消えない思い

樹木緑

第25話 ゴールデンウィーク

僕と先輩はゴールデンウィークの5月3・4・5日を使って先輩の家の別荘がある熊本・阿蘇へ行った。
東京駅で待ち合わせてそれから新幹線に乗って、博多まで。
博多まではのぞみで約6時間。
その後は九州新幹線に乗り換え熊本まで約40分。
熊本駅までは、別荘の管理人さんが迎えに来てくれていた。
そこからは車で約1時間。
残念ながら、先輩の幼馴染の方々は都合上来ることが出来なかったので、僕と先輩の二人の旅行となった。

「先パーイ!おはようございま~す。」
僕はフウフウと息を弾ませながら、キャリーケースを引っ張って、待ち合わせである東京駅の八重洲中央口入り口までやって来た。
「おはよう!迷わずに来れた?」
先輩は既に到着して僕を待っていてくれた。
僕は額の汗を拭いながら、「それがチョット迷っちゃって…時間大丈夫ですか? ほんと、電車って滅多に乗らないので、人の多さにびっくりしました!」とハーハーと息を切らしながら答えた。
「ハハ、特に今はゴールデンウィークで混んでるからね。飛行機が取れれば良かったけど、行こうと決めた時はもう満員でね。辛うじて新幹線の指定席が取れてよかったよ。」
「色々と準備ありがとうございました。」
「じゃ、新幹線の楽しみの一つでもある駅弁を買いに行こう!」
「それそれ、僕、もう楽しみで!」
「新幹線の中でも買えるけど…駅の構内だと選択肢が広がるしね!要君はどんなお弁当が食べたい?」
「そうですね~普段食べないようなものが良いですね~」
「普段食べないような物ねぇ~」と先輩がちょっと考え込んでいる。
「う~ん、牛丼は良くあるし…お寿司なんかも…」と先輩が言いかけて、
「あ、僕お寿司ダメなんです。」と答えた。
「えっ??お寿司ダメなの?何?魚アレルギーとか?」
「いえ、単にご飯と生魚を一緒に食べれないんです。」と答えると、
「じゃ、ちらし寿司とか、巻き寿司、卵なんかは大丈夫なの?」
「そうですね。乗ってるものや巻いてあるものが調理されていたら大丈夫ですね。」と答えると、
「刺身なんかは食べれるの?」と聞かれたので、
「はい!刺身単品であれば!シソの葉に巻いて食べると美味しいですよね。それに大根のけんと一緒に食べるのも大好きです。あ~なんだかよだれが出てきた~」と言うと、
「九州はお魚も美味しいからね。お手伝いさんにお刺身を用意しておくよう頼んでおくよ。」と先輩が言った。
「わぁ~すごく楽しみです。でも、先輩の家の別荘、お手伝いさんが居るんですか?」
「ああ、うん。別荘を使うときだけ特別に来てもらってるんだ。」
「何だか、至れり尽くせりですね。」と僕が言うと、
「ま、僕にとっては高校最後のゴールデンウィークだからね。思いっきりエンジョイしなくちゃ!」と先輩は言った。

結局僕は色々と悩んだ末に、色んなおかずが入った幕の内弁当を買った。
そして先輩はのり弁を買った。
ジリリリリリと言うベルのけたたましい音と共に、新幹線は走り出し、あっと言う間に博多についてしまった。
そこで乗り換え、熊本駅まで。
熊本駅に付くと、至る所にくまモンがいる。
今では、色んな所でくまモンは見ることが出来るけど、やっぱり本場は数が違う。
くまモンの山を見ると、熊本に来たんだな~と思う。
熊本には数か月前に来たばかりだが、その時は飛行機での移動だったため、新幹線だとまた違った趣向がある。
駅から先輩の別荘までは1時間ちょっと。
先輩の別荘は南阿蘇村というところにあった。
近くには阿蘇ファームランドと言う大きなテーマパークがあった。
今回は観光は計画しておらず、先輩の別荘で、ゆったり、まったり、大自然を楽しもう!がテーマだった。
僕はちゃっかりとスケッチ道具を持ってきた。
両親と春に来たと時は、観光が主だったのでスケッチできなかったけど、やっぱり写真からの写生ではなく、生をちゃんと見ながら、沢山の大自然を描こうと思ったから。

「ところで、先輩の家の別荘は何故熊本なんですか?金沢なんかは良く聞くんですが…?」
と素朴な疑問をぶつけてみた。
「あ~両親のハネムーンが九州だったみたい。阿蘇の大自然を凄く気に入ったらしくて、丁度泊まった物件が売りに出されていたからそのまま買ったみたい。」
「へ~新婚旅行で九州って渋いですね。最近は皆、結構、海外とかに行くじゃないですか…それに即買いって逆に清々しいですよね。」
「まぁ、ワーカホリックとでもいうのか、外せない商談が九州であったみたいで、そのままハネムーンにしちゃったみたい。それに、うちの両親って買い物するときはポーンといくからね。」
「はぁ、凄いですね。僕は1000円の買い物でも30分位迷っちゃいます。」と言って苦笑いした。
「ハハ、将来的に節約家になれて丁度良いじゃない?」

「ところで要君はハネムーン、何処に行きたいの?希望とかあるの?」
「そうですねぇ~」と言って僕は少し考えて、「先輩はあるんですか?」と尋ねた。
「ん~取り分け、ここに行きたいって言うのは無いんだけど、まだ行ったこと無い日本のどこかに行ってみたいかな?うんと田舎のあまり人口が無い処とか…」
「え~それって奥さんが買い物や観光好きだったらどうするんですか?」
「ハハハ、無きにしも非ずだけど、多分僕は僕の感性にあった人を選ぶんじゃないかな?ほら、買い物や観光よりも、ただ僕と一緒に居たいって言うような人!」
「先輩だったら、絶対見つける事が出来ますよ。」
「ハハハ、だと良いけどね。どう?要君、君、立候補するかい?」
「え?」
ドキン
「もういっそ、僕の所にお嫁に来る?」
ドキン
ドキン
ドキン
「せ、先輩、な、な、何冗談言ってるんですか。」と、どもると、
「ハハハ、要君はからかいがいがあるから楽しいねぇ~」
「先輩、純な僕をからかわないで下さい!緊張しちゃって心臓が破裂しそうです!そうなったら責任取ってもらいますからね~」とからかい返すと、
「そうだね~ じゃ、いっぱいからかわないとね!」と一層突っ込んでくる。
一体この人は何をしたいのだろう?????と戸惑っていると、「要君はからかうと可愛いから大好き。」とまで言って来る。
僕がドキマギして先輩の肩を「もう!」と言ってバシンと叩くと、
「あ、ほら、家があそこに見えてきたよ!」
そう言って指さしたのは、とても見晴らしの良い草原にポツリと立つ一軒家のログハウスだった。

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