勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

2.獣人族の引っ越し(大移動)

いざ、引っ越しとなった所で問題が起きた、引っ越し先ってどこ?

「この場合、ベアトリスに行けばいいのか?」

「どうでしょう?王国にはそこまで余裕はありませんし……」

「やっぱり引っ越しは中止にした方がいいんじゃない?」

「そうだなぁ」

さて、どうしたものか、正直一度戻って場所を決め、改めて引っ越しでも別にいいのだが。

「その問題、アタシが解決しよう!」

「誰だ!」

声のする方を向くと。

「なんだダイア皇帝か、まだベアトリスに居たんだな、もう用はないから帰っていいぞ?」

「扱いが酷すぎないか!?」

「今忙しいんだ、借金皇帝に構ってる暇ないんだ」

「借金はチャラのはずだろ!?」

「そうだっけ?」

そう言えばそんな事言ったかな?言ったな。

「くぅ、まぁいい、お前が文句も付けられ無いようにするために来たんだからな」

「どうゆう事だ?」

「帝国が獣人族を受け入れる」

「いいのか?」

「ああ、幸い帝国は広く、使われていない土地が多い、整備もされていないからしばらくは大変だと思うがな」

「ありがとうございます、皇帝陛下獣人を代表してお礼申し上げます」

「よい、我が土地で励め」

やばい、ダイアがちゃんとした皇帝に見えてきた。

「明、今アタシに失礼なことを考えなかったか?」

「気のせいだろ?何はともあれこれで借金はチャラだな、残念だ」

「お前とゆうやつは、まぁいい準備が出来たなら先導するから着いてこい」

ダイア皇帝が呆れながらも、一緒に来た馬車と先を行く、馬車にはガレオン行きの組が乗っているらしい。

「なんか、ドナドナの気分だな」

あくまで優秀だから他の国へ行ってもらうはずなのに。

「バカ言ってないで、明くんも馬車に乗りなさい!」

「へーい」

こうして獣人達の乗った馬車は一路ガレオン帝国へ。


「着いたはいいが、本当にあれ放題だな」

馬車に揺られること二日半、帝国に入って直ぐの草原、元々は村だったらしく蔦の絡み付いた廃屋が目立つ。

「魔物が住み着かないように定期的に見回りはしているんだがな」

「それでもか」

「しかし、ワシらは住む土地だけでありがたいことこの上ありません」

「なんだ、村長生きていたのか」

「ええ、結局押しきられてしまいました」

そうか、やっぱりミーアは着いてくるのか。

「それで、村を作るってどうすればいいんだ?」

「おぉ、手伝って下さるのですか?」

「乗りかかった船だしな」

「……明?本当に大丈夫なのか?帝都の様にはならないか?」

「大丈夫だ、今回は真面目にやる」

「前は真面目じゃあ無かったのか?」

「それよりダイア皇帝はこれからどうするんだ?」

「話を逸らしたな、アタシは帝都に戻る、後で建築職人を寄越そう」

「それは助かる」

「あと勇者達は置いていく、体力作りにはもってこいだからな」

「スパルタだな」

「軟弱過ぎるんだ」

そう言ってダイア皇帝は帰って行った。

「とりあえず草むしりと、使えない廃屋の取り壊しだな」

「そうですね、ワシは多少知識のある者を集めてみます」

「頼んだ」


何とか除草が終わり、次は廃屋を壊そうとした時、意外な人物から待ったがかかる。

「ちょっといい?工藤君」

「委員長?どうかした?」

「解体は待ってほしいの、村を作るための基準にしたいから」

「基準?」

「ここの近くには少し行った所に森があるの、そこには魔物もいるらしいわ」

「強いのか?」

「いいえ、かなり弱いらしいわ、だから簡単な守りの柵を作るだけで警戒して近づかなくらしいの」

「その柵を作るための基準にしたいと?」

「そうゆうこと!」

「ふむ、村長達と相談してみよう」

直ぐに村長と建築の知識のある獣人、澪達にも集まってもらい、委員長から聞いた事を話す。

「なるほど、しかし柵を作るだけで本当に大丈夫でしょうか?」

「村長さん、心配なら堀を作るのはどうかしら?」

「ほりですか?」

「そう、森に行って狩りをする事もあるだろうから、最低限通れる部分を残して残りを溝にしてしまうの、そこまで凝った物にしないなら空堀がいいわね、例えば……」

そこから委員長による堀の講義が始まる、水堀と空堀の違いから、横堀、竪堀、連続竪堀等次から次に出てくる堀の知識、俺は途中で意識を手放し、考えている顔をしながら頭の中は寝ていた。

「工藤君、聞いてる?」

「あぁ、アップルパイが何だって?」

「……そんな話してないわよ?というかなんの話?」

「いや、最近食べてないなと思ってアップルパイ」

「いいわねアップルパイ!今度作ろうよ!」

「鈴ちゃん?鈴ちゃんも聞いてなかったね?」

委員長が鈴をジト目で睨む、鈴はバツが悪そうに苦笑い。

「というかさすがだな委員長、堀や塀にも詳しいなんて」

「……私、休日にお城とか観に行くの趣味なのよ」

「へー、誰と?」

「………」

「……一人で?」

「わ、悪い!?同じ趣味の人近くに他に居なかったのよ!」

「………」

「何か言ってよ!?えぇ、えぇ、そうよ!私はボッチよ!?」

「……ドンマイ」

「慰め方が雑!」

委員長の悲痛な叫びはともかく、引っ越しは続く。

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