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以心伝心

うみかぜ

第三十七話 最悪の未来、過去

「みーさん…。みーさんを返せ!!!」
そう仁人は、地面を叩きつけた。手がひりっとする。だけど、こんなの痛いうちに入らない。本当に痛いのはだ。
いつもと同じく、2020年に戻ってきた時に移り変わった過去が、頭にインプットされていた。それは
『朝倉由美は死んだ。』
ということだった。

「クソッ……。」
仁人は体を起こし、海岸線を歩く。もう、車が少し通るか通らないかの道。すっかり夜になり、人なんていない。行く場所なんて決めてない。ただひたすら歩いた。どこまで歩いたか分からないが、体力に限界がきたらしい。仁人は跪いた。その時、
「仁人。」
そう聞こえた。この声は知っているようで知らない。懐かしいようで聞いたことがない。仁人は目線を上げ、顔を確認する。知っている顔だった。いや、知らない顔だった。この顔は・・・・見たことがない。だが、誰かは一瞬で理解した。何故なら彼を助けに動いていたからだ、大切な親友、この事の発端は彼だからだ。
「直也……。」
生きている。しかも、小学生の直也ではない。体も成長して、声変わりもしている。身長はゆうに180cmを超えていそうだ。
直也は口を開きこう言った。

「ありがとう。」

そう声を聞いた時には目の前が霞んで服は涙で濡れていた。ああ、やっと助ける事ができた。俺の目的は達成できたのかなと。
直也は続けた。
「話があるんだ。」
仁人に『こちらに』とジェスチャーをする。一緒に歩いていく。数百メートル進んだ時だった。急に開けて空き地のような場所に到着した。
「ここは?」
と仁人は問う。
「空き地だ。」
と答えた。すると、前の方に光が見え、人影が現れた。一人、二人、だろうか。
どんどん影は近づいてきた。片方が細くて大きい、もう片方も細くて大きいが、片方よりは少し小さい。どんどん近づいてくる。そして、顔が見えるラインまできて二人は止まった。それを見て、仁人は絶望する。
「美沙…。」
そこにいたのは高瀬美沙だった。しかも、2014年にいた、あの高瀬美沙だ。おかしい。本来なら成長しているはずだ・・・・・・・・・。しかし、同じ姿なのである。
「タイムリープしたか……。」
そして、もう一人いたのが、高身長の痩せ細れた男だ。歳は30代後半くらいに見える。瞬きもせずこちらを見ている。
「お前!」
仁人が美沙に襲いかかろうとするも、直也に服を掴まれた。
「おい、何するんだよ。離せ。」
そう言うも、直也は微動だにしない。どこか遠くの、一点を見つめる。
直也は再び仁人の服を握り直す。すると、
「ふんっ!!!」
仁人の体は宙に浮き、10mほど飛んだところで体は地面に着いた。
「いてぇ……。」
今ので唇が切れた。腕と、足も打撲しただろう。
「直也???…」
既に、目の前に移動していた、直也を見る。
「お前、なんで美沙と一緒にいるんだよ。」
仁人は、疑問を口にする。二人の共通点がない。そこで返ってきた返事は、更に仁人を混乱させるものだった。
「美沙って誰?」
「……!?」
美沙を知らないのなら彼女は誰なんだ。そう思った時だった。美沙が口を開く。
「私は、『高瀬美沙』ではない。『若葉陽奈』だ。」
「!?」
『若葉陽奈。』その名前は、仁人がよく知っている名前だった。若葉陽奈は「完璧の陽奈」と小学生の時に言われていた同級生だ。もっと言えば、仁人と直也と同じクラスメイトで、仁人が過去に来た時に直也に告白して二人は恋人になっているはずだ。
だが、顔は面影すらない。
「整形した。」
何も質問していないが、美沙。いや、陽奈からはそう返ってきた。
「そういうことか……。」
高瀬美沙と若葉陽奈は同一人物。高瀬美沙の名前がカリ・・というわけだ。
と息を飲んだ仁人。
「陽奈が俺を憎んだ理由は直也か。」
と陽奈(美沙)に問う。陽奈は一歩足を踏み出す。
「そう。君が直也君の友達でなかったらねえ……。直也君は死なずに済んだのよ。」
「……。」
キリッと体が痛む。
「私の直也君を……」
「よくも一度でも殺したな!?」
陽奈は仁人に蹴りを入れた。
「っ……!」
今のは強烈な蹴りだったが、仁人は何も言わない。
「だから、私と同じ痛みを知るために。」
「お前の大切な人を殺してやった!!由美という人物をな!」
陽奈は爽やかな笑顔でそう言った。
「これが私の復讐だ。」
そう言って三人は立ち去ろうとする。
「待て。」
と短く、三人を止めた仁人。
「あの時、あの時お前は葵さんを殺すのを一度、躊躇った。お前は操られていたのではないか?確か「ナワ様」とか言ってたな。」
すると、横にいた細い男が口を開く。
「ナワとは私。そして、我々はナワーズという組織をやっておりますぅ。」
仁人は睨み、こう返した。
「てめぇが黒幕か。」
ナワは手を横にやり、『はて?なんの事ですか?』とばかりに首を横に振った。
「聞き捨てならないですね。今の言葉。私はただ、陽奈さんをエンジョしただけで、全て彼女がやった事です。」
仁人は低い声でこう返す。
「お前は高校生に、罪なすりつけるのかよ。」
「だから、彼女が自分でやっただけだ。私は何もしてない。」
「てめぇが由美さんを殺したんだ。」
ナワはそれを聞いても変わらず、首を振っている。
「それがどうした??だからどうした?という話だ。君にとっては大切な人かもしれないが、私にとっては赤の他人だ。どうって事ない。」
「……ッ!!」
仁人は立ち上がりナワに襲いかかろうとする。が、陽奈が手を前に出した。
「止まれ。」
そう声にしただけだ・・・。そうそれだけだ。だが、
「体が動かない……。」
体が動かない。触れられているわけでもない。
「お前、それなんだよ!!どういう事だよ。美沙、いや陽奈は人間ではできないような事をしている!それは何故だ!?」
高速で移動したり、手を前にだしただけで携帯を破壊したりなど……。
陽奈は不気味な笑みを浮かべてこういった。
「お前、知らなかったのか??これが私の能力・・だ。他にも色々と使えるぞ。瞬間移動、透視、念力、空中浮遊、そして、」
陽奈は息を吸って、思いっきり吐きながらこう言った。
『時間移動』


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