ワガママな後輩彼女にフラれたら、優しい先輩彼女とお付き合いすることになりました。
3 憧れの先輩との距離感
家に帰るなり、僕はどっとソファーになだれこむ。
「……はぁ~」
大きくため息を漏らすくらい、今日は疲れていた。
精神的に、とても。
今朝、元カノの萌香と久しぶりに話したことで。
表面上は何でも無い風を装っていたけど。
内心ではすごく焦っていた。
萌香と対面するのが怖かった。
だから、上向きになりかけた僕の心は、またシュンとしぼんでしまっている。
何とか、今日の学校は乗り切ったけど……疲れた。
「あっ、そうだ……」
けど、思い出す。
明日は、里音さんとお茶をする日だ。
デート、なんて言ったらおこがましいけど。
癒しの女神に明日はたっぷりと癒してもらえる。
そう思ったら、また少しだけ、気持ちが上を向いた。
◇
ドサッ、とカバンを下ろすと、ソファーに身を沈めた。
「はぁ~……」
大きくため息を漏らす。
今朝、久しぶりにフーくんに声をかけた。
まだ別れたばかりだし、声なんてかけるつもりは無かったのに。
どことなく、楽しそうなその姿を見て、つい声をかけてしまった。
だって、気に食わない。
あたしと別れたばかりなのに、あんな風に楽しそうにして。
「……あたしだって、辛いんだから」
入学して早々、色々な男子からアプローチを受けている。
それはありがたいことだし、これからの高校生活が楽しいものになるとも思わせてくれる。
それでも、表面上はみんなの前で笑顔を浮かべながら、あたしの心はずっと曇り空だ。
あの日、フーくんと別れた時から。
じゃあ、フったりするなよって話だけど。
あたしにだって、あたしなりの考えがあったんだ。
その上で、フーくんに別れを告げた。
「……やっぱり、あの人には勝てないのかな?」
やるせない気持ちを噛み締めながら、あたしは弱音をこぼした。
◇
お風呂上がりの体は火照っていた。
自分の部屋にベッドに腰を下ろすと、私はスマホに目を落とす。
『里音さん、明日は楽しみにしています』
彼からのメッセージを見て、私は口元を綻ばせる。
『私の方こそ、楽しみにしているよ』
そう返信すると、スマホを胸に抱いた。
我ながら、ズルい女だと思う。
彼女にフラれて心が弱っている所に付け込むようで。
それでも……中学時代から、ずっと彼のことを見てきたから。
私は自分の大きく膨らんだ胸を見る。
こんなに成長して恥ずかしいけど、もし彼が喜んでくれるなら……
明日はもっと、ズルい女になってみようかな。
そんなことを考える自分が恥ずかしくなって、私はしばし身悶えしていた。
◇
昼食を終えた後、僕は里音さんと待ち合わせている喫茶店にやって来た。
「あ、史くん」
先に来ていた里音さんが、席から立ち上がって手を振る。
「里音さん。ごめんなさい、待たせちゃって」
「良いの、私も着いたばかりだから」
優しく微笑む里音さんの向かいに僕は腰を下ろした。
「ご注文はいかがなさいますか?」
「あ、えっと……僕はコーヒーで。里音さんは?」
「じゃあ、私も」
「かしこまりました」
店員さんは楚々とした姿勢で去って行く。
「史くん、今日は一緒にお茶をしてくれて本当にありがとうね」
「いえ、そんな。僕こそ誘ってくれて、嬉しかったです」
「でも、やっぱり……辛いでしょ?」
「いや、まあ……そうですね」
僕はぎこちなく笑う。
「でも、萌香は悪くないですよ。悪いのは僕ですから。大切にしていたつもりだったけど、結局は肝心なことから逃げていた。だから、僕は失敗したんです」
「そっか……でも、人は誰しもそんなものだと思うよ」
「そうですかね?」
「うん……あっ、ちょっと暑いから上着脱いじゃうね」
「あ、はい」
里音さんは羽織っていた上着を脱ぐ。
すると、よく似合う花柄のワンピース姿になるけど……
僕は心の中でギョッとした。
里音さんの胸元が……何か強調されているような。
大きな胸の谷間が見えていて……
「史くん? どうしたの?」
「いや、その……何でもないですよ」
「そう?」
里音さんは小首をかしげる。
い、いかん。見ちゃいけないと思うほど、視線がそちらに向いてしまう。
里音さんのバストが豊かなことは昔から知っている。
その美貌も相まって、男子から羨望の眼差しを向けられていることも。
けど、やはり高嶺の花って感じがして、誰も手出しをしなかった。
僕もそんな一人であるのだけど。
中学時代、文芸部と言う名のまったりサークルで、里音さんと一緒になれたから、今もこうして仲良くしてもらっている。
