文才詩集

無明

文學地獄

 君が暴れている間が、最大の幸福なのだ。  文字を中絶したい衝動に駆られる。文章を地獄の焔で溶かす事が、文章への最大の賛辞であり、惨事である。君の小説を殺す事が、最大の表明である。 
 
  怨んでいる。生来的に。憎んでいる。基質的に。
  言葉の繊細な柔らかさに、気持ちの鈍感な愚かさに。 
 言葉の胎児が蠢いている。何匹の魑魅魍魎を、殺めたか。

  君の沈んだ世界が好きだ。君に愛された瞬間より、君に憎まれるこの瞬間の方が嬉しい。 
 君の海が灰色に滲んでいる。僕という色に犯されている。今の君を辱めたら、もしかしたら楽しいのだろう。嫌われる事、それが一等楽しいのだ。 
 君の文学を陵辱したい。いつもずっとそう思っていた。 
 君の文脈が、君の語彙が、君の記号が、殺害対象なのである。
  君が鬱々と泣き叫びながら創作する事が、僕には幸福なのだ。

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