光って、消えて

やえか217

光って、消えて

 スニーカーが湿ったコンクリートの上で鳴くのを聞きながら、僕はあの桟橋のことを思い出していた。

 あの日の桟橋も濡れていて、あの時のスニーカーもバカみたいな音を出していた。

 僕の髪が緑で、君はカリフォルニアと書かれたパーカーを着ていた。デニムのスカートが地面につかないようにしゃがんだ君を、僕は目に焼き付けていた。

 つい一ヶ月前に始めたたばこは、僕の指の間で細く甘いため息をついている。もしかすると、こいつが僕の心を曇らせている原因なのかもしれない。

 僕の薄っぺらいフィルムのほとんどに君が写っていて、取り出して見てみたいけれど、こいつをダメにしてしまったら、僕もだめになってしまいそうな気がして。だから僕はぎゅっとケースのふたを閉めた。

コメント

コメントを書く

「文学」の人気作品

書籍化作品