ワガママな後輩彼女にフラれたら、優しい先輩彼女とお付き合いすることになりました。
7 元カノに説教をされる
初めての彼女という訳じゃないけど。
それでも、胸のドキドキが止まらない。
スマホでメッセージのやり取りをするだけでも、緊張してしまう。
『史くん、今何をしているの?』
『宿題をやっていました』
『偉いね。私も受験勉強をしているよ』
『里音さんこそ偉いです』
『でも、その最中に、史くんにメールしちゃった』
『じゃあ、息抜きしましょうか?』
『ありがとう』
何気ない会話のやりとり。
それでも、心がくすぐられるようで、落ち着かないけど。
ホッと、癒される。
ちょっと矛盾しているかもしれないけど。
里音さんは年上で落ち着いているから。
萌香の時は、メッセもせわしなくて、本当に落ち着かなかった。
まあ、それはそれで、楽しかったけど。
『里音さん。今週末って予定は空いています?』
『うん、空いているよ』
『じゃあ、良ければデートしてもらえますか?』
『本当に?』
『もちろん、里音さんの受験勉強の妨げにならない程度に……』
『そんなに気を遣わなくても大丈夫だよ。ありがとう』
顔が見えなくても、里音さんが目の前で微笑んでくれるように思えた。
それからいくつかやり取りをして、僕はスマホを置く。
「はぁ~、やっぱり里音さんは癒しの女神だなぁ」
宿題で溜まった疲れも一気に吹き飛んだ。
「よし、そろそろ寝ようかな」
その時、再びスマホが鳴った。
「ん? 里音さん、追伸かな?」
僕は少し期待しながらスマホの画面を見た。
けど、表示されたのは里音さんの名前では無かった。
「も、萌香……」
僕は先ほどとはまた別の意味でドキドキしながら、そのメッセージを開く。
『フーくん、里音さんと付き合うことになったんだってね。里音さんから聞いたよ』
ドクン、と心臓が跳ね上がる。
『里音さんは律儀だから。あたしがフーくんと別れる時に連絡したから、教えてくれたんだと思う』
『そ、そうか』
『フーくん、嬉しい?』
『えっ?』
『ずっと、憧れていた、里音さんとお付き合いが出来て』
萌香の言葉の一つ一つが、僕の胸に突き刺さるようだ。
ここは、何て答えるのが正解なんだ。
もちろん、すごくハッピーだよ!なんて言ったら、萌香はムッとするだろうし。
逆に、いや、それほどでもないけどって言ったら、何かこじれる予感がする。
僕は悩んだあげく、
『……緊張するかな』
そう答えた。
『何で緊張するの?』
しかし、案の定、クエスチョンで返される。
今度は、どう返すか……
『……だって、萌香と付き合った時も、緊張したし』
『えっ……あ、そうなんだ』
おっ、意外と悪くない感触だ。
『と、ところで、フーくん。一つだけ、言っておきたいことがあるの』
『何かな?』
萌香が動揺したおかげで、少し心に余裕が生まれた。
『今のままだと、フーくんは里音さんにもフラれるよ』
しかし、それは幻覚だったようだ。
僕は萌香のたったその一言で、頭がグワン、グワンと揺れてしまう。
『……な、何でそんなことが分かるの?』
『分かるよ。だって、あたしは一年もフーくんと付き合ったんだもん』
『そうかもしれないけど……萌香と里音さんは全然違うだろ? 僕はきっと、里音さんとは萌香よりも相性が良いから』
その文面を送った直後、後悔する。
さすがに、ひどいことを言い過ぎたか……
『……フーくん、それは良くないよ』
『だ、だよね、ごめん』
『そんな傲慢な姿勢じゃダメ』
『ご、傲慢? 僕、そんなに偉そうかな?』
『いや、違うな……フーくんは怠惰だ。どちらにせよ、大ギルティーだね』
『ど、どういうこと?』
『フーくんって、あたしと付き合っている時、何か努力はした?』
『ど、努力と言うか……ずっと、緊張しっぱなしだったから』
『はい、それ言い訳』
『えっ?』
『デートプランとかちゃんと考えた? 考えてないよね? ただ、一緒に過ごせれば良いと思っていたよね?』
『そ、そんなことは……』
『最初の内はそれでも良いよ。あたしだって、フーくんと付き合えて嬉しかったし』
『萌香……』
