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以心伝心

うみかぜ

第二十六話 葵

「ちょっと一緒に行きたいところがあるんだけど。」
と葵に言われ、言われるがまま10分ほど歩いた。
到着したのは河川敷。
堤防の上に道路があって、周りをよく見渡せる。
実は、仁人はトレーニングの一環でここをジョギングしたりしていた。
「ここに来ると落ち着きますよね。」
「分かります。町とは違う雰囲気ですよね。」
川沿いには、住宅街が広がっている。小さい家が並んでる中、土手の上に出ると一気に開ける。これが、なんともいえない感覚。
「だけど、これは知ってます?この山遠川やまとがわ、別名トンボ川の由来を。」
この川、地元からはトンボ川と呼ばれている。秋になると毎年トンボで溢れかえるからだ。だけど、ちゃんとした名称。『山遠やまと』の名前の由来は仁人には分からなかった。
「山から遠いところまで流れているから。だそうです!」
そう葵は言って、満点の笑顔で仁人の方を見た。
「いや、俺は『やまとなでしこ』がこの川沿いにいっぱい住んでたから。と聞きましたが。」
「あー。そっち派でしたか。この二つで意見が分かれますよね。」
「この二つで小学生の時、先生がこの話をして、言い争いが起きたり、とか。あった記憶です。」
「ありましたね!俗に言う、『きのこ派』か『たけのこ』の論争のようです!」
「そこまで大きいものでもないと思うんですけどね。」
さすがに、あの大規模で延々に続きそうな論争には勝てる気がしない。
「山遠川は大きなものですよ!一級河川に登録されてますし。」
「その大きさじゃなくて、物事の規模ですよ。」
「でも、山遠川は地元の川ですし、決して小さなものではないと思います!」
「あー、もう……。」
ここでようやっと理解した。葵がかなり天然入ってるという事に。だけど、真っ直ぐ自分を見てくる表情を見ると言い返せない。
「そうですね。」
と棒読みで返した。二人は土手の上から川を眺める。
風を感じる。ここに来るまでは、何とも感じなかった風が感じる。この七月という暑い時期に吹く涼しい風。なんとも心地いい。
仁人と葵は芝生が生えている河川敷に座り込んだ。
「この青臭さ。夏の河川敷って感じです。」
「この草に籠る熱を感じながら、涼しい風を感じるのがものすごく私は好きです!」
「すごい分かります。たまりません。」
少し、陽が傾く空を見ながら、時間を過ごした。

しばらくして家に帰った、仁人は、風呂に浴びて、ご飯を食べていた。
そして、由美が帰ってきた。
「どうだった初バイト。」
帰ってきて「ふう。」と言い、荷物を片付けてながら、由美は聞いた。
「いい職場だと思います。いい人が多いので安心しました。」
「さすが、葵ちゃんのパパの現場だ。」
「その、葵さんとはどういう関係なんですか?」
仁人は素朴な疑問を口にした。「知り合い」とだけ言ってたいて、葵とはどんな関係なのだろうか。
「高校時代の友達。三年間同じクラスだったの。」
「へえ。なるほど。」
シンプルで分かりやすい答えだった。
仁人は、「ご馳走様」と言って、自室へと入った。

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