勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

幕間.とある夜(ダイア視点)

はぁ、まったく、明とエレナ嬢ちゃんの我が儘には困ったものだ、兵士達が快くテントを渡してくれたものの苦労を掛けてしまう。
エレナ嬢ちゃんはともかく、あの明に逆らうのは極力避けたい、まだ未知数ではあるが魔王を二人も倒した実力はあるんだろう、できれば悪い印象は与えたくない。

「はぁ……」

「申し訳ありません、ダイア様」

「いや、構わないさ」

結局、貰ってきたテントはアタシとエレナ嬢ちゃんで使うことに。

「エレナ嬢ちゃん、すまないが今後の行軍日程を兵士達と話し合って来るので、先に休んでいてくれ」

「ハイ、畏まりました、余りご無理はなさらないように」

「わかっているさ」

手を振りテントを出て兵士の集まる方に歩き出す。


夜も更けた頃、ようやく話し合いが終わりテントに戻る途中、明達が乗っていた馬車の前を通りかかる、そう言えば馬車の行者をしていたのはメイドだったな、確かメイドは一人馬車で寝泊まりすると言っていたな、せっかくテントを用意したのに馬車が心配だからといっていた。

念のため話し合いで決まった事を伝えようと馬車に近づく、中からは話し声(?)と洗い息づかいが聞こえる、まさかメイドが兵士の一人を連れ込み情事に勤しんでいるのではと思い、もしもそうなら兵士に渇を入れようと中を静かに覗く。

しかし、そこで後悔する、中に居たのは一糸纏わぬ姿の六人の女達、一人はあのメイドだと分かるが残りの五人に見覚えはない、六人の女達は何かにブツブツと祈りを捧げている、ボロ布?それと誰かを象った人形の様なもの?良く見るとその人形は全員が持って要るようだ、しかしあの人形誰かに似ているような?

その後祈りが終わると全員が静かに立ち上がる、そこで気づいたあのメイドがいつの間にか居なくなっていた、背筋に冷たい汗が流れる。

「ダイア様」

不意に名前を後ろから呼ばれる、ゆっくり振り向くとそこには陶酔仕切った顔のメイドが立っていた。

「あ、あぁ、す、すまない覗く気はなかったんだ」

「左様でしたか、よろしければダイア様も仲間に加わりますか?」

「い、いや、それは」

「遠慮なさらないで下さい、大丈夫ですダイア様なら直ぐに、明様の尊さが分かると思います」

「あ、明?」

「ハイ、明様です、明様の美しさ、輝き、逞しさ、慈悲深さ、わたくし達をお守りしてくださる代えがたき至高の方!」

「あ、あぁ」

「大丈夫です、最初は怖いかもしれませんが直ぐに天にも昇る快楽を授けてくださいます」

そして気づく後ろのテントから、艶かしい声がいつの間にか聞こえていた、ナニをしているのかはわからない、そして今、目の前にいるメイドの足の付け根が濡れており、足元まで濡らしていることに本能が警報を鳴らす、一度知れば戻れなくなるぞと。

「あ、あぁすまないが用事を思い出した、これで失礼する!」

「そうですか、それは残念です」

どうやら何事もなく、逃がしてくれるらしい。

「ああ、そう、そう、今夜見たことはどうか明様にはご内密に、でないとわたくし、いえ、わたくし達何をしてしまうか解りませんから………」

先ほどとはうって変わって冷たい視線を送られる、まるで別人だ。
これでもそれなりの死線は乗り越えているが、これまで味わったどんなものよりも強い警告が頭を駆け巡る。

「わかった肝に命じておこう」

こうして、恐怖の夜を体験した。
あのメイドは一体何者なのか、そしてそれに崇められる明とは一体何なのか。

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