ワガママな後輩彼女にフラれたら、優しい先輩彼女とお付き合いすることになりました。
5 元カノと登校する
僕は里音さんと二人きりで、優しく甘い時間を過ごしていた。
「あはは」
「うふふ」
やはり、彼女と過ごす時間は格別に心が安らぐ。
かつては、誰にも邪魔されない、二人だけの時間があったから。
そんな中で、僕は彼女に対する小さな恋心を、胸の内でどんどん育んで行った。
そして、いつか大きく芽が出た時、告白しようと思っていた。
「史センパイ」
そんな時に、あどけない顔をして、それでもあざとく迫って来る彼女と出会った。
「ねえねえ、史センパイって、彼女は居るんですか?」
積極的に僕の体に触れながら、彼女は言う。
もちろん、僕は里音さんのことが好きだったし、他の女子に気持ちがなびくはずなんてない……と思っていた。
それでも、彼女は年下の人懐っこさを活かして、どんどん僕の懐に入って来た。
そして、里音さんが卒業すると、一気に僕と距離を詰めて来た。
それでも、一年……いや、出会ってから二年、たっぷりと僕の体に自分の匂いを染みこませて……
「す、好きです! あたしと付き合って下さい!」
最後に、こんな風に純粋な告白をされたら。
もう、落ちてしまった。
この時、僕はきっと、慢性的に冷静な思考を失っていた。
里音さんとゆっくりした時間を過ごして来た僕にとって。
萌香の積極的なスピードは最初、体に馴染まなくて。
でも、だんだんと叩き込まれて、慣れてしまって……
だから、僕はこの子が好きかもしれないという気持ちになって。
そんな曖昧な気持ちで付き合い始めたから……
「フーくん、別れよう。あたしたちは、もうおしまい」
そんな結末を迎えてしまったのだ。
◇
久しぶりに嫌な夢を見ると、背中がぐっしょり濡れていた。
気持ち悪いから、急いでベッドから降りて部屋を出る。
脱衣所でパジャマと下着を脱ぎ捨てた。
パンツ一丁の状態で鏡を見る。
「……少し鍛えないとな」
白くほっそりした自分の体を見て、そう呟く。
こんな貧弱な身体じゃ、里音さんを……いやいや、僕は何を考えているんだ。
僕は邪念を振り払うように、バシャッと水で顔を洗う。
少しだけスッキリしてから、また自分の部屋に戻って、制服に着替える。
そしてから、朝ごはんを食べ、身支度を整えて、家を出る。
幸いにも、空は快晴だった。
その心地良さが、僕の気持ちを盛り上げてくれる。
そうだ、いつまでもへこんではいられない。
里音さんとすぐ、どうこうなる訳ではないけど。
でも、少しでも彼女にふさわしい男になるために、がんばろう。
僕は胸の内で密かにそう決意をした。
「あっ」
その声に、ふっと顔を上げる。
「あっ」
僕もまた、同じような声を発してしまう。
「フーくん……おはよう」
「お、おはよう……萌香」
元カノと対面した僕は、また硬直してしまう。
いやいや、ダメだ。
いつまでも、こんな反応をしていたら。
「今日は、良い天気だね」
僕がそう返すと、萌香は少し驚いた顔をして、
「そ、そうだね」
頷く。
「誰か、お友達と一緒に行くの?」
「ううん、一人だよ」
「そっか……あの、良ければ一緒に行かない?」
「えっ? でも……」
「確かに、僕らはもう恋人じゃないけど……だからって、ずっと避けているのは何だか寂しいから……なんて、僕のワガママかな?」
少し冗談まじりに言ってみる。
「……良いよ」
「えっ?」
「付き合っている時、フーくんはあたしのワガママ、いっぱい聞いてくれたから」
「萌香……ありがとう」
そして、僕らは久しぶりに、並んで歩き出す。
何だか、ドキドキしてしまう。
だから、そんな緊張をほぐすために、
「萌香って、相変わらず小さいね」
「なッ……う、うるさい! おっぱいも小さくて、悪かったわね!」
「わっ、ご、ごめん」
いきなり怒らせてしまった。
「もう、久しぶりにまともに話したと思ったら……フーくん、デリカシーがないよ?」
「ご、ごめんなさい……」
「……なんて、冗談。そんなに怒ってないよ」
萌香はぺろっと舌を出して言う。
「お前な~」
「えへへ。フーくんって、昔からすぐ慌てるから、面白いよね」
「それは、萌香のせいでもあるだろ。デートの時だって、突拍子もないことを言って僕を困らせてさ」
「例えば?」
「フーくんのパンクロックなファッションが見たいって……」
「あー、あったね、それ。しかも、フーくんなりのパンクロックが……ぷぷぷ。帽子を斜めにかぶるとか、ラッパーでしょ」
「う、うるさいなぁ」
「でも、すごくおもしろくて、笑い転げたなぁ」
「僕は死ぬほど恥ずかしかったよ」
「けど、フーくんは、いつもそうやって、あたしのワガママを聞いてくれたよね」
「まあね」
「それで、一回も本気で怒ったりしなかったよね。こうして、ふざけて怒ることはあったけど」
「それは、まあ……彼女の……萌香のために何かしてあげたいなって思っていたから……」
「フーくん……」
「な、なーんてな」
通学路も半ばに差し掛かると、他の生徒たちの姿もチラホラ見え始める。
「萌香、やっぱりここで別れよう」
「え?」
「僕、萌香には新しい一歩を踏み出して、幸せになってもらいたいんだ」
「フーくん……」
「今日は、久しぶりに話せて楽しかったよ。ありがとう、またね」
そして、笑顔で手を振って、僕は萌香に別れを告げる。
「……バカ」
