僕が守りたかったけれど

景空

第58話

「悪いが、それは出来ない」
ホセさんの返事にウィレムさんが食い下がる。
「俺たち天の剣とグランの翼。1級冒険者パーティ2つが共同で受けるんだ戦力としては足りるだろう」
「お前たちは上級魔獣の討伐経験どのくらいだ」
「2パーティー合同で5回、天の剣単独でも1回は成功させている。十分な実績だろう。グランの翼も噂では同じ程度に上級魔獣の討伐を成功させていると聞いている。こちらも問題ないだろう」
「上級魔獣のアンデッド討伐の経験はあるか」
「さすがにそこまでレアな討伐経験はないですね」
「ふむ、では上級魔獣5頭以上の群れの討伐経験はどうだ」
「それもさすがに無いですね。そこまで危険な討伐依頼だと1級でも特別なパーティーじゃないと受けないんじゃないですか」
「では次にグランの翼に聞こう。今の天の剣への質問と同じことを聞く。グランの翼はどうだ」
イジドールさんが、投げやりに答える。
「オレ達も天の剣と似たようなもんです。大体2パーティー以上合同で7回。パーティ単独で1回。上級魔獣のアンデッドの討伐経験も5頭以上の上級魔獣の群れの討伐経験もありません」
「最後にファイとミューに聞こう。お前たちはどうだ」
「それ応えないといけませんか。だいたいホセさん一部だけとは言え、あなたは知っているでしょう」
僕は面倒になって投げやりな返事をする。ホセさんはニヤニヤしながら
「過去の討伐数も教えてもらおうと思ったんだがな。まあいい。天の剣、グランの翼両パーティーともよく聞け。この二人はこのエイリヤに来てからでさえ上級魔獣を2人で何度も討伐してきている。単体相手で10回、5頭を超える群れを相手に2回、上級魔獣のアンデッドはさすがにまだ依頼自体が出ていないからここでの経験は無いようだが、どうだ過去にどこかでやったことは無いか」
最期に僕たちに質問を投げてきた。
「答えたくありません」
「ま、それが回答ではあるだろうがな。ではもう1つ聞こう」
僕は、思わず心の中で身構えた。
「ファイ、ミュー。お前たちが例えば1人でいるときに上位魔獣1頭に襲われたとして倒せるか」
「答えたくありません」
「ミュー、お前はどうだ」
「あたしもファイと同じ。言いたくない」
ホセさんは、そこまでで良いというように手をあげながら
「ま、無理と言わないのが、それがそのまま答だろう」
そして天の剣、グランの翼、両パーティーに対して
「ギルドとしてはファイおよびミューをこのキュクロプスアンデッド討伐の主力と考えている。そのうえで補助として天の剣、グランの翼の2パーティーをつけるというのが今回の討伐における構想だ。よってファイ、ミューのパーティーを外すことは出来ない。どうしても気に入らないのであれば天の剣やグランの翼の方に抜けてもらうしかない」
イジドールさんもウィレムさんも面白くなさそうな顔をしている。いや、他のパーティーメンバーも同じだ。1級冒険者パーティに対してたかが4級冒険者のそれもたった2人のパーティーより下だと言われたのだからそれも当然だろう。いつものホセさんならここまで強引な事は言わないのだけれど。疑問に思った僕は聞くことにした。
「ホセさん。ひょっとして何か情報を伝え忘れてたりしてませんか」
「情報の伝え忘れは無いぞ。ただ常識の注意喚起をしてなかっただけで」

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