『でもね、それだけじゃ続かないの。確かに、里音さんは年上で優しいから、許してくれるかもしれないけど……それでも、里音さんだって、ちゃんと女の子なんだよ? フーくんは男の子なんだから、ちゃんと努力をしないと。彼女を喜ばせるためにね』
『努力……僕は何をすれば良いんだろう?』
『……今日はもう遅いから、明日にしよう。お昼休み、屋上で話さない?』
里音さんと言う彼女がいる以上、あまり萌香と二人きりになるのはよろしくないと思っていた。
でも……
『……分かったよ』
『じゃあ、また明日ね』
そして、萌香とのやり取りを終える。
僕は椅子に座ったまま、脱力した。
萌香の言葉の一つ一つが、とても胸に刺さって。
きっと、図星だったからだ。
僕はウブだ、恋愛経験に乏しいから、緊張しっぱなし。
それを言い訳に、彼女を喜ばせる努力をして来なかったのかもしれない。
そして、付き合った一年の間に、萌香が抱えていた想いを……今さらながら、知ることが出来た。
付き合っている当時、萌香はずっとニコニコしてくれていたから。
僕は全然気が付かなかった。
ひどい男だと思う。
僕は、萌香の彼氏として失格だった。
「……ごめん、萌香」
額に手を置き目をぎゅっと瞑って、その言葉がこぼれる。
――大ギルティーだよ。
確かに、僕は大罪人だ。
萌香を傷付けてしまった。
けど、今の僕は落ち込んでいる場合じゃない。
もう、里音さんの彼氏だから。
過去の失敗を反省し、未来に活かさなくちゃいけない。
明日、萌香はそのアドバイスをしてくれるのだろうか……
でも、いつまでも彼女に甘える訳には行かないから。
きちんと、話し合って。
それでもう、萌香に頼るのはやめにしよう。
それがお互いのためだ。
最後には『ありがとう』と言って、萌香と本当の意味で別れる。
いや、萌香から自立する。
ワガママで可愛いだけじゃなく、実はとても思慮深く賢い彼女のことを頼るのは、これで最後にしたい。
「僕は里音さんと上手く行って……萌香にも、早く素敵な彼氏が出来ますように」
僕は窓から夜空を見上げて、星にそう願った。
それでも、胸のドキドキが止まらない。
スマホでメッセージのやり取りをするだけでも、緊張してしまう。
『史くん、今何をしているの?』
『宿題をやっていました』
『偉いね。私も受験勉強をしているよ』
『里音さんこそ偉いです』
『でも、その最中に、史くんにメールしちゃった』
『じゃあ、息抜きしましょうか?』
『ありがとう』
何気ない会話のやりとり。
それでも、心がくすぐられるようで、落ち着かないけど。
ホッと、癒される。
ちょっと矛盾しているかもしれないけど。
里音さんは年上で落ち着いているから。
萌香の時は、メッセもせわしなくて、本当に落ち着かなかった。
まあ、それはそれで、楽しかったけど。
『里音さん。今週末って予定は空いています?』
『うん、空いているよ』
『じゃあ、良ければデートしてもらえますか?』
『本当に?』
『もちろん、里音さんの受験勉強の妨げにならない程度に……』
『そんなに気を遣わなくても大丈夫だよ。ありがとう』
顔が見えなくても、里音さんが目の前で微笑んでくれるように思えた。
それからいくつかやり取りをして、僕はスマホを置く。
「はぁ~、やっぱり里音さんは癒しの女神だなぁ」
宿題で溜まった疲れも一気に吹き飛んだ。
「よし、そろそろ寝ようかな」
その時、再びスマホが鳴った。
「ん? 里音さん、追伸かな?」
僕は少し期待しながらスマホの画面を見た。
けど、表示されたのは里音さんの名前では無かった。
「も、萌香……」
僕は先ほどとはまた別の意味でドキドキしながら、そのメッセージを開く。
『フーくん、里音さんと付き合うことになったんだってね。里音さんから聞いたよ』
ドクン、と心臓が跳ね上がる。
『里音さんは律儀だから。あたしがフーくんと別れる時に連絡したから、教えてくれたんだと思う』
『そ、そうか』
『フーくん、嬉しい?』
『えっ?』
『ずっと、憧れていた、里音さんとお付き合いが出来て』
萌香の言葉の一つ一つが、僕の胸に突き刺さるようだ。
