勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

3.救出と偵察

司達と別れた後、俺は街の門まで来ていた。少し本気を出して走ったからか、直ぐについた。門番は緊急なので、スルーさせてもらう。

〈マスター、ここから北に、5㎞です〉

北ってどっち?

〈……正面です〉

今、ナビさんに呆れられた気がする…

〈気のせいでは?〉

うん、そうだね、気のせいだ、気のせいにしとこう。



しばらく、走り続けて、たどり着いたのは小さな村。

なんだ?あれ

〈あれは、蟲人です〉

蟲人?良く解らないな、とりあえず鑑定するか

ステータス
名前:無し  年齢:0歳
レベル: 1  種族:蟲人 性別:無し
称号:寄生蟲
スキル:寄生

最早、村人ではないんだな…

〈ハイ、この状態ですと助ける方法は、ありません〉

今回の魔王は、ずいぶんとふざけた事をしてくれるな。

〈マスター、まずは救出が優先であると、進言します〉

解ってるさ、ナビさん、何処に居る?

〈左に見える、森の中です〉

了解!

そこからは、エクスカリバーを取り出し、戦闘体制をとりながら、走る。

森の中に入り、目的の人物を探す。それは、直ぐに見つかった、何せ、蟲人がその一点に向かい集まって行くからね。

蟲人が目指す一点、その先には、やはり目的の人物が居た、足を痛めたのか、引き摺りながら、部下と共に逃げている。

俺が助けに来たのは、クロエだ。
暗殺部隊は、諜報活動もしているらしく、この村に魔王の動向の調査に来たら、蟲人の大群に教われてしまったらしい。

俺は、クロエの姿を捉えると一気に加速し、エクスカリバーを振り抜きながら、
蟲人との間に割って入る。

閃光を煌めかせ、降り立った先では、惚けた顔の、クロエが居た。

「大丈夫そうだな?」

「工藤様?どうしてここに?」

「さぁ?何故かね」

「助けに来て下さったのですか?」

「それは、当然だね」

会話もそこそこに、エクスカリバーを蟲人に向ける。
蟲人達よ、救えないのなら、せめて安らかに……
エクスカリバーを大きく振り抜く。

蟲人達を閃光が包み込む、気のせいか、蟲人にされた者達が、穏やかな顔で消えていった気がする。
あなた達の無念は必ず張らす。そう心に誓い、エクスカリバーをしまう。

「歩けるか?」

「ハイ、何とか」

「この村は?」

「私達が来たときには、魔王の手によってもう……」

「そうか……魔王の仕業で間違いないのか?」

「ハイ…」

「分かった…とりあえず、王城まで戻ろう」

クロエに手を貸して、少し移動する。

「王城に戻る前に、治療するか」

俺は、クロエの足に手を翳す。聖剣の恩恵により、治癒魔法も使えるのだ。

「まさか、治癒の力まであるとは……」

「うん?どうかしたか?」

「いえ、申し訳ありません明様、奉仕するメイドの身でありながら、この様にご迷惑をお掛けして……」

「構わないさ、このくらい迷惑にならない」

「あぁ、なんと慈悲深い……」

なんだ?助けてから、クロエの様子が所々おかしい、具体的には、何かに惚けているような?気のせいか?呼び方も明様になってるし……

他の者の治療も終わり、王城へ移動を開始する。さすがに走って移動とはならず、隠していた、馬車を使っての移動になる。
その間も、クロエから、惚けた視線が送られる。

しばらく、馬車に揺られ、着いたのは夕方日が沈み始めた頃だった。
クロエ達は、女王の下に報告に行かないといけないらしく、ここで別れたが、別れる祭に、クロエが何か決意した目をしていたのが気になる。なんだ?何かとんでもないことになってないか?

俺は、自分の部屋で少し休み、その後、司達に会いに行く。
司の部屋に集合し、見てきた街の様子を報告し合う。

まずは、澪たちから。

「私達は、雑貨屋さんや、食べ物屋さんを見てきたよ」

「どこも、品薄だったね」

「はい、行商が居なくなってから、物流が滞っているようで……」

普通に、エレナ姫も居る、何で居るの?という、視線を送ってみる。
その視線に気づいたのか、エレナ姫が顔を紅くし言ってくる

「わ、私も、一緒に街を見てきたのだから、居てもよいではありませんか!」

「いや、別に何も言ってないけど?」

「うぅ……」

唸るエレナ姫をそのままに、司に視線を送り、次を促す。

「じゃあ、次は僕達だね、僕達は冒険者ギルドなんかを回ってきたよ」

「冒険者達も、慌ただしく動いていたな」

「うん、そうだね、でも聞いた話じゃ出ていく冒険者も多いみたいだ」

司と敦は、冒険者ギルドか、女子組が行かないであろう所を回った感じかな。

「冒険者ギルド何てあったんだな?」

「ハイ、先の魔物の大群討伐にも、冒険者は参加していました」

「明くん、冒険者に興味あるの?」

「やっぱ、男子ね~」

「あぁ、興味あるな、テンプレが体験できそうだから」

「テンプレ?」

「それは、違う気が……」

テンプレを知らない、エレナ姫が首をかしげ、鈴達が苦笑いをする。

その後、しばらく雑談しながら、エレナ姫に、テンプレの素晴らしさを説くが、理解はしてもらえなかった……

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