消えない思い

樹木緑

第71話 クラブ対抗リレー

僕が先輩の方をジーっと見据えると、
先輩は少しほほ笑んで、

「次のプログラムが押してきてるから
そろそろ行こうか?」

と先を歩き出した。

今までの経験もあるし、
先輩の言った事はハッキリとは
聞き取れなかったので、
僕はそのままにしておこうと思った。

矢野先輩からは、
それ以上、何かを僕に
伝えようと言う感じではなかったし、
それ以上を聞こう
と言う雰囲気でもなかったので、
僕は僕の信じた道を進むことに決め、
先輩の甘い言葉には
もう惑わされないようにしようと
心に決めた。

生徒たちの集まる応援席に戻ると、
帰りの遅いボクを心配して、
青木君と奥野さんが席の後ろをウロウロとしていた。

「ちょっと~ 
どこまでトイレに行ってるのよ~
何時までも帰ってこないから、
また誰かに絡まれてるのかと思って
凄い心配したんだよ!」

奥野さんが凄く心配そうに
僕に話しかけてきた。
青木君も、心配していたらしく、
奥野さんに同意していた。

「トイレから帰る途中で
矢野先輩に会って
ちょっとおしゃべりしてて……」

僕はそう説明した。
佐々木先輩と長瀬先輩とのやり取りは、
言わない方が良いと思い、その事は話さなかった。

「でも矢野先輩って、
神出鬼没よね」

その奥野さんの言葉に、
少し僕はひかかった。

そう言えば、矢野先輩って
良く僕のピンチにタイミングよく現れる。
これって何か意味があるのだろうか?
そう思って、

イヤイヤ、もう考えない、考えない

と自分に言い聞かせた。

「矢野先輩は置いといて、
次の僕達のプログラムって
なんでしたっけ?」

「あ、そうそう、
これプログラム」

そう言って奥野さんが僕に
プログラムを渡してくれた。

午後に僕の出るプログラムは1つ。

全校生徒による、フォークダンス。
でもその前に、クラブ対抗リレーがあるので、
その応援をしなければいけなかった。

運動部と文化部は別々にリレーをする。

その中には佐々木先輩も、
矢野先輩も入っていた。
選手のメインは大体3年生で、
2年生の部員は
矢野先輩が走るのが早い事を知っていた。

どうやら矢野先輩は3年間、
美術部のリレー選手として
出場したらしい。

高校に入学した時は、
短距離走者として
陸上部からスカウトが来たらしいが、
美術より興味が持てないと、
丁寧にお断りしたらしい。

これを言うと矢野先輩に失礼だけど、
本当に人って見かけによらないんだな~
と思った。

その矢野先輩は美術部選手のアンカー。

佐々木先輩もバレー部のアンカーの様だった。

僕はつくずく、
彼らが同じ土俵で、
争わなくて良かったと思った。

リレーは文化部から行われた。
恐らく、運動部の方が見栄えが良いから、
面白い方を後にと言う事なのだろう。

文化部の選手以外は、
トラックの内側にそれぞれ
クラブごとに陣取って、
応援の準備に取り掛かった。

このクラブリレーは男女ミックスだ。
スタートは女子の選手から。

同じ土俵に立った文化部は、
美術部、書道部、茶道部、映画研究部、
写真部、情報処理部、科学部、吹奏楽部、演劇部、
漫画研究部、軽音部、文芸部等、
男女が存在するクラブのみで行われた。

同じように運動部は、
バレー部、バスケ部、剣道部、フェンシング部、
サッカー部、野球部、陸上部、テニス部、
バトミントン部、卓球部、ボート部、アーチェリー部、
弓道部、柔道部、空手部
等で行われた。

文化部はそうでもなかったが、
運動部はユニフォーム、
それにバトンはそのクラブに由来のあるもの。

例えば、僕達美術部が選んだバトンは筆。
バレー部だと、バレーボール。
投げて渡すのは厳禁。
必ず手渡し。
剣道部何て有利だ。
バトンになるのは、
あの長い竹刀。

僕はちょっとワクワクした。
何だか楽しそうだったから。

リレーはそれぞれ1部と2部に分かれ、
美術部は1部のグループだった。

なんとアーチェリー部には、
アーチェリー部員として
在籍していた長瀬先輩が居た。

そうだよな、
幾ら婚約してるからって
クラブまでは追っかけて来ないよな。
現に櫛田君でさえ、
バレー部に居るわけではないし……

そう思いながらグラウンドのトラックを渡り、
トラックの中の一部分を、
他の美術部と陣取った。

リレーが始まるまで
グラウンドに体育座りしていたら、
不意に視線を感じた。

ふと人ごみの方を向くと、
行き交う人の波が
切れた間から、
僕の方を見つめている
佐々木先輩と目が合った。

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