片腕の炎

火焚 柾

第2章 不思議な男

零士は暗くなりだした道をゆっくりと歩いている、右手はまだ痛むが医者に手当てをしてもらったので痛みは引いてきている。

零士はあの後駆け付けた警察官と救急隊員の呼びかけで目が覚めた老人は逮捕されたらしく自分は気病院で傷の手当てをするようにと言われた病院で手当てを済ませどういう状況でなったのか担当の刑事に質問攻めにあった。あの時の不思議な出来事を思い出し話そうとしたがやめた、なぜならば
目の前で刃物を持った老人が襲い掛かろうとしたらライターから炎が出て老人を包み現れた男が懺悔だと呟き危険な人間を動けなくしたなど話しても誰も信じてくれないだろう。
零士は刑事に老人に刺され痛みで気を失い目が覚めたら事件は解決していたと話した。
刑事もそれ以上追求する様子もなくメモを取っていると制服を着た警官が刑事の耳元で話しているのが聞こえた。
『先ほどの老人ですが、去年起きた少女殺害と少年殺害と今回の殺傷事件はすべて自分がやったと取り調べしている野上刑事に自供したそうです。』
こそこそと話しているが零士の耳には聞こえていた、その時思い出した【お前で3人目だぁ】老人がそう話しているのを零士はこれ以上は関わりたくなかったので黙っていた。
警官と話していた刑事が戻ってきてこう伝えた。
『鈴木さん、あなたを襲った犯人がいろいろと話してくれました。つきましては今後必要なことがありましたら伺うかもしれませんが今日のところは一先ずここまでにしておきましょう。自宅に帰ってゆっくり休んでください。』
そう言われた零士は支払いを済ませ病院を後にした。

夕方からすっかり夜になりだした暗がりを歩きながら零士は考えていた。
今日起きたことは現実だ、痛みもある、一体あの老人は何だったのだろうあの時の事を思い出すと恐怖を感じていたがそれよりもあの時目の前に現れたあの男の事がどうしても気になっていた。
赤信号で立ち止まり考えていると零士はふっと思い出した。
確か何か胸のポケットに入れられたな、胸のポケットをまさぐると名刺のようなカードが出てきた。
そこにはこう書かれていた。
薄い茶色の紙に金色の文字で
BAR Twilight 
営業時間 19時~2時 定休日 あなたの望む日に営業中
場所 千葉県柏市〇〇〇〇
TEL 04〇〇-〇〇〇-〇〇〇
と書いてあった。ここに来いと言っていたな
零士は考えたがどうしても気になるので持っていたスマートフォンの地図アプリに住所を入力した。
ここに行けばあの不思議な男に会えるかも!またしても好奇心が沸き立った。
零士は青信号になると早歩きでナビに従った。

