消えない思い

樹木緑

第35話

「あの…僕が好きなの、矢野先輩なんですけど…」
「知ってるよ…」
僕はフウ~といきを吐いて、
「じゃ、どうして?先輩、僕の事好きなんですか?」と尋ねてみた。
「あ、いや、なんか興味が出てな。」

興味?興味で人って付き合えるの?
それってちょっと失礼じゃない?
佐々木先輩にはお世話になったけど、まだ一度しか会ったこと無いのになぜ?

「え?興味?僕のどこにそんな興味が?僕達まだ一度しか会ってないと思うんですが?」と言い放った時に、何かが僕の鼻をくすぐった。

フワ~ン
フワ~ン

あれ?クン、クン、またあの香り?
ちょっと空気中を嗅いでみた。

「お前、フガフガやって何やってるんだ?」
「え?あ、いえ、それで、何故興味だけで僕と付き合おうと思うんですか?」

僕には良く分からなかった。
興味だけで付き合うと言う事が。

「最初はそう言う出会いもあっていいと思うが?」

本当に?人って興味だけで付き合えるものなの?
誰でもやってる事?
恋愛初心者には分からない!

「それはそうですけど、僕、やっぱり付き合う時は好きになった人が良いんですけど…」と、とりあえずは答えてみたものの、
「付き合えば、俺の事好きになるかもだぞ?」と、先輩は全然気にしてない様子だった。
でも、それもそうかもしれない。
僕に好きな人が居るのに付き合おうと言ってくるくらいの人だから…
その時、また何かが僕の鼻をくすぐった。

フワ~ン
フワ~ン

あ、またあの香りだ。
気持ちいい~ 
なんだか癖になっちゃいそう~
何だろうこれ?
猫で言ったらマタタビ?
何だか腰が抜けそう…

「要?おい?聞いてるのか?」
「え?は?すみません。何でしたっけ?」ちょっと頭がぼ~ッとした。
「お前な~。よし、俺の話を聞いていなかった罰だ。今週の日曜午後。俺の練習が引けた後で俺の買い物に付き合え。」
「え、先輩、僕日曜日は…」
「何だ?もう予定が入ってるのか?」
「いえ、そういう訳では無いんですが…」
「じゃ、2時に学校に来い。じゃあな。」
そう言って先輩は自分の教室へと戻って行った。

なんて強引な…
それに命令口調だし!
昨日とは大違い…本当に同じ人?
双子の兄弟がいるとか?
あれで矢野先輩の幼馴染とは…
でも、精神的に助けてもらったのは本当だし、現に今も心配して様子を見に来てくれたし…
ま、いっか。

そう思いながら、僕は自分の教室へと戻った。
そこには青木君と奥野さんが首を長くして僕の帰りをソワソワとして待っていた。

僕が教室のドアを開けるなり、奥野さんが、
「ちょっと、ちょっと、生徒会長、何だったの?」と、とびかかって来た。
僕はその質問をちょっと横に置いといて、
「ね、青木君、佐々木先輩って強引な人?」と尋ねた。
「あ~そうだな。我、この道を行く!タイプの人だな。でも裏表無い人だから付き合いやすいぞ。それに男気があるから情に厚いし!」と言うので、
ここでも情か!と思って、あれ? 佐々木先輩は僕に情を感じてる?と思ってしまった。

それってやっぱり僕の泣き顔を見てしまったせいかな?
僕の事、可哀そうと思ってる?
それとも、僕の秘密を共有したせいかな?
それとも矢野先輩が彼の幼馴染だから?

等と考えていたら、奥野さんがもう一度、
「ちょっと!先輩は何の用だったの?」と聞いてきたので、
「あ、いえ、ちょっとこの前お世話になったのでその事で…」と伝えると、
「な~んだ、告白かなと思ったのに!残念!浮気だったら矢野先輩に言いつけようと思ったのに!」と奥野さんはちょっと残念がっていた。
僕が慌てて、「ダメです、ダメです!矢野先輩は巻き込まないでください!」とアワアワとしていたら、彼女は「冗談よ~」と言いて笑っていた。

「あ~でも、佐々木先輩、婚約者居るでしょう?」と僕が続けて言うと、
「でもそれって政略でしょ?」と返してきたので、彼女がその事実を知っていることに僕はびっくりした。
「政略って…どこで聞いたの?」と尋ねると、
「このご時世、家同士の格をみたら、それしか考えられないでしょう?皆言ってるし!」と、さも当たり前のように答えるので、僕はびっくりしてしまった。
「へ~君って凄いね。実は僕、政略結婚ってもう現代には存在しない行為だと思っていたよ!」と伝えると、
「こんなの、少し考えれば、誰だって分かるわよ。」と奥野さんは言ったけど、恐らく僕にはそこまで考えが及ばないだろう。
「僕、今まで政略結婚した人とか聞いた事無かったので、すっかり、普通に愛し合って婚約してるのかと思っていました。」と答えると、奥野さんは
「ま、女って男が絡むとしつこいからね~。この政略結婚も女の方が先輩に入れあげたって口じゃないの?よくあるパターンだし。」
と、奥野さんがもっともな事を云ったので、僕はすごい!と納得してしまった。
そんな僕達の会話を、青木君はフンフン言って、早弁しながら隣で聞いていた。




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