ワガママな後輩彼女にフラれたら、優しい先輩彼女とお付き合いすることになりました。

三葉 空

19 クラスメイトの女子と何気なく話すだけ

 舌の上がざらつくような感覚に苛まれていた。

『休んでいるって聞いたけど、大丈夫?』

 彼からLINEが来た。

『フーくん、わざわざ心配してくれてありがとう。ちょっと風邪を引いただけ。あたしは平気だよ(^^)v』

 何て強がりだろう。

『そっか。放課後、お見舞いに行こうか?』

『良いよ、そんなの。それよりも、ちゃんと里音さんとの時間を大切にするんだよ?』

 ああ、また強がった。

『うん、分かった。辛かったら、遠慮なく連絡してね』

『ありがとう、フーくん』

 彼とのやり取りを終えると、あたしはスマホをベッドの脇に放った。

「バッカみたい……」

 それは天然で鈍感な彼に対する八つ当たり……ではなく。

 やはり、自分に対しての言葉だ。

「……ちゅー、しておけば良かったな」

 練習だって言って、上手いこと言いくるめて。

 そうすれば……いや、でも無理だな。

 フーくんはちょっとアホだけど、変に頑固な所があるから。

 元カノのあたしと仲良くお喋りする分には良いと思っているけど。

 さすがに、キスをするのは、拒否られたし。

 本当にムカつく。

「……新しい彼氏なんて、作れないっつーの」

 相変わらず、色々な男子からアプローチされているけど。

 誰も、ピンと来ないから。

「……このまま、あたしだけ置いてけぼりなのかな?」

 それも良いのかもしれない。

 ちょっと寂しいけど、いずれは慣れるだろう。

 まだ、今は新しく彼氏を作る気分になれないけど。

 フーくんのことをあきらめてしまえば、きっと楽になる。

 だから、良いんだ。

「……へくち! うー、鼻水がぁ」

 もう、踏んだり蹴ったりだ。



      ◇



 放課後になると僕は、

『ごめんなさい、今日は委員会の仕事があるので。一緒に帰れないです』

『うん、良いよ。史くんって、どの委員会だっけ?』

『美化委員です。本当は、里音さんと一緒の図書委員会が良かったんですけど』

『私もよ……なんて』

 文面でも、おどけて少し照れる里音さんの顔が浮かんで、僕は無性に嬉しくなってしまう。

『今度、デートしましょう。それから、えっと……また、キスがしたいです』

『史くん……私もよ』

『そ、それじゃあ、また』

『うん、またね』

 僕は里音さんとの会話を終えた。

「小鳥遊くん」

 女子の声に呼ばれる。

「ああ、山瀬さん」

 クラスメイトの彼女に声を掛けられる。

 スラっとした体型でショートヘアが似合う女子だ。

「今日、美化委員の仕事でしょ? 一緒に行こ?」

「うん、そうだね」

 僕は彼女に言われて、席から立ち上がる。

「おい、史ぃ~。浮気は良くないぞ~?」

 横から鎌哲が茶化して来る。

「違うよ。山瀬さんにも迷惑だから、あまりそんなこと言わないで。ごめんね、山瀬さん」

「ううん、平気だよ」

 彼女はニコッと笑ってくれる。

「あれ、みちるってば、小鳥遊くんと一緒なの~?」

 クラスの女子が言って来る。

「うん、同じ委員会で」

「良いな~。4月の時点じゃ、小鳥遊くんノーマークだったからな~」

「ちょっと、本人を前に失礼だよ」

「あっ、いっけない」

 女子たちはキャハハと笑い合う。

 僕は苦笑する他ない。

「もう、みんな、あまりからかわないでよね」

「ああ、ごめん、ごめん」

「みちるは真面目だから、そんな略奪愛とかしないもんね~」

「りゃ、略奪愛って……昼ドラじゃないんだから」

 山瀬さんは言う。

「昼ドラとかウケる~!」

 女子たちはまた声を揃えて笑う。

「小鳥遊くん、行こ?」

「あ、うん」

 そして、僕と山瀬さんは周りからからかいを受けつつ、教室を出た。

「今日は花壇の手入れだっけ?」

 僕が尋ねると、

「うん、そうだよ」

 山瀬さんはニコッと爽やかに笑ってくれる。

「でも、小鳥遊くんはどうして、美化委員になったの?」

「いや、何か土いじりをするイメージがあったからさ……ほら、傷付いた心を癒すには良いかなって」

「傷付いたって……あっ」

 山瀬さんは察してくれたようで、

「ご、ごめんね」

「いやいや、そんな。気を遣わないで。萌香とは、今はもう仲良くしているから。前みたいに、仲の良い先輩と後輩の仲なんだよ」

「そうなんだ……で、今はあの鈴原先輩と付き合っているんだよね?」

「うん、まあね」

「どっちから、告白したの?」

「僕から……と言いたい所だけど。里音さんから言ってくれたんだ」

「へぇ~……鈴原先輩って、おしとやかに見えて、意外と積極的なんだね」

「うん、そうだよ。年上で、頼りがいがあって、でも優しくて……って、僕は彼氏なんだから、いつまでも甘えていちゃダメだよね」

「でも、小鳥遊くんも今すごく頑張っているんでしょ?」

「まあ、そうだね。でもそれも、里音さんと……あと、萌香のおかげだな」

「小鳥遊くんって、素敵な女子に恵まれているんだね」

「本当にね」

 そうこう言っている内に、花壇にやって来た。

「そういえば、山瀬さんは何で美化委員になったの?」

「へっ?」

 土いじりを始めてから、僕は尋ねる。

「山瀬さんも、何か悩み事があるとか?」

「いや、まあ……悩み事ならあるけど」

「だよね。女子高生は、大変だもんね。色々と」

「うん、そうだね……」

 山瀬さんはチラっと僕に目配せをして、すぐに視線を逸らす。

「小鳥遊くんって」

「ん?」

「彼女さんと、どこまで進んでいるの?」

「えっ」

 まさか、真面目な彼女からそんなことを聞かれるとは思わなかったから。

 僕は動揺して、声が上ずってしまった。

「いや、その……っ」

「ご、ごめんね、いきなり変なこと聞いちゃって」

「だ、大丈夫だけど……」

 僕は軽く咳払いをして。

「ここだけの話にしてくれる?」

「うん」

 山瀬さんは真剣な顔で頷く。

「キスしたよ……里音さんと」

「そ、そうなんだ……あ、萌香ちゃんとは……」

「しないで別れちゃったから。この前、やっとファーストキスが出来たんだ」

 僕は複雑な想いを抱きながら、笑顔を向ける。

「小鳥遊くんも、色々と大変そうだね」

「まあ、そうだね。でも、幸せだよ」

 僕が微笑むと、山瀬さんも微笑んでくれる。

「……ごめんね、小鳥遊くん」

「ん?」

「ううん、色々と」

「ああ、気にしないでよ。いずれは、バレるだろうしさ」

「ふふふ」

 山瀬さんはニコリと微笑んだ。







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