カレーなる異世界ライフ!!

忍々人参

第25話 神と呼ばれる者

「はははっ。そうかいそうかい……」

とっても賑やかで、楽しい光景だった。

僕が手を横にスライドさせると、今見ていた映像は靄のように消えていく。

「良かったじゃないか」

凝り固まった――実際は僕にそんなことは起き得ないけど、気分の問題だ――身体をほぐすように両手をう~んと上げて伸びをする。

そして辺りを見渡した。



――ここは、上も下も前後左右も、見渡す限り全てが真っ白な空間。

――僕以外には何も存在しない果てなき世界。



ただ、今見ていた地上の光景のせいか、こうばしいスパイスの匂いが漂っている気がした。

「――もう<無>に還りたいなんて、思いもしないだろう?」

かつてこの場所で彼女ソフィアが向けた、涙さえ涸れ果てたその痛ましい瞳は、転生させたあの地で本来の輝きを取り戻していた。

もう、しばらくはここに用事もないことだろう。

ひと仕事終えて普段なら横になるところだけど、僕は珍しく間を空けずに次の人の子を呼ぶことに決めた。

「何だか少し、気分が良いからね」

務めを果たし、何度でも問おう。

<無>か、<転生>かを。

「でも人の子よ、キミたちが<無>を願うのは早過ぎる――」

理不尽や不条理は世界に溢れているだろう。

苦しみや悲しみはとどまることを知らない。

それでも、楽しいことや嬉しいことだってたくさんあるんだ。

「――<無>を願うなら、その願いに勝る幸福へとキミたちを導くまでさ」

キミたちが最期の時まで笑って過ごして、「いい人生だった」と言えるように。

ここにはきっと笑顔で来れるように。

ぼくはそれを願っているよ――。




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