勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

11.裏パーティー

月夜の闇の中、城の中庭にて、一つの人影に、話し掛ける。

「よう、良い夜だな?」

「誰だ!?」

人影は、びくりと驚き、とっさに誰何してくる。
俺の姿を目で捕らえるなり、警戒色を強め、再度聞いてくる。

「貴様、誰だ?勇者か?」

「いいや、勇者じゃない、唯の異世界人さ?」

「クククク…なんだ、出来損ないか」

「出来損ないね……」

「まぁいい、最初にお前を血祭りにしてやる!」

そろそろ、ネタばらしをするか、俺が話していたのは、魔王モルトだ、どうやら魔物と一緒に討伐されず、城に侵入していたらしい。
戦勝パーティーで、警備の手薄になった今夜を狙って、とうとう動き出したらしい。
それを、ナビさんの助言によって知った俺が、倒しに来たというわけだ。

「直ぐに、貴様の仲間達も送ってやる、先に逝って待っているがいい」

三下ぽいな、魔王モルトの見た目は、ネズミの頭に、羊の角、コウモリの羽といった見た目だ、セリフもあってか、凄く三下ぽい。

「だからと言って、手加減はしないがな、来い、聖剣エクスカリバー」

「な、貴様が、聖剣の使い手だったのか!?」

「あぁ、その通りだよ!」

エクスカリバーを振り上げて切りつける、それをモルトは、長い爪で受け止める、流石にここで、エクスカリバーの全力は出せないとはいえ、普通の魔物なら、容易く斬れているものを受け止めている、これが魔王と言うものか。

何度か剣の打ち合いを繰り返し、モルトの爪が砕ける。

「ちぃ、流石に部が悪いか、何とか情報を持って帰らなくては…」

そう呟き、モルトは背中の羽を広げ、空に飛び立つ。

この時を待ってたぜ!

「来い!聖剣・ゲイボルク!!」

俺は、エクスカリバーをしまうと、矢継ぎ早に、聖剣・ゲイボルクを召喚する。
ゲイボルクは、弓形の聖剣、これなら、空に向けて、全力で射ることができる。

「くそ、くそ、くそ!」

俺が、ゲイボルクを構えるのを見て、必死に逃げようとする、魔王モルト。

「射ぬけ、ゲイボルク!!」

俺が、矢を射ると、流星のごとく飛んでいき、狙いたがわず、モルトを貫く。

「ば…が…な…」

射ぬかれたモルトは、そこから、結晶に包まれ、最後には砕け散る、まるで大地に降り注ぐ星の雨の様に…

「ふぅ…」

俺は、ゲイボルクをしまいながら、一息つく、それにしても「情報を持って帰らなくては」ね、どうやら魔王も、好き勝手に動いている訳じゃ無さそうだな。


ワイワイ、ガヤガヤ、ザワザワ

ふと上を見ると、楽しそうなパーティーの音が聞こえる。
まったく、勇者様達は楽しそうだね?呑気なものだよ。

〈今からでも、参加しますか?〉

冗談、疲れたから寝るよ。

そう、ナビさんと話ながら、中庭を後にする、後に残されるのは、暗い夜の静けさのみだった。


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