ここは、何て答えるのが正解なんだ。
もちろん、すごくハッピーだよ!なんて言ったら、萌香はムッとするだろうし。
逆に、いや、それほどでもないけどって言ったら、何かこじれる予感がする。
僕は悩んだあげく、
『……緊張するかな』
そう答えた。
『何で緊張するの?』
しかし、案の定、クエスチョンで返される。
今度は、どう返すか……
『……だって、萌香と付き合った時も、緊張したし』
『えっ……あ、そうなんだ』
おっ、意外と悪くない感触だ。
『と、ところで、フーくん。一つだけ、言っておきたいことがあるの』
『何かな?』
萌香が動揺したおかげで、少し心に余裕が生まれた。
『今のままだと、フーくんは里音さんにもフラれるよ』
しかし、それは幻覚だったようだ。
僕は萌香のたったその一言で、頭がグワン、グワンと揺れてしまう。
『……な、何でそんなことが分かるの?』
『分かるよ。だって、あたしは一年もフーくんと付き合ったんだもん』
『そうかもしれないけど……萌香と里音さんは全然違うだろ? 僕はきっと、里音さんとは萌香よりも相性が良いから』
その文面を送った直後、後悔する。
さすがに、ひどいことを言い過ぎたか……
『……フーくん、それは良くないよ』
『だ、だよね、ごめん』
『そんな傲慢な姿勢じゃダメ』
『ご、傲慢? 僕、そんなに偉そうかな?』
『いや、違うな……フーくんは怠惰だ。どちらにせよ、大ギルティーだね』
『ど、どういうこと?』
『フーくんって、あたしと付き合っている時、何か努力はした?』
『ど、努力と言うか……ずっと、緊張しっぱなしだったから』
『はい、それ言い訳』
『えっ?』
『デートプランとかちゃんと考えた? 考えてないよね? ただ、一緒に過ごせれば良いと思っていたよね?』
『そ、そんなことは……』
『最初の内はそれでも良いよ。あたしだって、フーくんと付き合えて嬉しかったし』
『萌香……』
『でもね、それだけじゃ続かないの。確かに、里音さんは年上で優しいから、許してくれるかもしれないけど……それでも、里音さんだって、ちゃんと女の子なんだよ? フーくんは男の子なんだから、ちゃんと努力をしないと。彼女を喜ばせるためにね』
『努力……僕は何をすれば良いんだろう?』
『……今日はもう遅いから、明日にしよう。お昼休み、屋上で話さない?』
里音さんと言う彼女がいる以上、あまり萌香と二人きりになるのはよろしくないと思っていた。
でも……
『……分かったよ』
『じゃあ、また明日ね』
そして、萌香とのやり取りを終える。
僕は椅子に座ったまま、脱力した。
萌香の言葉の一つ一つが、とても胸に刺さって。
きっと、図星だったからだ。
僕はウブだ、恋愛経験に乏しいから、緊張しっぱなし。
それを言い訳に、彼女を喜ばせる努力をして来なかったのかもしれない。
そして、付き合った一年の間に、萌香が抱えていた想いを……今さらながら、知ることが出来た。
付き合っている当時、萌香はずっとニコニコしてくれていたから。
僕は全然気が付かなかった。
ひどい男だと思う。
僕は、萌香の彼氏として失格だった。
「……ごめん、萌香」
額に手を置き目をぎゅっと瞑って、その言葉がこぼれる。
――大ギルティーだよ。
確かに、僕は大罪人だ。
萌香を傷付けてしまった。
けど、今の僕は落ち込んでいる場合じゃない。
もう、里音さんの彼氏だから。
過去の失敗を反省し、未来に活かさなくちゃいけない。
明日、萌香はそのアドバイスをしてくれるのだろうか……
でも、いつまでも彼女に甘える訳には行かないから。
きちんと、話し合って。
それでもう、萌香に頼るのはやめにしよう。
それがお互いのためだ。
最後には『ありがとう』と言って、萌香と本当の意味で別れる。
いや、萌香から自立する。
ワガママで可愛いだけじゃなく、実はとても思慮深く賢い彼女のことを頼るのは、これで最後にしたい。
「僕は里音さんと上手く行って……萌香にも、早く素敵な彼氏が出来ますように」
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