消えない思い

樹木緑

第49話 約束

先輩は急に僕を抱きかかえて、
「本当に?本当に良いのか?」と嬉しそうに聞いた。
「はい、一杯、一杯考えて答えを出しました。僕、この可能性に掛けてみようと思います。」
そういうと、先輩は僕を机の上に下ろし、先輩は椅子に座り、僕と目線を合わせた。
そして僕の腰に手を回し、僕のおでこに先輩のおでこを押し当てて、
「絶対大切にする。
約束する。
俺を選んだ事、絶対、絶対後悔させない。」
と約束してくれた。
僕が先輩に微笑んだら、先輩は「目を閉じろ」と一言言って、僕が目を閉じた瞬間にキスをくれた。
先輩は恋愛初心者と言う割には自然とキスへ持っていく事が旨い。
また、雰囲気を作るのが凄く旨い。
そしてそんな先輩のキスに僕はあがなえない。

先輩とのキスは凄く甘い。
軽いキスだけなのに、凄く気持ちがいい。
何故こんな自然にキスが出来るんだろう?
ずっと先輩とキスしていたい気持ちになる。
でも同時になぜか泣きたい気持ちにもなる。
何かとても切ない。
キスされる度に一つ、一つ何かが剥がれ落ちて行っているような気持になる。

暫く先輩の胸にもたれかかり、少しの幸せを感じながら思い出した。

「あ、先輩、付き合うとなると一つだけ問題が…」
「なんだ?浩二の事か?」
「あ、いえ、矢野先輩の事は良いんです。」
「浩二の事はもういいのか?」
「そう意味では無くて…矢野先輩の事はやっぱり大好きで、大切なお兄ちゃんのような存在です。多分まだ恋愛の意味で好きですけど…」
そう言うと、先輩は中指で軽く僕のおでこをピンッとはじいたけど、続いて、
「でも、やっぱり僕の夢は僕だけの番を見つける事でしたので、僕の事を番として受け入れてくれる佐々木先輩に僕の夢を掛けてみようと思って。
先輩はストレートで分かり易いし…なんだか時間をかけて理解し合えれば、運命の番として、違った意味での愛がハグぐめると思ったし…」
というと、先輩は僕の目をしっかりと見つめて、
「約束する。
俺はお前の全てを受け入れる。
浩二を好きな事も、その気持ちを持ちながら、俺を受け入れてくれることも。
お前の悲しみも、苦しみも、苦悩も、喜びも…全部俺が引き受ける。
だから俺に頼れ!」
そう言って、何処から出してきたのか、僕に指輪をくれた。
「これは?」そう聞くと、
「将来の約束。」と先輩が言った。
「そんな早々と決めても良いんですか?もしうまくいかなかったら…」
「心配するな。俺がお前を離れると言う事は絶対ない。」
「先輩、絶対という言葉なんて使わない方が良いですよ。絶対なんて無いんですよ。」
「俺の辞書にはあるんだよ。ほら、指をだして。」
そう言って先輩に手を差し出すと、その指輪は僕の左手薬指にぴったりとはまった。
「先輩、何時の間にサイズを?」
と不思議そうに聞くと、「ただの感だよ。」と先輩は言った。
「あの…もし僕が断っていたらどうしたんですか?」
そう尋ねると、先輩は僕の方を見つめて、
「どうしたと思う?」と聞いてきた。
「質屋に売るとか?返品するとか?」
「指輪の中見て見ろよ。」
そう先輩が言うので、指輪を外して中を見ると、
中にYuya Loves Kaname Foreverと彫ってあった。
僕は真っ赤になりながら、
「先輩これ、返品も質屋もダメですよ~」と言うと、
「断られたくらいで俺が諦めると思うのか?」という一言に、僕は、なるほど!と納得してしまった。

でも、凄く、凄く嬉しかった。
先輩の特別な気持ちのこもったものが、僕だけの事を考えて選ばれたって言うのは凄く嬉しかった。
「先輩、ありがとうございます。凄く、凄く嬉しいです。
大事にします!」
そう言って僕はもう一度指輪をはめ直して、少しニヤケ顔で眺めた。
「大事にしろよ。給料の3か月分って訳じゃないがずっと貯めてた貯金、全部下ろしたよ。」
僕はもう一度じっくりと指輪を見回して、驚いた。
「ギャ~先輩…これ…ビルガリじゃないですか!」
「なんだお前、分かるのか?」
「ここに彫ってあるじゃないですか~。これ一体いくらしたんですか?高校生の買えるものじゃありませんよ。」
「だから言っただろ、この時の為にずっと貯金してたんだよ。」
「ひゃ~どうやったらそんなお金たまるんですか~?」
「ま、オヤジの選挙時にちょっと手伝いとかな。」
「は~。僕、これ、見とれてしまいます。指に着けずに家に保管しておきます。
もう怖くってはめれませ~ん。」
先輩はハハハと笑って、指輪をはめた僕の指にキスをした。

「先輩、僕も先輩に指輪を贈りたいです。先輩のサイズは?」
「お前な、そういうのはこっそりと図ってサプライズだろ?」
「そうかぁ~。そうですよね。そっちの方が嬉しいですよね。僕、恋愛初心者なんで色々と難しいです~。」
「俺もそんな変わんないぞ? だがな、な・ん・と…」
そう言って、先輩も自分の指に指輪をはめて僕の前に差し出した。
「先輩!それ…」
「ハハハ、ペアにしたかったから、自分で買ってしまったよ。いつか要の愛をこのリングにも印てくれ。」
そう言って先輩は僕の手を持ったまま、自分のリングにもキスをした。
「これってペアリングなんですね。」
「ああ、ま、悪いが俺のが男性用でお前のは女性用な。でも、要の華奢な指にぴったりだと思って…
女性用だったけどあまり女くさくも無くて躊躇せずに買ったよ。ほら、凄く似合ってる…」
そう言って先輩は僕の手のひらと照らし合わせてお互いのリングをかざした。
「ま、取り上げられても困るから、暫くは学校では、はめる事は出来ないな。」そう先輩が言うと、
「僕、絶対無くしません!」
そう言って僕は。暫く自分の手のひらを宙にかざして指輪をマジマジと眺めていた。


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