ヒエラルキー最下位のテイム使いの成り上がり

深爪

決着

声を出したら死ぬ・・・、いや正確には、声がでない。
つばを飲み込む音だけが、ひとつ体の中に響く。
先程落ち着いた心は、一瞬で吹き飛んだ。所詮そんなものなのだ。自分の意識等。


・・・


今何分たったのだろうか・・・実際には数秒しか立っていないのだろうが、その何倍もの時間を体感している。
このままでは、死ぬことは、明白だ。
少しでも距離を取るため、不用意にも後ずさりした瞬間、その巨躯が更に自分を攻めてくる。
まるで、自分を取るに足らない虫と見るかのうように・・・


「うわあああああああああああああ!!!!!!」
恐怖から大声が出ると同じタイミング、肩にのるよしこの口から、白い一筋のものが、その巨躯に刺さる。
飛びかかるのではない、刺さるのだ。まるで、木のそばりが皮膚に刺さるかのように、その塊にすっと入っていった。


その瞬間、塊の動きが止まる。最初から動いていなかったかのうように。
一気に、逆羽っていた茶色と黒の塊がへたり込み、塊は今まで見ていたサイズの半分にまで小さくなった。


「ど、どうなったんだ・・・」
白い一筋のものが刺さったところをみると、ちょうど頭部と思われる場所である。その皮膚が蠢いているのがよく分かる。
寄生生物、その名の通り相手をしかとのっとっている。


「助かったのか・・?」
助かった気がしないが、動かない毛に少なからず安堵感を覚え、その場にへたり込んでしまった。


「・・・すごいなきみ」
こんな可愛らしい顔した生き物が、あんなものを御すなんて。


「こいつは、これからどうできるんだ?」
よしこがお手本を見せるかのように、左右に動く。
右を向けば、右を。左を向けば左を。指示通り動く。
試しに、自分が手を横に出してみる。先程と同様に、右は右に、左は左に。
手の動きに合わせて、自在に動く姿に、愛しさを覚える。あれほど殺されると思っていたものにでもだ。
少し、ほんの少し、心が麻痺しているのだろうか。


「これは便利だな。この能力は使えるな。ただ・・・どこまで、どんな生物を操れるのか、どういった制約があるのか、今後確認が必要だな・・・。」
そっと呟くと同時に、口元が緩む。


この災のもとを潰さなくては。こんな目に合わしたそいつを。
やはり、心が麻痺しているのだろう。
ただ、今のこの流れに身を任せないと行けない気がする。
黒いもやが脳を覆う。
そういって、この事態の張本人を探しに。。。

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