赤の絆
4話 お仕置き(2)
俺が目を覚まし、携帯電話の画面に触れる。
明るい光に包まれて、日付と時間が表示された。
「あれから4時間か…。結構寝てたな。充電もあんま変わってないな。」
画面をもう一度暗くすると、また回りは真っ暗になった。真っ直ぐに横になるのは難しいが、ある程度踞れば横になれる広さはある為、俺は体勢をキツくは思っていなかった。
問題はトイレだ。意識を反らしていたが、尿意には勝てない。
「やばい…。漏れそうだ。」
必死に別の事を考えながら意識を変えるよう努める。だが、反して尿意は迫っている。
俺は足で扉を蹴った。
ガンガン鳴らす。
親父が文句を言いながら様子を見に来た。
ガチャンと扉が明くと廊下の明かりが眩しい。
「うるせぇぞ。反省したのかー?」
酒の臭いをまといながら、親父が俺を覗き見る。俺は思いの外かすれた声でトイレと告げた。親父はまたニヤりと笑い、持っていた酒瓶を投げて寄越し、扉を閉めた。また真っ暗になった部屋に響くのは扉の向かいから笑う親父の声。
「瓶で足りなきゃ、また呼べよ。」
ドカドカと親父がリビングへ歩く音がした。
「この手でどうやって瓶に用を足せっていうんだよ。」
俺は舌打ちをした。
幸い両手は前で結ばれている。
瓶は親父が酒を飲み干したものだから、蓋は空いている。
ずりずりと身体を動かしズボンを下へ少しずつ下げた。俺は起き上がり、必死に瓶へ用を足す。ズボンを戻し、また扉を蹴った。
親父はすぐには来てくれなかったが、何度も何度もガンガン蹴っていると、扉が開かれた。
親父は瓶を取ると捨てに行く。そして消臭剤を持ってくると思いっきりシュッと撒き散らした。俺の身体や髪の毛にもかかり、ハーブのような香りが物置に充満する。
「もう用はねえな?おやすみ。」
「おい、まだお昼過ぎたくらいだろ?寝るには早すぎだろ!」
親父の言葉に俺は思わず叫んだ。
だが、親父は何も言わず扉を閉めた。
「今日は完全にこの中で過ごせって事かよ。」
俺の悪態は暗闇の中に溶けて消えた。
誰にも聞こえる事はない。
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