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以心伝心

うみかぜ

第十四話 夜上仁人(仮)

「よし、じゃあ決まり!仁人は同居してる『彼氏』として紹介する!」
「と言っても、俺にはツッコミ所が多すぎるのでは?どこ出身とか。学校どことか。何歳とか。」
未来人の情報はとても言えたものではない。
「じゃあ、『仮』の仁人でも作れば?」
「そんな簡単に言われてもですね……。」
由美の親に紹介するというのは、かなりの問題が引っかかる。まさに、学歴の不明な男なんて言えば、「別れろ」と言われておしまいだ。だから、仁人には、もう一人の「自分」を作るしかなかった。

「名前も変えないとね。」
「確かに、偽名の方が良さそうですね。」
もし、2014年の夜上仁人に情報が2020年の夜上仁人が伝わってしまったら大変である。
「偽名も考えるの難しいですよ……。」
「いいのよ、適当で。そうね……。川崎隼人かわさきはやとでどう?」
ほんの数秒で仁人の仮名を、由美は作り上げた。
「作るの早い!ってか本家の名前のカッコよさ超えるのやめてくれません?」
「ありきたりで、かっこよさそうだからいいでしょ?」
「だから、本家を超えるのは悲しくなりますって……。」

「というか、偽名はもう少し早く決めておけば良かったです。そうすればもっと楽になったかもしれません。」
偽名を名乗れば堂々とできる。それだけでもこの2014年で生きやすくなる。
「でも、今できたんだからいいでしょ?」
「そうですね。」
「納得いかない?」
「いいえ。満足です。」
仁人は面倒になってきたので、適当に流す事にした。
「歳はどうしましょう?」
「私と同じ歳にしておく?」
「うーん……。混乱するのでこのまま高校三年生ってことで、いいかもですね。」
「じゃあ、それで決まりね。だいたい決まったし、これで大丈夫そうね。」

そして、五月二十四日を迎えた。
由美の両親は朝から、いらっしゃるらしい。
「なんか、緊張してきました……。」
「まあ、さすがにこの状況じゃ無理もないかな。でも、大丈夫。両親は怖くないから。」
「そう言われても、緊張するものは緊張します。」
「やっぱり真面目なのね。アッハハ。」
「馬鹿にしないでください。」

そして、午前十時過ぎ、由美の両親が来た。ここからは仁人の事を隼人と呼ぼう。
「えっと、どうも川崎隼人です。由美さんとお付き合いさせて貰ってる者です。」
偽名ながら、かっこいい名前を読み上げるのはとても複雑な気分だった。最初は気分が良かったが、後々自分の名前よりかっこいいのでムカついてきた。
「あらあら、ご丁寧にありがとうございます。娘をよろしくお願いします。」
「っ!?」
すると、隼人は小さい声で
「俺がいる事伝えてくれていたんですね……。」
「それはそうよ。だって、急に娘の家に来て知らない男の人がいたら混乱するでしょ?」
「確かに。ありがとうございます。」
由美はあの後、もう一度電話をしてお付き合いをしている男性がいると伝えていた。最初は混乱していたみたいだが、由美のカバーでなんとかなったらしい。

由美のご両親は「つまらない物ですが」と手土産をくれた。中にはお煎餅とか、大福とかお団子など和菓子が入っていた。これはとても美味しそうだ。
「実はうちの両親、和菓子屋を経営しているの。」
「へー!そうだったんですね!ありがとうございます!」


そうこうする間に、時計の針は頂点に達した。
「どうする?出前でも取る?」
と由美。しかし、由美の父は
「ここは折角なんだし、由美が作ったらどうだ?」
と言った。そこで隼人はある事を思いついた。
「すいません……。お父さん。ここは一つ、私に作らせて頂けないでしょうか?」
「隼人さんがですか?」
とお母さん。
「はい。折角いらしてくださったんだし、ここは一つ、私は抜けて、ご家族、三人でお話をして欲しいなと。」
隼人の口から出ているのは嘘偽りないが、また別の理由がある。仮に由美がご飯を作った場合、由美は台所に行くので、由美の両親と隼人の三人になる。話を上手く繋ぐのも難しいし、隼人が聞かれたら困るような事を聞かれたら更にまずいことになりかねない。
という事で、隼人が料理を作ることにした。
「本当に大丈夫なんですか?隼人さん。」
「任せてください!」

隼人の食事作りのスタート。

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