ヒエラルキー最下位のテイム使いの成り上がり

深爪

卒業とテイム

1ヶ月ぶりの闘技場。
なぜだろう、あれほど大きく見えた建造物が、心なしか小さく見える。
白い門をくぐり、教官の前にみなが並ぶ。


「よく生きて帰ったな!貴様らはもう卒業だ!蛆虫からゾウリムシくらいには進化してる!褒めてやる!」


ゾウリムシは進化してるのか…?
みな心なしか、顔つきだけでなくひと回り物理的に大きくなってる…気がする…。


「そんな貴様らに卒業祝いをやる。一人ずつ手を出せ!」


皆手をすぐさま出し待っていると、手にはゼリー上のかすかに動くものがおかれた。いわゆる、スライムというやつだ。
スライムというやつは、日陰やじめじめした場所にいる、特に珍しくもなく、またテイムするものなど一人も見たことがない生物である。


(最後の最後でもこの仕打ちか…泣)


「嫌がらせかと思うなよ!こいつらに、貴様らが1ヶ月の間使ったナイフを食わせてみろ。そのナイフの柄には、この大陸の外れでしか採れない特殊な石をつけてある。その石は身につけているものの意思や能力を記憶する性質があるんだ…まあ、記憶するといっても形として取り出すには莫大な金をかけた設備を使い、理論上できる…くらいなもので、現実的に方法はない………ほぼ役立たずの石だ。だが、このスライムにその石を食わせてやると、その性質を取り込んだ自分だけのモンスターに変態する!どうやら、このスライムは生き残るために、周囲のものに合わせて変化・擬態していくらしい。ある一部のスライムだけだがな。」


なんと…!こんな特殊な生物がいるなんて。
いいことを聞いた。
俺にも虫じゃないモンスターが手に入れられるかも…むふふ!


言われた通り、早速食わせてみる。
食わせてみるというより、包みこまれた感じだが。。。これが生物とは。。。


食わせてみると、透明な肉体?が緩やかに白く濁り渦を巻き始め、みるみるうちに白い繭のようになってしまった。


(ほんとに変態するんだな…ん?)


「夜頃まで待ってみろ。生まれるからな。では、解散!」


みな喜びを感じているが、俺は一抹の不安を感じつつ闘技場を後にした。
…まさかね。


…………………………………






…………………






………







真夜中 自宅 


………


ぴり…ぴり…
薄い繭が破れていく音がする。


「お、お、でてきてください!俺のモンスター!」


破れた繭から、六本の指。ぷにぷにした肌。
ふわふわした触覚。きらきらした目。まるまるとしたキャタピラーがそこにはいた。


(あたった。。。悪い予感が…。あたってしまった…虫やんけ…かわいいけど…)


つぶらな目が俺を見つめる。


「きゅぴきゅぴ!」


か、かわいい。。。しょーがねえかー。。。
まあ…いいや。名前きめなきゃな。うーむ。


「名前は…そう…よしこ!よしこにしよう!」


「きゅびびびび…」


「そうか!気に入ったか!よーしよしよし!」


「きゅびー…」


嫌がってるように見えたが、気のせいだろう。うん、そうだ。
人には意思を貫かなきゃいけないときもある!
とりあえず、明日こいつがどんなモンスターなのか診てもらおう…。

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