ワガママな後輩彼女にフラれたら、優しい先輩彼女とお付き合いすることになりました。

三葉 空

23 大好きだよ

 僕は一人カラオケボックスにいた。

 別にこれから、ひとカラをする訳ではない。

 部屋のドアが開く。

 入って来たのは……

「よっ、フーくん」

 萌香と、

「お待たせ、史くん」

 里音さんと、

「来たよ、史」

 山瀬さんと。

「あ、みんな一緒に来たんだ」

 僕が意外そうに言うと、

「うん、途中でバッタリ会っちゃったから」

 萌香がニコッと笑って言う。

「そうね、偶然だったわ」

 里音さんも微笑んで言う。

「わたし、二人と話すのは初めてだったけど、すごく親しみやすかった」

 山瀬さんも笑って言う。

「そういえば、萌香ちゃん。風邪で結構長いこと休んでいたって聞いたけど……もう平気なの?」

 里音さんが言う。

「はい、おかげさまで」

 萌香はニコリと笑う。

「フーくんにも、告白して、キスが出来ました」

 和やかだった場の空気に、ピシリと亀裂が生じた。

「まあ、それは、山瀬さん……みちるさんのおかげだけど」

「えっ、わたし?」

「だって、みちるさんがフーくんに告白したって聞いて、死にかけていたあたしの闘志に火が付いたんだもの」

 萌香は笑顔のまま言う。

「あわわ……」

 僕は軽く震えながら、となりに座る里音さんを見た。

 さすがにこれは、里音さんでも怒って……

「……そうなの」

 里音さんは微笑んだままだった。

 それが、逆にちょっと怖いけど。

「さすが、正妻は余裕ですね」

 ふふん、と萌香は腕組みをしながら言う。

「あの、鈴原先輩」

 山瀬さんが言う。

「わたし、鈴原先輩という彼女がいると知っておきながら、史に告白したこと、謝ります。でも……後悔はしていません」

 真っ直ぐな瞳を向けて言う。

「いつから史くんのことが好きなの?」

「高校に入学した時から、ずっとです」

「そう……どういう所が好きなの?」

「何か可愛い所です」

「や、山瀬さん……恥ずかしいよ」

 僕が言うと、

「みちるって、呼んで」

「えっ? あっ……みちる……ちゃん」

「もう、照れ屋さんなんだから」

 山瀬さん……みちるちゃんは笑って言う。

「で、結局の所、これからどうするの?」

 萌香がわずかに頬を膨らませて言う。

「ていうか、フーくんの気持ちは?」

「それはもちろん……里音さんが一番だよ」

「史くん……」

 里音さんは先ほど以上に笑みを濃くして、僕のふとももに触れた。

「ぐぬぬ……見せつけてくれちゃって」

 萌香は歯噛みをする。

「これはヤバいな……美人で頭が良くて胸が大きくて、おまけに可愛らしいとか……わたし達に勝算はゼロだね、萌香ちゃん」

「みちるさん、勝手なこと言わないで!」

「でも、あきらめたくないな~」

 みちるちゃんはぐっと背伸びをして言う。

 すると、胸の形が強調された。

 僕は思わず、じっと見てしまう。

「あ、史がわたしのおっぱい見た」

「ご、ごめんなさい」

「ふふ、そういう所が好き」

「あ、あたしだって……ふぬぬ」

 萌香は自分も胸を強調しようとするけど、

「って、無理だっつーの!」

「自己処理がすぎる」

 僕は軽くツッコんだ。

「うふふ……二人とも、可愛いわね」

 里音さんが言う。

「「えっ」」

「けど、あまり私の《《彼氏に》》ちょっかいを出したら……めっ、だよ」

 そんなことを言ってくれる里音さんに、僕は見惚れてしまう。

「里音さん、そんな優しい叱り方じゃ、あたしは止まりませんよ?」

「わたしだって」

「あら、そう。だったら……」

 里音さんは微笑みながら、

「どうぞ、かかっていらっしゃい」

 そのセリフを聞いて、萌香がニヤッと笑う。

「相変わらず、余裕たっぷりですね。やっぱり、おっぱいが大きいから?」

「そうね」

「って、否定しないし! 里音さんって、実は腹黒いの?」

「萌香ちゃんだって、腹黒いでしょ?」

「ち、違うもん!」

「あ、じゃあ、わたしだけ真っ白な子だ」

「って、みちるさん、自分で言ったら台無しだから」

「そ、そっか」

 何だかんだ、楽しそうに話す彼女たちを僕は見守っていた。

「萌香、みちるちゃん」

「「えっ?」」

 二人は振り向く。

「やっぱり、里音さんが僕の彼女だから。ごめん」

 ハッキリと、僕はそう言った。

 二人は顔をうつむけてしまう。

「……分かっているよ、フーくん。あの頃からずっと、フーくんの中で里音さんが一番だって」

 萌香はふっと、顔を上げる。

「でも、あきらめないから。ごめんね」

 萌香は今までにないくらい、清々しい笑顔を見せてくれた。

「わたしだって、あきらめないよ」

 みちるちゃんも言う。

「嬉しいわ」

 里音さんが言う。

「私の彼氏がモテモテで」

「ちょっ、里音さん。やっぱり、腹黒でしょ?」

「萌香ちゃんほどじゃないわよ」

「何ですって~!」

「わたしだけはホワイトだ」

「調子に乗んな、このポッと出ちゃん!」

「ひどい!」

 賑やかに言い合う彼女たちを見て、僕は苦笑する。

「みんな、ありがとう」

 僕が言うと、言い合っていた3人は口を止めて、僕の方に振り向く。

「「「大好きだよ」」」

 その言葉に対して、僕は笑顔で返事をした。





『ワガママな後輩彼女にフラれたら、優しい先輩彼女とお付き合いすることになりました。』






 完







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