勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

8.待遇改善?

侍女の持って来た王冠を被り、王杖を手に持ち、マントを羽織ったミレナ女王が玉座に座る。

「さて、改めて話をしましょう」

「これは、何かの間違いだ!あいつが……あいつが英雄な分けない!!」

開始早々日野が叫ぶ、まだ認められないのかね。

「そうだ…あいつが僕の聖剣を盗んだんだ!」

「何を言ってんだ、お前…」

「うるさい!僕に聖剣を寄越せ!」

言ってる事がめちゃくちゃである、正気の沙汰とは思えない言動である。
まぁ、試させてやれば現実を見れるだろ。

「いいぞ、ホラよ」

聖剣エクスカリバーを召喚し、日野に投げる、その行動にその場にいる全員が驚く。
聖剣の扱いが雑である。

「フフフ…これで僕が英雄に…な、何?お前、いったい何をした!?」

日野がエクスカリバーを受け取ると、たちまち錆びていき、最後には崩れ去る。

「いったい何が起きたの?」

「日野が聖剣に選ばれなかったんだ、つまり聖剣を使う資格がないのさ」

頭に?を付けている鈴に説明をする、最初から解りきっていた事だけどね。

「ですが、日野様には、聖剣のスキルが…」

ふむ、どうやら何か勘違いをしている様子のエレナ姫達、じゃあ真実を教えますか。

「澪、悪いけど俺を鑑定してくれ」

「う、うんわかった」

「俺の称号には、何てある?」

「えっと…聖・魔剣使いだよね…?」

「な、聖・魔剣使い!?」

ミレナ女王やエレナ姫達がざわつく、それらを無視して話を続ける。

「次は、日野を鑑定してくれ」

「うーんと…」

「日野のスキルに何がある?」

「えーっと、聖なる剣……あっ!」

「そうか、なるほど!!」

「え?何?澪も司も、何かわかったの?」

「うーむ?」

どうやら澪と司はわかったらしい、鈴と敦はまだわからないか、この二人あまり考えるの得意じゃないからな。
それじゃネタばらしといきますか。

「日野のスキルは、あくまで聖なる剣を召喚する能力って事さ、聖剣と聖なる剣は全くの別物なんだよ」

鈴達の為に説明する、そう、日野は聖なる剣を召喚する能力があるだけ、聖なる剣が何かというと、平たい話、聖属性の剣だ、光の加護はあるが、聖剣としての力はない。

「なるほど、だから聖剣は砕けちゃったんだ…」

「そんな…嘘だ…お前が何かを…」

「どうやら、勇者様はお疲れの様ですね?部屋にお連れしなさい」

このままじゃ話が進まないからだろう、女王が日野を体よく、謁見の間から摘まみ出す。

「では、あらためてお礼を言いましょう、工藤様」

「礼はいらない、約束を守ってくれるならな」

「もちろん、お約束は守ります、ですので、末長く我が国を守護していただければと思います」

「それはこれからの対応で決まるものだな」

「ええ…なのでこれは一つのケジメでございます」

そう言って、女王は玉座から立ち上がり、床に跪き、頭を垂れる。
その光景に、エレナ姫を始め、その場にいる全員が驚く。

「今までの非礼をお詫び致します、都合のいいことを言っているのは、承知しております、ですがどうかこの国を、この世界を守るのにご助力ください、もしもご納得頂けないのであれば、私の力で出来る事は何でも叶えさせていただきます」

「…なら、この場で首を差し出せと言ったら?」

「それで、怒りを納めて頂けるならば、どうぞお取りください」

そう言ってミレナ女王は、近くに居た兵士に剣を持って来させる。

「まっ、待って下さい!」

「控えなさい、エレナ」

「し、しかし……」

「控えなさい!」

エレナ姫が止めようとするのを、ミレナ女王が辞めさせる。
そこに、グラン国王が、割ってはいる。

「ワシは認めんぞ、そんなこと!たったあれだけの事で、なぜ貴様にそんな権利がある!?」

「人を奴隷扱いして、たったあれだけ?よく言えたな、そんなこと」

「下がってください、あなた」

「認めん、認めんぞ」

「これは、私達の罪、償わなければならないのです、アリシア、グランを拘束しなさい」

「……ハッ、女王様の御心のままに」

「ありがとう、アリシア」

「離せ、離さんか!!」

アリシアや他の兵士に連れられていく、グラン国王。
穏やかに微笑む、ミレナ女王に剣を向ける。

「最後に言い残す事はあるか?」

「では、一つだけ、エレナこれからは貴女が女王です、工藤様の力を借りて、どうか人々に平和を授けるのです」

「はい…お母様…」

「大丈夫、貴女ならきっと、良い女王になれますよ」

話が終わると、俺はミレナ女王のうなじに剣を持っていく、狙いを定め大きく振り被る。

「やめろー!」

「イヤー!」

エレナ姫とグラン国王の声が響くなか、ガキン、という金属音が鳴り響く。

「一度だけだ……」

「え?」

「そこにいる、アリシアは、女王騎士つまり、あんた専属の騎士だろ?一度だけアリシアは澪達の命を救っている、だから一度だけ、お前達を許そう」

澪達が、訓練をしている際、索敵を誤り、死角を魔物に襲われた事があった、その時に、命からがら助けてくれたのが、アリシアだったと聞いたことがある。
その頃は、着いていきたくても行けないから、人知れず感謝していた。

「しかし、二度目はない、次に何かあったときは、容赦はしない!」

「はい、ありがとうございます、工藤様から頂いた、この命に誓って、我が国は工藤様の楯になり、二度不利益にならないとお約束します」

その後、話し合いはお開きになり、各々の部屋で休む事になった。

「ふふふ…」

「澪、何笑ってんだよ」

「なんでもな~い」

他の三人も笑っている、どうやら最初から、斬らないと判っていたらしい、さすが幼馴染み。

今日は疲れたからゆっくり休みたいな、と思っていたら……
俺が案内されたのは、いつもの部屋(物置小屋)である。この国の兵士バカなんじゃない?

〈どうやら、勇者日野が関わっているようです〉

「これは、どうゆう事かな?」

「新しい部屋を用意するのは、時間が掛かるのですよ」

最もらしいことを言っているが、顔がニヤニヤしていて、人を見下しているのが、まるわかりだ。

「女王は知っているのか?」

「うるさい!いいから入れ!」

またこのパターンかと思いながら、前と違い蹴りをかわして、自分から部屋に入る。
兵士がかわされた事に怒りながら、ドアを勢いよく閉める。

さてさて、これからどうなるかな?いや、どうしてくれるのかな?


コメント

  • イルシオ

    エクスカリバーは無くなったの?

    0
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