街は昼間の仕事帰りの人で賑わっていた小さい店が立ち並ぶ通りのわき道を抜けて人通りが少ない道を歩いた。少しするとスマホのナビがここだと刺していた。
立ち止まり右側を見ると小さい茶色のレンガで作られたお店があった看板には金色の文字で
BAR Twilight と小さく書かれていた。
ここだ!零士はそう思い恐る恐る木製の扉のノブに手をかけた、あまりBARなんかに行かないので少々怖くドキドキしていた中に怖い人たちがたくさんいたらどうしようか、映画でみるようなBARの悪い雰囲気が妄想として零士の脳裏を横切ったが気を失う前に見たあの黒い男の目は優しい目をしていたな、それを思い出し零士は意を決してドアを開けた。
カランカランくすんだ音を鳴らしながらドアは開いた。
店内は薄暗いいかにもBARという雰囲気の明るさで店内には数人お客が座ってお酒を飲んでいた。
左側のカウンターにはたくさんのお酒のボトルが並んでいたカウンターの壁側にもいろんな国のお酒のボトルが並んでいてそれが綺麗な宝石のオブジェのようにも見えた。
使い込んであるが綺麗に手入れされている木のカウンターの奥から声がした。
『いらっしゃいませ何名様ですか?』声がするほうに視線を向けるとカウンターの大きなボトルの後ろに少し小柄な男が立ってこちらに話しかけていた。
その男は長い髪の毛を後ろに一本結びしていた。
綺麗に整った顔立ちでまっすぐ零士を見ていた。
『あ・・・すいません、男性を探しているんですが・・・』零士は声をかけられたせいで緊張しておどおどと答えた。
バーテンダーの男は少し間が相手から口を開いた。
『待ち合わせですか?』
零士はおどおどした、待ち合わせではないし第一彼の名前すら知らない、このお店の名刺を渡されただけだったここにいるかもわからず来てしまったのでなんと答えるか戸惑っていた。
『待ち合わせではないんですがある男性からこの名刺をいただいたのでここに来れば会えるかもと思ったんですが・・・やっぱり帰ります・・』
零士がそう答えるとバーテンダーの男は少し考えて零士の右手をちらっと見るとバーカウンターの横から出てきた。
グレーのジーンズに黒いTシャツを着ていた腕にはタトゥーがしっかりと入っていたいろんな国の文字や髑髏や十字架などが見えていた。
『もしかして・・・セスのお客かな?あいつまた名前を言わなかったのか・・・』
バーテンダーがぼそっと零士に話した。
『え?セス?え?』答えになっていない言葉を零士はつぶやいた、
『こちらです。』バーテンダーが手を広げ僕を案内して先をあるきだした。
零士は戸惑いながらもバーテンダーの後についていくことにした。
バーテンダーについてお店の奥に向かった。
お店の中は落ち着いた音楽よりもロックミュージックが聞きやすい音量で流れていた、壁には紙に書いたいろんなデザインのタトゥーの原画が不規則に貼ってありロックバンドのアルバムのレコードも飾られていた木でできた壁には模様が入っていてどこか落ち着くような雰囲気さえも感じた。
普通はこんな感じの雰囲気は落ち着かないものだが今日色々あった零士にはちょうど良かった。
奥に行くと壁いっぱいの高さまである本棚が見えたバーテンダーはその本棚の恥をつかみ横にずらす別の部屋の入口が見えてきた。
『え?隠し扉?マフィアの映画ぐらいでしか見たことがないんだけど』ぼそっと零士は呟いた。
バーテンダーに聞こえたのかバーテンダーがこちらをちらっと見ていった。
『うちはバーとタトゥーショップをやっていてね、施術するとき音がバーに聞こえないように二重の作りになってるんだ、まぁとは言っても夜は施術する人少ないから夜はアイツの部屋みたいになっているけどね、どうぞ!』バーテンダーは中に案内してくれた。
中はバーと同じぐらいの広さの部屋だった床には異国の柄の絨毯が敷いてあり
その上に年季の入った木製のテーブルと椅子が二つ並んでいた。壁は赤茶色のレンガでできていた。
部屋の横には病院で見るような寝そべる台のような少し高めのソファーベッドと低い位置のテーブルその上には大きいテーブルライトが置かれ小さい英語で書かれた小瓶が数十本と歯医者で見るようなペンのような形をした物に配線をつけたような何かの道具が何本か置かれていた。
壁にはバーの店内にもあったタトゥーの原画のような絵がたくさん貼られていて。室内はバーと同じで薄暗かった。
零士は部屋をじっと見まわすと部屋の奥に大きい革製の椅子があったその前には小さめの木製のテーブルがありテーブルの上には古ぼけたランプが置いてあった。
誰もいない?零士はそう思った瞬間先ほどのランプに火が付いた!ボワッと音を立て火が落ち着くと
声が聞こえた。
『やっぱり気になったんだね。』
優しそうな声が革張りの椅子から聞こえた。
零士は目の前のランプがひとりでに火が付いたことにびっくりしていたが声のするほうに目をやった。
革張りの椅子がクルリとこちらに向かって回った。
その椅子にはあの事件当日に薄れていく意識の中で見たあの男が座っていた。
『やあ、わざわざ来てくれたんだね、怪我は大丈夫かい?』彼は落ち着いた声で話しかけてきた。
彼は革張りの椅子の中で足を組んでこちらを向いている。電車の中で見た時と同じで整った目鼻立ちで肩ぐらいまで伸ばした髪がクルクルっと薄くパーマしている。今はコートを脱いでいるのだろうTシャツの為腕に描かれているお洒落なフォントの文字やコンパスのような絵に小さい色々な柄のタトゥーが描かれていてそれを包むかのように炎のシルエットをした大きいタトゥーが左手一面を覆っていた零士は腕のタトゥーをボーッと見てしまっていたがすぐに返答した。
『・・・・っは、はい!あの時は助けていただきありがとうございました。』零士は慌てて返事をした。
『そうかぁ・・・よかった運悪く変な現場に出くわしてしまったね』男は静かにつぶやいた。
少しの沈黙がして男がゆっくりと話し始めた。
『僕はね世間一般的にはなかなか理解してもらいにくい仕事をしていてね、今回もその仕事の一つを、依頼されていたんだ。』
『どんなお仕事なんですか??』好奇心が勝った零士はすぐに質問をした。
『嫌な事や辛い事どうしようもないような酷い出来事に苦しんでいる人や悩んでいる人から相談を受けて悩み、問題のもとを解決する仕事さ。』男は淡々と説明した。
『これを話すと弁護士ですか?警官ですか?探偵ですか?と質問もされるんだけどね、どれも違うんだ、その三つが解決できないような出来事を解決するのが僕の仕事さ・・・でも暗殺とかそういったことではないよ?』男は少し気さくに答えてくれた。
