勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

3.決戦に向けて

みんなで寝た翌日。

「明くん!明くん!」

「んぁ?澪か、おはよう」

朝、澪の声に起こされ起き上がると。

「ふふふ、ふははは!ようやく起きたか聖魔剣使いよ!」

目覚めると馬鹿が仁王立ちしていた、これ何て言う罰ゲーム?

「澪、もしかしなくても、起こされた理由は」

「うん、リミアちゃんが話が有るって」

「いつの間にか仲良くなってるのな、まぁそれはいいとして、くだらない事で起こすなよ」

「下らなくないわよ!聞いて驚け!見て驚け!何と魔王デスからの手紙よ!」

「またかよ」

これで二度目の手紙である、別に驚きはない。

「え?また?」

前回を知らないリミアに前の手紙について教える。

「そ、そうなんだ、さすが聖魔剣使い、まさか魔王と文通するなんて……」

いや、文通はしてないよ?一方的に手紙が来るだけだから。

「さて、今度は何かな?まぁ、予想はできるけど」

「明くん、みんなで見た方がいいんじゃないかな?たぶん大事な事だし……」

「ふむ、確かに、よしクロエ!」

「直ぐに他の方々に集まってもらいます」

「ああ、昨日使った会議用のテントに集めてくれ」

「畏まりました」

クロエに準備を頼み身支度を始める。

「……ねぇ、なんで人が地面から出てきて驚かないの?」

リミアが唖然としつつ聞いてくる。

「リミア、俺達に付いてくるならこれくらいで驚いてたら、身が持たないぞ?」

「なにその非常識な世界!?」

否定は出来ない、俺も非常識な世界に馴染んでる人間だから。


会議用のテントに行くと既に皆集まっていた。

「工藤様、魔王から手紙が来たと?」

「ああ、リミアから受け取った」

「で、なんて書いてあったの?」

「それを今から読む」

封筒から手紙を出し読み上げる、まとめるとこんな感じ。

皆さんお元気ですか?そろそろ聖魔剣を受け取った頃でしょうか?僕はそろそろ自分の意識が保てなくなりつつあります、つきましてはエルフの森から北に抜けた先に、新しく魔王城を作りました、一ヶ月後にご来場いただぎますようお願い申し上げます。

「だってさ」

「エルフの森から北?」

「変ですね、そちらには海しかないはずですが……」

「そうなのか?」

「明様、こちらに地図を用意しています」

「どれどれ」

クロエが用意した地図を確認すると、確かに海が広がるばかりだった。

「どういう事だ?」

唯一知っているだろうリミアに視線が集まる。

「あ、あぅ」

こいつ普段は目立とうとするのに、いざ注目を集めるとちゃんと喋れないタイプか。

「………リミア、ゆっくりでいいから何か知っていたら教えてくれ」

「あ、えっと、なんでも新しく陸地を作ったとか……」

「おいおい、海の上に新しく陸地と魔王城を作ったのかよ」

「はい、そう聞いてます」

それを聞いて全員が溜め息を吐く。

「……念のためエルフの戦士を偵察に行かせますね?」

「ああ、頼むよリュエさん」

「……それにしても、あの子達はまた無茶を」

ん?あの子達?

「ひっとして、デスを知っているのか?」

「え?ええ、あの子に戦い方を教えたのは私ですから」

おぅ、新事実。

「エルフの師匠ってリュエさんだったのか」

「ええ、昔から彼は無茶をしました、ホントに手を焼く弟子です」

リュエさんはどこか懐かしむように呟く。

「ひとまず、この話は報告待ちだな」

「その間に何とか、聖魔剣を使えるようにならないとね?」

「まぁ、一ヶ月あるし?」

「そう言えば何で一ヶ月後なんだろ?」

ふむ、確かに鈴の言う通り何故だ?

〈マスター、下にまだ続きが有ります〉

「下?」

ナビさんに言われるまま手紙の下に目をやる、少し間が空いてそこには。

追伸
インテリアがまだ決まってなくて、直ぐに案内できません、ごめんなさい。

と、書かれていた。

「……引っ越しか!?」

思わずツッコミを入れた俺を苦笑いでみんなが見ていた。


デスからの手紙を読んでからしばらく、偵察に出ていたエルフが帰って来た。

「間違いありません、昨日まで無かった島が出来ていました」

「そうですか、ご苦労」

「はっ、失礼します」

「やっぱり新しく出来たんだな」

「ほら!だから言ったじゃん!リミア間違って無いじゃん!」

「あー、ハイハイわかったわかった」

喚くリミアを適当にあしらっていると。

「失礼します!人族の国から使者が来ています!」

伝令であろうエルフから思いがけない言葉が出た。

「人族の?」

「と、言うとガレオンとルクレアか?」

ミレナ女王の方を見るが。

「いえ、私は存じません」

「ふむ、とりあえず通してくれるか?」

「畏まりました」

リュエさんに頼んで連れてきてもらう、そして来たのが。

「邪魔するぞ」

「失礼します」

「ダイア皇帝とクリスティア法王じゃないか、国のトップがそろって、何してるんだ?」

「ああ、実はこれが届いてな」

ダイア皇帝が見せてきたのは手紙、内容はほぼ俺達の持つものと同じ。

「その手紙はルクレア法国にも、三日前に届きました」

「どうやらあちらは、最高戦力で掛かって来て貰いたいらしい」

「なら、望み通り、総力戦と行こうじゃないか」

こうして、集まった各国の戦力と勇者達の準備が始まった、そして一ヶ月後………。



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