消えない思い

樹木緑

第86話 お母さんと恋バナ3

僕は少しドキッとして、

「だけどね……何?」

聞いてみるのは怖かったけど、
勇気を出して聞いてみた。

お母さんは僕の瞳を覗き込んで、

「何があっても、
僕と司君は、要の味方だから。
何があっても、要の事、愛してるから」

意味不明にそう言ったので、
僕は更に不安になった。
お父さんと、お母さんが僕を凄く
愛してくれている事は分かっている。
でも、こんな風に、意味不明で、
意味深の様に改めて言われたのは初めてだ。

そしてお母さんは続けて、

「要と佐々木君からは、
僕達と同じ匂いがする」

そう言ったので、少し、何故?
と疑問に思った。
運命の番ってそう言うものじゃないの?
だから僕は運命の番の事を言ってるんだと思って、

「うん、僕達、運命の番らしいんだ」

とお母さんに言うと、
お母さんは直ぐに、
そこは分かってるって表情をして、

「うん、君たちが運命の番だって事は
直ぐに分かった。
僕の言う、僕達と同じ匂いって言うのは……」

「うん、言うのは?」

「君たち、多分離れられない運命にあるよ」

「離れられない運命?
それが運命の番なんじゃないの?
それとは違うの?」

「うん、それが運命の番だけど、
僕が言ってるのはちょっと違うかな?
どう説明すれば簡単なのか分からないけど、
今はまだ、落ち着いた関係だから良いけど、

“その時”

が来る瞬間があるんだよ。
自分ではどうにもできないって言うか、
あがなえないって言うか、
運命の歯車に乗せられてしまうと言うか……」

お母さんの言っている事を理解しようとしたけど、
経験の無い僕には難しい事なのか、
考えても、良く分からなかった。

「う~ん、
僕、良く分からないや……
それって、悪いこと?」

「そうだね~
時と、場合にもよるかも。
でも君たちからは、
僕達と同じ轍を踏む予感がするんだよね~
それか、もしくはそれ以上?」

お母さんはどんな意味で言ってるんだろう?
苦労するって事かな?
男のΩ故に非難を浴びるって事かな?
それとも何か他に……
と思いながらも、

「じゃあ、僕はどうすれば……
先輩との関係をゆっくりと気付いて行けば
良いのかな?」

と返事をしてみた。

「それはそうだけど、
でも忘れないでね。
もう一度言うけど、
何があっても、
僕と司君は、要の味方だから。
何があっても、要の事、愛してるから」

そうお母さんが強く言い終えたところで、
お父さんが、

「何、何? 2人だけで内緒話~?
僕も仲間に入れてよ!
寂しいじゃない~」

と既にパジャマに着かえて、
リビングにやって来た。

僕とお母さんは顔を見合わせた後、
ハハハと笑って、

「司君も入る?
要の恋バナ!」

とお父さんに言った後、
お父さんはウルウルと泣き始めた。

「お父さん、別に、
お嫁に行くって訳じゃないんだから、
そんなに泣かないでよ!」

僕がそう言ってお父さんをなだめると、

「要君、佐々木君の事好きなの?
矢野くんよりも?」

そうお父さんが聞いてきたので、

「何?
お父さんって僕と矢野先輩がくっついたら
そこまで悲しくない?」

僕がそう尋ねると、

「佐々木君は曲者だよ」

そう言うので、僕は

「え~?」

と思った。

「佐々木先輩のどこが曲者なの?
何を根拠に?」

とお父さんに尋ねると、

「彼は僕と同じオーラを持っている!」

との答えに僕は少しびっくりした。
一体何の事を言ってるのだろう?

「彼は危険だ。
要君が危ない!」

と訳の分からない事を言っている。

僕が少し困惑した顔をしていると、
お父さんが僕の肩を掴んで深呼吸して、

「彼は僕に似すぎてる!!
何もかもがそっくりなんだ」

と言った。
僕は増々意味が分からなかった。
そう言うところは本当に
今の矢野先輩にそっくりかもしれない。

「じゃあ、その危ないって言うのは
どんな意味で危ないの?
お父さんと同じだったら、
それこそ僕にとっては一番安全な人でしょう?」

そう僕が尋ねると、お母さんが、

「自分の操は自分で守ろうね」

と言ったので、僕は顔がカ~ッと熱くなるのを感じて、
今日公園であった出来事を思い出していた。

その表情を読み取ってか、お父さんが、

「何? もう何かあったの?
白状しなさ~い!」

と何時までもしつこく聞いていたので、
僕とお母さんは
お父さんを押さえ込むのに一苦労だった。

今夜は、お母さんと恋バナできて、
凄く楽しい一時が過ごせたけど、
佐々木先輩との時間にとっては、
僕には何だか物足りない時間となった。
矢野先輩との時間も凄く楽しくて好きだけど、
もっと、佐々木先輩と二人で
時間を過ごしたかった。

でも半面、佐々木先輩に両親の事を
紹介出来て、
彼らの裏の姿を教えることが出来て、
僕は凄くホッとした。

明日の学校は体育祭の方付けだけで、
半日だけだけど、
もし佐々木先輩に、
放課後何も無かったならば、
会いたいと思った。

ベッドに入ってからは
今日あったことを色々と反芻してみた。

お父さんの言った佐々木先輩は“危ない”や、
“自分に似ている” とは一体どういう意味なんだろう?

お母さんが

“自分の操は自分で守りなさい”

って言う意味は率直に
簡単に関係を持ってはダメだって
事なんだろうか?

お母さんの感じからは、
その言葉の裏に何か意味がありそうだったけど、
僕には全く分からない……

なぜもっと的確に教えてくれないんだろう?

そう言う事をグルグルと考えているうちに、
体育祭の夜は更けて
僕はいつの間にか眠りに落ちていた。




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