『え?どういうことですか?警察でもなく弁護士でもなく探偵でもないのに人の悩みを解決する仕事っていったいどんなことをどうやって解決していくんですか?』
『そうだね、今回の出来事は君も関わってしまっているから話すとしよう。』ゆっくり冷静な口調で彼は話し始めた。
『あるご夫婦が僕の事を訪ねてきたんだ、その内容は、 娘が殺されたと、その娘さんは仕事からの帰宅する途中に起きたそうだ、無残にもナイフで刺し殺された状態で見つかったそうだ、警察もしばらく調べていたそうだが犯行の手がかり犯人像すらつかめない状態で時がたった、どうしても許せない、悔やんでも悔やみきれない犯人を見つける事すらできない憤りを感じていたらしい、本当に辛かったんだろうね、いろんなところに相談をしても一向に前に進めない状況で僕の噂を聞きつけてここに来たんだ』丁寧に話しているが彼の眼はどこか悲しげな表情だった。
零士は黙って聞いている。男が少しの沈黙を破り、また話し始めた。
『僕に依頼してきた内容は、娘を殺した犯人を見つけだして罪を償わせて欲しいどんな協力もすると・・・』男は口早に話しじっと黙ってしまったが少しするとゆっくりと話し始めた。
『・・・僕にはね、特殊な力があるんだ、その力を使って裏ルートから犯罪リサーチを行って犯人を特定することが出来た、その人物が本当に犯人なのか確証を得るためにその人物を尾行していたところ君が現れて今に至る・・・ざっと話すとこんな感じかな』男はさらっと説明したが零士は気になっていたことがあり、もじもじしながら質問をした。
『その・・・ある力ってどんな力ですか?』
男はじっと僕を見つめながら口を開いた。
『そうだね、もうすでに君は僕の力を見てしまっていると思うけどね』男はゆっくりと話したがどこか
ら話すか迷っているようにも見えた。
零士の後ろのほうから声が聞こえた。
『人には心の中に火のようなものがあってこいつはそれに関わることが出来るんだ、こいつ曰く人を苦しめるような醜い心を持つ奴は特にわかるんだとよ』
バーテンダーが突然説明してきた。
『京さん、僕が話していたところですよ』男はハニカミながらバーテンダーに声をかけた。
『まぁお前の力の話はあとにしてくれよ、例のクライアントが来てるぜ。』バーテンダーがそう言いながら離れると入口に男女が立っていた、50代後半の夫婦のようだ。二人とも暗い表情をしている。女性は男性に肩を抱えられながら室内に入ってきた。
『水島さん・・・どうぞこちらに』男は二席並んでいる大きいほうのテーブルを案内した。
夫婦は何も言わず椅子に座る。反対側に男も座り少しの間沈黙が続いた。
零士はどうしたらいいのだろうと戸惑っていたが、なんとも言えない空気が室内を包んでいた。
『水島さん後ろにいる彼が今回の犯人を追跡してくれたんです。』男が零士を指さしながらはなした。
零士は『えっ』まさかの話で少々固まってしまっていてまともな反応が出来なかった。がすると二人のうち旦那さんのほうがは立ち上がり零士に向かって話し始めた。
『ありがとうございます!警察から聞きました。今回の連続殺人事件の犯人に襲われて生きていた青年がいると・・・あなたでしたか、しかも被害者ではなく犯人の追跡をされていたのですね。』
『本当にありがとうございました。』妻も立ち上がり零士に深くお辞儀をした。その眼には涙が伝っていた。
『いや、僕はその、なんていうか・・・・』零士は突然の展開で戸惑っていたなんて声を掛けたらいいのかわからずオドオドしていたら旦那さんのほうが話しを続けた。
『娘が亡くなってから私たちは心にぽっかりと穴が開いたようでした、犯人像を割り出すこともできず何の手がかりを見つけることもできず、毎日が苦しかったです。地獄のようでした。そこに一人の探偵事務所の方から案内されました、その方が聞いた話では、未解決事件や警察や司法の目をかいくぐったやつらを見つけ出し、罪を償わせることが出来る人が一人いると、藁にもすがる思いでここを訪ねさせてもらいました。』旦那さんは、怒りと悲しみが入り混じった感情で話をつづけた。
『そこでこの方にお会いしてこうおっしゃられました。私が必ず見つけ出し罪を償わせます。犯人には犯した罪の重さを十二分に味合わせて見せます。とそれから一週間が経ち警察から犯人逮捕と連絡があり犯人は今回の連続殺人の細かい詳細と犯行方法と罪を認めていると、しかしまるで廃人のような姿になり自分の犯した罪を話しながら後悔しているのではなく恐怖しているように見えたと、そして犯人はつぶやきながら廃人のようになっていると、聞きました。』ゆっくり唾をのむように旦那様は話されていた。
『そこで私はあの方が依頼を終えてくれたのだと感じました。この度は本当にありがとうございました。』夫婦は泣きながらお辞儀をした。
『おっしゃる通りです。私たちが犯人を追い詰め、彼が犯した過ちを彼自身にわからせました。彼は、自分の犯した罪と向き合いながら永遠に苦しむことでしょう。』男が淡々と話した。
『しかしこの度は悲しい事件でした、娘さんを失った気持ちは計り知れないと思いますがどうかご自身を責めないで前を向いてください。黙っていても明日はやってきます。その明日をどう乗り越えて次の明日を見つめるかそれは貴女方次第です。ここにはいらっしゃらない娘さんもそう思っています。自殺などやめてください。』男が悲しい目をしながら夫婦に話した。
夫婦ははっとしてお互いを見つめ合いびっくりした様子で話した。
『どうして・・・どうしてそれを・・・』妻はポケットから大量の睡眠剤を取り出して男のほうをじっくりと見つめ恐る恐る話した。
『初めに言いましたよね?』男がゆっくりと話し出す。
『信じてもらえなくてもいいですが私には心の中の火を見ることができます。悪しき心や悲しみの気持ち人間の心の中にある火、それの陰の感情、陽の感情を感じることが出来ます。奥様の心の中は絶望と暗闇と陽の気持ちとして死を感じ取りました。ここからわかることは・・・今のつらく悲しい暗闇から死と向き合い亡くなった娘様のそばに行きたいという気持ちで自殺をしたいと願われたのではないかと・・・』
旦那が口を開いた。
『あなたは本物ですねあなたの前では隠せませんね、おっしゃられている通りです、心が晴れることがなかった私たちは暗闇をじっと見つめていました。ここにいるより娘のそばに行きたいと・・・ですがあなたに言われて気づきました、死を急ぐことは違いますね、こんなことをして会いに行っても絶対に娘は喜んでくれませんね、・・・・』長い沈黙が続き再び旦那さんが口を開いた『私たち二人で明日を見つめ直します。この度は本当に、本当にありがとうございました。』夫婦は目に涙を浮かべながら深々とお辞儀をした。