僕が入部した当初は、里音さん目当ての男子どもが結構いたけど。
やはり、活発に動きたい年頃だったから、みんなすぐにやめて行った。
そんな中で僕だけが残って、里音さんとゆったり、二人きりの時間を過ごすことが出来た。
まあ、それでも、何も進展は無かった訳だけど。
今となっては、それもまた甘酸っぱい青春の思い出だ。
「……こうしていると、思い出すね」
「へっ?」
「中学時代のこと……二人きりで、ゆっくり過ごしたよね?」
「あっ……僕も正に、今そのことを考えていました」
「本当に? 私たちって、気が合うのかな?」
「そ、そうかもしれませんね」
僕と里音さんが言った時、
「お待たせしました、コーヒーです」
店員さんがやって来た。
僕らは何だか気恥ずかしくて、顔をうつむけてしまう。
里音さんは何も言わず、静かにティーカップを持ってコーヒーを飲む。
僕も同じようにした。
「そういえば、里音さん」
「なに?」
「今年は受験で忙しい年なのに、僕の相手をしていて大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ。一年生の頃から、コツコツと勉強をして来たから。この前の模試でも、志望校の判定がAランクだったから」
「さすがです、里音さん。でも、やっぱり、もう頻繁に会うのはやめておいた方が……」
「大丈夫だから」
里音さんにしては珍しく、少し強めの口調だった。
「えっ?」
「あ、えっと……わ、私も勉強ばかりじゃ息が詰まるから。たまにはこうやって、史くんとお茶を出来たら嬉しいなって思うんだけど……ダメかな?」
「そ、そんなことありません。僕も、里音さんと一緒に居ると、嫌なことを忘れちゃいます。やっぱり、僕にとって癒しの女神ですよ。まあ、他の人もそうだろうけど」
「そっか、でも……私は史くんだけの、癒しの女神でいたいな」
「さ、里音さん?」
「あっ、ごめんなさい……」
里音さんはまた、顔をうつむけてしまう。
「……ねえ、史くん。時々で良いから、またこうしてお茶をしてくれる?」
「も、もちろん。良いですよ」
「ありがとう」
里音さんは優しく微笑んでくれる。
僕もまた微笑む。
二人だけの優しい時間が過ぎて行った。
「……はぁ~」
大きくため息を漏らすくらい、今日は疲れていた。
精神的に、とても。
今朝、元カノの萌香と久しぶりに話したことで。
表面上は何でも無い風を装っていたけど。
内心ではすごく焦っていた。
萌香と対面するのが怖かった。
だから、上向きになりかけた僕の心は、またシュンとしぼんでしまっている。
何とか、今日の学校は乗り切ったけど……疲れた。
「あっ、そうだ……」
けど、思い出す。
明日は、里音さんとお茶をする日だ。
デート、なんて言ったらおこがましいけど。
癒しの女神に明日はたっぷりと癒してもらえる。
そう思ったら、また少しだけ、気持ちが上を向いた。
◇
ドサッ、とカバンを下ろすと、ソファーに身を沈めた。
「はぁ~……」
大きくため息を漏らす。
今朝、久しぶりにフーくんに声をかけた。
まだ別れたばかりだし、声なんてかけるつもりは無かったのに。
どことなく、楽しそうなその姿を見て、つい声をかけてしまった。
だって、気に食わない。
あたしと別れたばかりなのに、あんな風に楽しそうにして。
「……あたしだって、辛いんだから」
入学して早々、色々な男子からアプローチを受けている。
それはありがたいことだし、これからの高校生活が楽しいものになるとも思わせてくれる。
それでも、表面上はみんなの前で笑顔を浮かべながら、あたしの心はずっと曇り空だ。
あの日、フーくんと別れた時から。
じゃあ、フったりするなよって話だけど。
あたしにだって、あたしなりの考えがあったんだ。
その上で、フーくんに別れを告げた。
「……やっぱり、あの人には勝てないのかな?」
やるせない気持ちを噛み締めながら、あたしは弱音をこぼした。
◇
お風呂上がりの体は火照っていた。
自分の部屋にベッドに腰を下ろすと、私はスマホに目を落とす。
『里音さん、明日は楽しみにしています』
彼からのメッセージを見て、私は口元を綻ばせる。
『私の方こそ、楽しみにしているよ』
そう返信すると、スマホを胸に抱いた。
我ながら、ズルい女だと思う。
彼女にフラれて心が弱っている所に付け込むようで。
それでも……中学時代から、ずっと彼のことを見てきたから。
私は自分の大きく膨らんだ胸を見る。
こんなに成長して恥ずかしいけど、もし彼が喜んでくれるなら……
