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以心伝心

うみかぜ

第三十八話 何も信じない

陽奈は息を吸って、思いっきり吐きながらこう言った。
『時間移動』
仁人はその言葉の意味を考える。確かに美沙(陽奈)は2014年であった時、未来から来たと言っていた。それが能力?タイムマシンではなく?仁人はゴーグルというタイムマシンを用いて2014年に飛んできたはずだ。しかし、陽奈からは更に、混乱を招く言葉が出てきた。
「驚いたか?私は君と同じ能力・・・・・・を持っているのだよ。あー。そもそも君はこれを能力と認識していなかったみたいだね。あんなゴーグル・・・・で過去に飛べるわけないでしょう?馬鹿じゃないの?」
といい高笑いをする。仁人が過去に飛んだ方法も、能力と呼ばれるものも知っていたらしい。仁人は『時間移動』という能力で、過去に飛べていたらしい。
「クソが……。」
そう言い、仁人は力を抜いた。それがわかったのか、陽奈は拘束を解いた。
仁人はゆっくりと口を開けた。
「直也、お前は何故、陽奈に協力する?お前は俺の親友じゃねぇのか。」
すると、直也は棒読みでこう言った。
「若葉陽奈は俺の大切な人だ。仁人は過去に飛んだだけで何もしていない・・・・・・・。」
「……!?」
仁人は振り返る。あの時、仁人と直也と女の子を助けたのは陽奈だ。女の子が溺れていて、それを助けようと小学生の仁人と直也は海に飛びこんだ。しかし、仁人はそれを助ける事ができなかった。何故なら、体が動かなかったからだ。自分の力不足、精神不足。それを仁人は悔やんだ。
「たしかに、あの時、俺は何もできなかった。陽奈、あの時一人で助けたのもお前の計画・・だったって事かよ……。」
三人は真っ先に助ける事で陽奈は手柄を横取りした。そういう計画・・なのだろうと、仁人は考えた。
「そうね。あなたを動けなくしていた・・・・・・・・もの。」
「……。」
「残念だったわね。一生懸命動こうとしていたけど、私があなたの動きを止めていたの・・・・・・・・・。」
その通り。仁人はあの時、動けなかった。だが、自分の『恐怖』で動けなかったと思っていた。しかし、実際は違かった。陽奈が仁人を動けなくしていたのだ。その能力というもので。仁人は、体を震わせ、直也に向けてこう言った。
「じゃあ、さっきの『ありがとう』ってなんなんだよ!!!」
直也は、舌を出してこう言った。
「ただのジョークさ。」
「……!?イカれてやがる……。お前も洗脳されているのか……。」
短い間の付き合いだが、分かる。いや、今ので確信した。これは直也であっても直也ではない。洗脳されていると。
「泣いてばっかりで情けないなー。これが本当に俺の友達・・だったのかよ。」
「……。」
「消えろ。」
そう直也達はそう言い残し、去っていった。

「こんなのありかよ……。」
仁人は自分の家に向かった。何も考えず、頭を真っ白にしながら、猫のように本能で家の方へ向かった。自分の家の戸に手をかける。ドアを開ける。その時、中から音がした。祖父だった。
「仁人……。」
別に怒っているわけでもない。悲しんでいるわけでもない。ただ暗い顔で仁人にそう話しかけた。仁人は何も言わず自分の部屋へと入った。
持っていた、カバンからスマホを取り出す。
画面を起こし、メモ帳を開く。そこに
『クソが、クソが、クソが、クソが、クソが!!!!!』
そう書き込んだ。
数秒して、
「あぁぁ!!!!」
スマホを地面に投げつけた。ものすごい音をたてて、スマホは粉々になった。
「最悪の未来だ。由美さんは死に、葵さんは意識不明だった。生きているかどうか分からない。直也と若葉陽奈は『ナワ』ってやつに洗脳させられている。」
「ふざけんな。こんな世界消えちまえ!」
自分の腹に使って拳をぶつけた。
「俺なんて何をやっても何もできない。俺が過去に戻れたって何もできることなんてない!」
壁を思いっきり叩く。そして、膝の力が急に抜けたように座り込んだ。
「俺、なんでこんなところにいるんだ。消えたい。」
不適な笑みを浮かべる。
「そうだよ。なんでこんな世界なんてあんだよ!なんで生きなきゃいけないんだよ!もう世界なんて消えちまえ!!全員死ね。」
そう怒り狂った。それから、何日経ったか分からない。仁人はただひたすら時間が経つのを待った。今まであった過去。直也が事故で死んだ時。その時でさえ、その痛みから、自分で立ち直れなかった。今回はそんなものではない。由美は死に、葵は不明。美沙には裏切られ、直也も洗脳されていた。果たしてそんな運命を今の仁人が受け入れることなどできるだろうか?今の仁人にはとてもじゃないが、そんな事できなかった。『時間が過ぎれば何か起きるんじゃないか。』とか『夢なら早く覚めてくれ。』だとか、あてのない場所に希望を求めていた。
それだけでは何も解決する事もない。何もしない時間が流れていく。何も聞こえない。真っ暗の部屋の中で仁人は延々に感じる地獄の時間を過ごした。
ある時、仁人は、自分の部屋の隅に倒れ込んでいた。もう、何も考えられなくなっていた。だが、一つ・・だけ考える事ができた。
「腹が減った。」
仁人はボロボロに破けている服を着たまま外に出た。外に出るのなんて何日ぶりだろうか。
「眩しすぎる……。日差し死ね。」
棒読みでそう言いながら歩く。何も考えてない。動くがままに歩く。「くっさーい。」「なにあれ、やばくない?」そんな声が聞こえた気がする。でも、そんなの気にしない。何故ならもう何も考えていないからだ。すると、急に足が止まった。
分からないが、止まった。その、目の前に誰か立っている。そして、こう声をかけられた。
「やっと見つけた。」
「……。」
見た事ないけど、分かる。仁人には感じるものがあった。この人が誰かどうかと。身長は変わらず、あの高い声も顕在している。年齢は6歳取っているはずなのに、当時とほぼ変わっていない。
少し控えめの笑顔でこっちを見ている。
「あ、葵さん……。」
仁人はあの、短期間だがバイトをしていた。例のコンビニの前で止まっていた。そこからは肉のいい匂いがする。そこ・・と言ってもコンビニではなく、葵が持っている袋からだ。仁人はその袋に飛びつこうとした。葵はすばやく、袋からチキンを取り出して袋を一瞬で開け、仁人の前に出した。
「はい、どうぞ!!!」
仁人は獲物を喰らう動物のように、むしゃぶりついた。10個はあったであろうチキンはものの数分で消えかけている。
「すごい、食欲だね。やっぱり男の子はお肉が好きなんですね。」
葵は笑顔で仁人がチキンを食べいるのを見ていた。
「来て!」
と言って、家の中へと案内される。2階まであがり、少し狭く、暗い部屋に仁人と葵は座った。
「肉だけじゃだから。これを。」
とお茶を出してきた。仁人は一心不乱でお茶も飲み干した。






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