最後に、彼女が何かを言った気がしたけど。
僕はひたすら前を向いて歩いて行った。
「あはは」
「うふふ」
やはり、彼女と過ごす時間は格別に心が安らぐ。
かつては、誰にも邪魔されない、二人だけの時間があったから。
そんな中で、僕は彼女に対する小さな恋心を、胸の内でどんどん育んで行った。
そして、いつか大きく芽が出た時、告白しようと思っていた。
「史センパイ」
そんな時に、あどけない顔をして、それでもあざとく迫って来る彼女と出会った。
「ねえねえ、史センパイって、彼女は居るんですか?」
積極的に僕の体に触れながら、彼女は言う。
もちろん、僕は里音さんのことが好きだったし、他の女子に気持ちがなびくはずなんてない……と思っていた。
それでも、彼女は年下の人懐っこさを活かして、どんどん僕の懐に入って来た。
そして、里音さんが卒業すると、一気に僕と距離を詰めて来た。
それでも、一年……いや、出会ってから二年、たっぷりと僕の体に自分の匂いを染みこませて……
「す、好きです! あたしと付き合って下さい!」
最後に、こんな風に純粋な告白をされたら。
もう、落ちてしまった。
この時、僕はきっと、慢性的に冷静な思考を失っていた。
里音さんとゆっくりした時間を過ごして来た僕にとって。
萌香の積極的なスピードは最初、体に馴染まなくて。
でも、だんだんと叩き込まれて、慣れてしまって……
だから、僕はこの子が好きかもしれないという気持ちになって。
そんな曖昧な気持ちで付き合い始めたから……
「フーくん、別れよう。あたしたちは、もうおしまい」
そんな結末を迎えてしまったのだ。
◇
久しぶりに嫌な夢を見ると、背中がぐっしょり濡れていた。
気持ち悪いから、急いでベッドから降りて部屋を出る。
脱衣所でパジャマと下着を脱ぎ捨てた。
パンツ一丁の状態で鏡を見る。
「……少し鍛えないとな」
白くほっそりした自分の体を見て、そう呟く。
こんな貧弱な身体じゃ、里音さんを……いやいや、僕は何を考えているんだ。
僕は邪念を振り払うように、バシャッと水で顔を洗う。
少しだけスッキリしてから、また自分の部屋に戻って、制服に着替える。
そしてから、朝ごはんを食べ、身支度を整えて、家を出る。
幸いにも、空は快晴だった。
その心地良さが、僕の気持ちを盛り上げてくれる。
そうだ、いつまでもへこんではいられない。
里音さんとすぐ、どうこうなる訳ではないけど。
でも、少しでも彼女にふさわしい男になるために、がんばろう。
僕は胸の内で密かにそう決意をした。
「あっ」
その声に、ふっと顔を上げる。
「あっ」
僕もまた、同じような声を発してしまう。
「フーくん……おはよう」
「お、おはよう……萌香」
元カノと対面した僕は、また硬直してしまう。
いやいや、ダメだ。
いつまでも、こんな反応をしていたら。
「今日は、良い天気だね」
僕がそう返すと、萌香は少し驚いた顔をして、
「そ、そうだね」
頷く。
「誰か、お友達と一緒に行くの?」
「ううん、一人だよ」
「そっか……あの、良ければ一緒に行かない?」
「えっ? でも……」
「確かに、僕らはもう恋人じゃないけど……だからって、ずっと避けているのは何だか寂しいから……なんて、僕のワガママかな?」
少し冗談まじりに言ってみる。
「……良いよ」
「えっ?」
「付き合っている時、フーくんはあたしのワガママ、いっぱい聞いてくれたから」
「萌香……ありがとう」
そして、僕らは久しぶりに、並んで歩き出す。
何だか、ドキドキしてしまう。
だから、そんな緊張をほぐすために、
「萌香って、相変わらず小さいね」
「なッ……う、うるさい! おっぱいも小さくて、悪かったわね!」
「わっ、ご、ごめん」
いきなり怒らせてしまった。
「もう、久しぶりにまともに話したと思ったら……フーくん、デリカシーがないよ?」
「ご、ごめんなさい……」
「……なんて、冗談。そんなに怒ってないよ」
萌香はぺろっと舌を出して言う。
「お前な~」
「えへへ。フーくんって、昔からすぐ慌てるから、面白いよね」
「それは、萌香のせいでもあるだろ。デートの時だって、突拍子もないことを言って僕を困らせてさ」
「例えば?」
「フーくんのパンクロックなファッションが見たいって……」
「あー、あったね、それ。しかも、フーくんなりのパンクロックが……ぷぷぷ。帽子を斜めにかぶるとか、ラッパーでしょ」
「う、うるさいなぁ」
「でも、すごくおもしろくて、笑い転げたなぁ」
「僕は死ぬほど恥ずかしかったよ」
「けど、フーくんは、いつもそうやって、あたしのワガママを聞いてくれたよね」
「まあね」
「それで、一回も本気で怒ったりしなかったよね。こうして、ふざけて怒ることはあったけど」
「それは、まあ……彼女の……萌香のために何かしてあげたいなって思っていたから……」
「フーくん……」
「な、なーんてな」
通学路も半ばに差し掛かると、他の生徒たちの姿もチラホラ見え始める。
「萌香、やっぱりここで別れよう」
「え?」
「僕、萌香には新しい一歩を踏み出して、幸せになってもらいたいんだ」
「フーくん……」
「今日は、久しぶりに話せて楽しかったよ。ありがとう、またね」
そして、笑顔で手を振って、僕は萌香に別れを告げる。
「……バカ」
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