明日はもっと、ズルい女になってみようかな。
そんなことを考える自分が恥ずかしくなって、私はしばし身悶えしていた。
◇
昼食を終えた後、僕は里音さんと待ち合わせている喫茶店にやって来た。
「あ、史くん」
先に来ていた里音さんが、席から立ち上がって手を振る。
「里音さん。ごめんなさい、待たせちゃって」
「良いの、私も着いたばかりだから」
優しく微笑む里音さんの向かいに僕は腰を下ろした。
「ご注文はいかがなさいますか?」
「あ、えっと……僕はコーヒーで。里音さんは?」
「じゃあ、私も」
「かしこまりました」
店員さんは楚々とした姿勢で去って行く。
「史くん、今日は一緒にお茶をしてくれて本当にありがとうね」
「いえ、そんな。僕こそ誘ってくれて、嬉しかったです」
「でも、やっぱり……辛いでしょ?」
「いや、まあ……そうですね」
僕はぎこちなく笑う。
「でも、萌香は悪くないですよ。悪いのは僕ですから。大切にしていたつもりだったけど、結局は肝心なことから逃げていた。だから、僕は失敗したんです」
「そっか……でも、人は誰しもそんなものだと思うよ」
「そうですかね?」
「うん……あっ、ちょっと暑いから上着脱いじゃうね」
「あ、はい」
里音さんは羽織っていた上着を脱ぐ。
すると、よく似合う花柄のワンピース姿になるけど……
僕は心の中でギョッとした。
里音さんの胸元が……何か強調されているような。
大きな胸の谷間が見えていて……
「史くん? どうしたの?」
「いや、その……何でもないですよ」
「そう?」
里音さんは小首をかしげる。
い、いかん。見ちゃいけないと思うほど、視線がそちらに向いてしまう。
里音さんのバストが豊かなことは昔から知っている。
その美貌も相まって、男子から羨望の眼差しを向けられていることも。
けど、やはり高嶺の花って感じがして、誰も手出しをしなかった。
僕もそんな一人であるのだけど。
中学時代、文芸部と言う名のまったりサークルで、里音さんと一緒になれたから、今もこうして仲良くしてもらっている。
僕が入部した当初は、里音さん目当ての男子どもが結構いたけど。
やはり、活発に動きたい年頃だったから、みんなすぐにやめて行った。
そんな中で僕だけが残って、里音さんとゆったり、二人きりの時間を過ごすことが出来た。
まあ、それでも、何も進展は無かった訳だけど。
今となっては、それもまた甘酸っぱい青春の思い出だ。
「……こうしていると、思い出すね」
「へっ?」
「中学時代のこと……二人きりで、ゆっくり過ごしたよね?」
「あっ……僕も正に、今そのことを考えていました」
「本当に? 私たちって、気が合うのかな?」
「そ、そうかもしれませんね」
僕と里音さんが言った時、
「お待たせしました、コーヒーです」
店員さんがやって来た。
僕らは何だか気恥ずかしくて、顔をうつむけてしまう。
里音さんは何も言わず、静かにティーカップを持ってコーヒーを飲む。
僕も同じようにした。
「そういえば、里音さん」
「なに?」
「今年は受験で忙しい年なのに、僕の相手をしていて大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ。一年生の頃から、コツコツと勉強をして来たから。この前の模試でも、志望校の判定がAランクだったから」
「さすがです、里音さん。でも、やっぱり、もう頻繁に会うのはやめておいた方が……」
「大丈夫だから」
里音さんにしては珍しく、少し強めの口調だった。
「えっ?」
「あ、えっと……わ、私も勉強ばかりじゃ息が詰まるから。たまにはこうやって、史くんとお茶を出来たら嬉しいなって思うんだけど……ダメかな?」
「そ、そんなことありません。僕も、里音さんと一緒に居ると、嫌なことを忘れちゃいます。やっぱり、僕にとって癒しの女神ですよ。まあ、他の人もそうだろうけど」
「そっか、でも……私は史くんだけの、癒しの女神でいたいな」
「さ、里音さん?」
「あっ、ごめんなさい……」
里音さんはまた、顔をうつむけてしまう。
「……ねえ、史くん。時々で良いから、またこうしてお茶をしてくれる?」
「も、もちろん。良いですよ」
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里音さんは優しく微笑んでくれる。
僕もまた微笑む。
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