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以心伝心

うみかぜ

第三十五話 信じてたもの。変わらないもの。

【七月二十八日】

事故当日を迎えた。
七月二十八日。
仁人はゆっくりとまぶたを開いた。
「来てしまったか……。」
すぐに身支度をし、由美と畑中海水場に向かう。途中美沙と合流し、向かった。
そして、電車に乗り、揺られる事、数十分。畑中海水場に到着した。
「うおお……。結構いるな。」
夏休みというだけあって、普段は人がいないようなところだが、人で溢れている。まずは、仁人と直也を探す事にした。
ここで、三人に別れ手分けして三人を見つける。
由美が一番端、仁人が真ん中、美沙が端にいき、探す。そして、数分後。
「見つけました!」
と美沙からのメールが来た。
三人は今のフォーメーションをいじしつつ、ある程度離れ、色々な角度で見守る事にした。
仁人と直也は楽しんでいる。それだけは仁人に伝わってきた。
そして、あっという間に昼になった。
自分で持ってきたおにぎりを食べながら見ている。見ているだけなので本当に暇で仕方がない。だが、今は、何もないが不安は途切れない。怖い。心配。急に力が抜けて体がピリピリしてきた。

さらに、時刻は過ぎ日も陰ってきた。
「帰ろう。」
直也と仁人はそうした動きになっている事が見ていて分かった。
『やっと終われる。』
『俺は直也を助けられた。』
仁人は、そう実感した。
仁人と直也が、更衣室に戻る姿も確認した。
そして、更衣室を出て海を離れ、帰ろうとしてた。仁人は下ろしていた荷物を方にかけ、帰る準備をし始めた。由美と、美沙も同様だ、
もう、辺りは真っ暗だ。
17歳の仁人達は小学生の直也達と連動するように距離を取り、家へと向かおうとする。
直也達が海の砂場を離れた時だった。
突然、直也は海の方へ目線をやった。数秒したところ、自分の荷物を地面に捨て、海へと走り始めた。小学生の仁人もそれを追うように走り始めた。仁人はすぐさま、直也が目線をやったいた方向を見る。海の一部で波が立っているのが分かる。よく見ると、一人の女の子が海に溺れている。
「やめろ!!」
仁人はそう叫んだ。このままでは、仁人が経験した時代と同じ事が起こってしまう。このままではいけない。そして、恐怖が仁人を支配する。
「足が……」
自分の足を見るとガタガタ震えていた。すぐさま助けにいこう。そう思ってた。だが、あの時の恐怖が、蘇る。
「うっ……。動けない……。」
腹を抑え、地面に倒れ込んだ。
「俺は…、俺はなんて無力なんだ……。一人じゃ何も出来もしない。クソ人間だ。」
波の音が聞こえる。いや、一瞬・・『ザバーン!』と凄まじい音をたてた。仁人となんとか体を起こし、直也達がいる方向を見る。
「どういう事だ??」
溺れていた女の子、小学生の仁人、直也そして、
「美沙……。」
その隣に美沙がいた。今のは美沙が三人を助けてくれたと仁人は思った。だが、明らかにおかしい。この短時間で小学生とはいえ、三人を海中から陸へと運ぶ事は不可能だと……。


仁人は小学生の自分と視線が合わないように少し距離を取る。少しずつ、後ろに下がり距離を取る。
そして、再び直也達に目線を向けた時だった。さっきまでいた美沙がいない。キョロキョロしているが見つからない。前、後ろ、右、左。どこを見渡しても姿は見つからない。おかしい。
そして、次の瞬間。後ろから凄まじい空気を感じた。と同時だった。
「逃げてー!!!」
と叫ぶ少女の声と同時に仁人は倒れ込んだ。
「ストンッ!」と鋭い音がしたのが分かった。その先を見ると包丁が地面に突き刺さっていた。さらに仁人を恐怖が支配する。何故ならこの包丁は見た事がある。あの時・・・のもので、間違いがないと仁人は悟った。
そして、恐る恐る、後ろを振り向く、恐ろしくて中々振り向けない。ゆっくりと見ると、やっと姿が見えた。暗くてよく見えない。ゆっくり視線を顔へとあげる。そして、
「……。」
顔が見えた時、仁人は言葉を失った。
「なんで……?」
疑問しか浮かばない。何故なら『それはあり得ない』からだ。おかしい。目を疑った。なぜなら、その後ろにいた人物が「美沙」だったからだ。
そして、美沙に体を捕まれる。
「!?」
仁人は、一瞬にして体を持ち上げられ、人がいない場所へと空中を浮きながら、移動した。そして、同じく誰かが仁人の側に運ばれてきた。仁人は、それを見て更に驚く。
「葵……さん?」
横に寝ていたのは『天城葵』だった。今日は別に会う約束なんてしてない。『なぜここに?』そう考えると同時に、先程「危ない!」と言ったのは葵の声だった。つまり、葵のお陰で仁人は、一命は取り留めた。という事になる。意味がわからない。
美沙が仁人の前へ近づいてくる。右足を上げ、鋭い下ろす。
「ぐっァァァ!!!!」
美沙が仁人の足の骨を折ってきた。痛すぎる。またあのトラウマが脳裏によぎる。
「何故、何故こんなことを……。」
「まだ分からないの?」
「……。」
その口調を聞き仁人は確信した。美沙はあの時、2020年に戻った時に襲ってきた女性だと。

意味が分からない。頭が真っ白だ、その状況の中、葵は体をゆっくりと持ち上げる。小さい身体なのにとても重そうに見える。
そして、ゆっくりと前に進み、倒れた仁人の前に立った。
「仁人君にこれ以上、危害を加えるのは許さないよ。」
と119番通報されている携帯を見せつけた。
「うるさい。」
と美沙は葵の携帯に手を向けた。その瞬間、携帯は爆発のようなものを起こし、粉々に散った。仁人と葵は唖然とした。

美沙は黙って、再び包丁を服の中から取り出す。
「終わった。」
その感情だけが残った。美沙は腕を上にあげ、葵に向かって襲いかかる。
仁人は目を瞑った。

何も聞こえない。俺は死んだのか?と仁人は目を開いた。すると、美沙が包丁を葵の身体の寸前で止めていた。そして、美沙はこう叫んだ。
「ナワ様!私にはできません!!」
と。


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