見ると、
佐々木先輩はカッコイイ。
特に何かしている時は、
本当に出来る男と言う様な感じで、
僕は先輩のそんな男らしさを再確認する以外なかった。

そんな時、佐々木先輩と目が合った。
僕はドキッとして、
目で先輩に

『お~い』

と語りかけたけど、
先輩はサッと僕から目をそらした。

え?
僕に気付かなかった?
そんなことは無い……
あれは明らかに僕と気が付いたはずだ。

間違いない。
先輩は僕を避けている。

一気に頭の先から、
何とも言えない感情が
ブワッと全身を駆け巡った。

何故?
僕、何かした?
昨日の話し合いはうまくいかなかったの?
でも、今朝の矢野先輩は割と普通だった。
一体何があったの?

僕は居てもたっても居られなかった。
今すぐ佐々木先輩の所まで駆け寄って、
訳を聞きたかった。

体育祭の方付けは矢野先輩が言ったとおりに、
2時間ほどでお開きになった。

僕は凄く佐々木先輩に会いたかったけど、
タイミングが悪いのか、
その日は結局は、
佐々木先輩に会う事は出来なかった。

佐々木先輩の態度には納得できなかったけど、
会えなのであれば仕方がない。

でも、携帯にも出てくれなかった。

多分、生徒会の仕事が
残ってるせいもあるのだろう。
部活動だってある筈だ。
後2週間後に
インハイ予選だって控えている。

僕は自分に言い聞かせた。
大丈夫、大丈夫。

連絡が取れないので、
僕は、携帯にメッセージを送ることに決めた。

家へ帰り、何度か先輩の携帯に
メッセージを送ったけど、
結局その日に先輩からの
返事が来ることは無かった。

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