以心伝心
第十六話 タイムリミット
仁人はゆっくりと立ち上がった。
「もしかしたらこれは、制限時間があるかもしれません……。」
そう由美に告げた。
「この時代にいるのも限りがあるって事?」
由美はあっさり解釈をする。
「はい。まだ確定できる証拠がないので分かりませんが、昨日の朝から食欲がなくて、全く食べてません。それはいつもの症状かなとも思いましたが、それがなんか違う気がするんです。」
「というと?」
「常に満腹というか。なんというか体の感覚が壊れているみたいな。」
仁人の症状で食欲が消える。食べられないというのは多々合ったが、今回は一味も二味も違った。食欲というものを忘れているような感覚、胃がなくなったような……、自分の体の一部がどこかに飛んでいってしまったのでないか、というところまで来ていた。
「そんな……。」
「だから、この時代に入れる時間もそう長くはないかもしれないです。」
「……」
由美は少し俯いた。
「でも、安心してください。もし、未来(2020年)に戻ってしまったとしても、絶対にまた戻ってきます。あのゴーグルがある限り大丈夫ですって。」
「信じていい?」
「もちろん。」
「嘘だったら?」
「永久にみーさんの下僕でいいです。」
「それ、仁人にとってはご褒美なんじゃない?」
「バレましたか……。」
「アハハハ……。」
乾いた声で笑う二人。それは本音ではなかったかもしれない。
そして、六月二日。直也の家に行く日になった。その後、仁人は体調不良の日が続いた。
「大丈夫?」
「ケホッケホッ。大丈夫です。」
とても大丈夫そうには見えない。だが、やるしかなかった。何故なら作戦を使えるのがこの日しかなかったからだ。どうしてもこの日でないと間に合わない。
「じゃあ、いきましょう。」
「うん。……。」
二人は出発した。また、約十分かけて、直也の家に向かう。その間、特に話をすることもなかった。
『ピンポーン』
インターホンを鳴らす。
「はーい?」
また出たのは恐らく直也の母だ。
「仁人ですが、直也いますかー?」
由美は、あれから衰えてない小学生の頃の仁人の声の物真似で答えた。
「はーい。待っててね。」
と言って、インターホンは切れる。
数秒後、直也が出てきた。相変わらずの大きい体に焼けた顔。そして、綺麗な坊主。
「また、お兄さんお姉さん方?」
仁人と由美の事は覚えていてくれていたらしい。
「なんどもごめんな。でも、今から言う事を聞いたら俺が未来から来ていたことは分かる。」
「まーた、そんな事言って。僕は信じないよ。」
直也は目を細めて注意深く疑う。しかし、それを気にせず仁人は本題に入る。
「明日、直也は放課後。校門前で若葉陽奈に告白される。」
若葉陽奈とは、仁人と直也の同じクラスの女子。リーダー格で勉強、スポーツなんでもこなすので、ついたあだ名は『完璧の陽奈』だ。
「はーあ?僕が?あの完璧の陽奈に?」
「そうだ。あの完璧の陽奈にだ。」
少し考える直也。
そして、
「分かった。とても信じられないから、それが合っていたら、信じるよ。」
「そうか!でも、くれぐれもその事は他人に言うなよ?もしかしたら未来が変わってしまうかもしれない。」
「分かったよー。お兄さん。」
ドアを閉めて、直也は家に帰って行った。
「もしかしたらこれは、制限時間があるかもしれません……。」
そう由美に告げた。
「この時代にいるのも限りがあるって事?」
由美はあっさり解釈をする。
「はい。まだ確定できる証拠がないので分かりませんが、昨日の朝から食欲がなくて、全く食べてません。それはいつもの症状かなとも思いましたが、それがなんか違う気がするんです。」
「というと?」
「常に満腹というか。なんというか体の感覚が壊れているみたいな。」
仁人の症状で食欲が消える。食べられないというのは多々合ったが、今回は一味も二味も違った。食欲というものを忘れているような感覚、胃がなくなったような……、自分の体の一部がどこかに飛んでいってしまったのでないか、というところまで来ていた。
「そんな……。」
「だから、この時代に入れる時間もそう長くはないかもしれないです。」
「……」
由美は少し俯いた。
「でも、安心してください。もし、未来(2020年)に戻ってしまったとしても、絶対にまた戻ってきます。あのゴーグルがある限り大丈夫ですって。」
「信じていい?」
「もちろん。」
「嘘だったら?」
「永久にみーさんの下僕でいいです。」
「それ、仁人にとってはご褒美なんじゃない?」
「バレましたか……。」
「アハハハ……。」
乾いた声で笑う二人。それは本音ではなかったかもしれない。
そして、六月二日。直也の家に行く日になった。その後、仁人は体調不良の日が続いた。
「大丈夫?」
「ケホッケホッ。大丈夫です。」
とても大丈夫そうには見えない。だが、やるしかなかった。何故なら作戦を使えるのがこの日しかなかったからだ。どうしてもこの日でないと間に合わない。
「じゃあ、いきましょう。」
「うん。……。」
二人は出発した。また、約十分かけて、直也の家に向かう。その間、特に話をすることもなかった。
『ピンポーン』
インターホンを鳴らす。
「はーい?」
また出たのは恐らく直也の母だ。
「仁人ですが、直也いますかー?」
由美は、あれから衰えてない小学生の頃の仁人の声の物真似で答えた。
「はーい。待っててね。」
と言って、インターホンは切れる。
数秒後、直也が出てきた。相変わらずの大きい体に焼けた顔。そして、綺麗な坊主。
「また、お兄さんお姉さん方?」
仁人と由美の事は覚えていてくれていたらしい。
「なんどもごめんな。でも、今から言う事を聞いたら俺が未来から来ていたことは分かる。」
「まーた、そんな事言って。僕は信じないよ。」
直也は目を細めて注意深く疑う。しかし、それを気にせず仁人は本題に入る。
「明日、直也は放課後。校門前で若葉陽奈に告白される。」
若葉陽奈とは、仁人と直也の同じクラスの女子。リーダー格で勉強、スポーツなんでもこなすので、ついたあだ名は『完璧の陽奈』だ。
「はーあ?僕が?あの完璧の陽奈に?」
「そうだ。あの完璧の陽奈にだ。」
少し考える直也。
そして、
「分かった。とても信じられないから、それが合っていたら、信じるよ。」
「そうか!でも、くれぐれもその事は他人に言うなよ?もしかしたら未来が変わってしまうかもしれない。」
「分かったよー。お兄さん。」
ドアを閉めて、直也は家に帰って行った。
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