ドアがカランカランと鈍い音を鳴らしながら夫婦はバーを出ていく、その姿を零士は見つめていた。
部屋に戻ると革張りの椅子に座り足を組んで男がゆっくりとこちらを見ていた。零士は慌てて話した。
『さっきの話は違います!僕ら二人でなんて!偶然その場に居合わせただけです!』零士が先ほどの話を慌てて蒸し返した。
『でも、君はあの老人、あの犯人のおかしさにわずかながら気づいた、そして尾行した。』男は淡々んと話し零士を遮った。
『そう、ですが、でもあなたがあの場に来てくれなければ僕も・・・』零士は慌てて付け加えた。
『君が犯人の正体を素直に出させてくれたおかげで僕が疑いから確信に変わり犯人を追い詰められた、だから私と君で追い詰めた事件さ。』男はにっこりと笑いこちらを見た。
『これから気が向いたらここに顔をだして僕を手伝ってほしい。そして聞き忘れていたよ、君の名前は?』男は突拍子もない話をした。
『え?え?手伝う?僕が??ええ!!』零士は慌てふためいた。
『そうだよ、これからよろしく。で、名前は?』男がニコニコしながら同じ質問を繰り返した。
零士は深呼吸しながらぼそっと言った。
『零士です・・・・斎藤零士です。』
男は深く椅子に座りながらゆっくりこちらを見ている。どこか嬉しそうな眼をしながら口を開いた。
『斎藤 零士君ね・・・・・では私も・・・』
『私の名前は世守、畔上 世守  セスと呼んでくれ!よろしく』彼のさわやかな笑顔と少しばかり大きめな手が目の前にあった。


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