Honey-ホストに恋した女子高生-
朝になっても魔法はとけない
いつもなら目覚ましがなる時間、おかしい。
聞こえるはずの音が聞こえず、寝ていた脳が少しずつ覚醒していく。
ゆっくり頭まで覆っている布を下すと、眠気が一瞬にして飛んで行った。
「わたしの部屋じゃない…」
わたしが寝ている場所はわたしの部屋ではなかった。
見慣れない家具たちに囲まれて、ぽつんと敷かれた布団に隠れるように寝ていたのだ。
あれ、あれ?確か……
ゆっくり昨日の記憶とたどっていき、ようやくここが葵さんの空き部屋だって理解することができた。
にしても、スマホやケータイがないと、こういうときに時間を確認したりアラームをセットすることができないから不便だと思う。
今時、高校生なのにスマホを持っていないのはきっとわたしくらいだから。
葵さんに言われた通り、寝る前にかけた鍵を解除して、葵さんがいるだろうリビングに向かうと、明かりはついているし、ローテーブルの上には洗濯し終えたわたしの洋服が置いてあるのに、葵さんの姿がなかった。
とりあえず、葵さんが来るまでソファー前のラグに座ることにした。
少しすると、スマホを片手に納得できない顔をした葵さんがリビングに入ってきた。
「おはようございます」
葵さんの様子が心配で声をかけるのに戸惑ったけど、自然な感じで挨拶をしてみた。
「え、ああ…おはよう。寝れた?」
「はい、結構ぐっすり。おかげでお寝坊です」
「目覚ましかけてなかったのか?」
「……スマホを持たせてもらってないので」
そういって苦笑したわたしに、葵さんは優しい声で「ごめん」と言った。
「結衣は今日、学校行きたい?」
「え……、できれば…」
今の私には学校しか居場所がない。
ここがなくなったら本当に一人ぼっちになってしまうと感じるから、休むことで存在を忘れられることが怖かった。
「……じゃあ、休めないな」
ぽんっと私の頭に手を置く葵さんの顔は、優しくて、少しだけ…切なそうに見えた。
「ご飯食べたら、結衣の家に一度帰ろう」
「…はい」
お母さん、どうしてるかな。
もう、仕事に行ったかな。
昨日、葵さんがお母さんと話をしてくれたみたうれいだけど、心配してくれたのかいはな。
それとも、どうでもいい感じだったのかな。
葵さんからお母さんの様子を聞くことが怖くて、葵さんが朝食を準備してくれている間に乾かしてもらった下着と制服に着替えた。
わたしの部屋とは全然ちがうのに、すごくリラックスした気持ちでソファーを背もたれにラグに座ってテレビを見ていた。
こんなにのんびりした朝は初めてかも。
いつもお母さんにびくびくして、朝は息をひそめるように行動して、みんながまだ来ていない一人ぼっちの教室で仮眠をとっていた。
朝のテレビを見たのも久しぶり。
「あ…!」
「ん?」
できた朝食をローテーブルまで持ってきてくれた葵さんがわたしのあげた声に反応した。
「好きだった俳優さんが、結婚だって…」
わたしの悲しそうな声と目線につられるように葵さんもテレビに目を向ける。
「…ああ、結衣はこういう顔が好きなんだ」
「かっこいいじゃないですか。中身もイケメンなんですよ?まだ28歳なのに結婚なんて…」
「人気絶頂のときに結婚なんて踏み切ったよな。まあ、28歳なんて結婚適齢期じゃねーの?」
「そうですよね…」
ふと、お母さんが結婚したときの年齢を思い出した。
「結衣のお母さんも結婚早かったんじゃねーの?」
お皿を並べ終えた葵さんは最後に飲み物を持ってきてくれて。
わたしのコップにはオレンジジュース、葵さんのコップにはコーヒーが入っていた。
「はい。そうなんですよね……」
「成瀬さんの年齢で成人した息子がいることもびっくりしたよ」
「涼助くんにあったことあります?」
「あるよ。たまに連絡取り合ったり、一緒にカラオケ行ったりするよ」
「そうなんだ!普通に仲良しですね」
「まあ、年そんなに変わんないから」
「あ…そっか、葵さんもまだ若いですもんね。ちなみに、今おいくつなんですか?」
「26」
「…え?」
「意外と年いってんだわ」
わたしの反応に慣れてるみたいで、葵さんは気を悪くした様子はなく手を合わせてからご飯を食べ始めた。
「結衣のこと童顔だっていいながらも、俺もまあまあ若く見えるんだよ」
「24ぐらいだと思ってました」
「今年27歳だから、やや若く見えるぐらい?」
「いやいやいや…20代前半と20代後半はだいぶ違って見えます…」
葵さんの職業にもびっくりしたし、葵さんの実年齢にもびっくりした。
最初のときに年が近いって言ってたから、涼助君と同い年だと思って、余計に24歳だと確信してから聞いていた。
「葵さんももうすぐ結婚適齢期ですね」
わたしも手を合わせてから作ってもらった朝ごはんを食べ始める。
「そうだねー。最近、友人の結婚式も増えてきたかな。ご祝儀貧乏だよ」
「そんなに包むんですか?」
真面目に聞いたわたしがツボに入ったみたいで、葵さんが飲んでた味噌汁をぶっとふいた。
顔をよけて笑いを隠そうとしているけど、肩を震わす姿がばっちり見えている。
「自分の結婚式のときはしっかり回収しないとな」
そういってこの話を締めた葵さんに、聞いておかなきゃいけないことを見つけた。
「葵さん、彼女は…!?」
「え?営業妨害するつもりですか?」
軽くあしらうように発言する葵さんの顔は意地悪ーく笑ってる。
聞こえるはずの音が聞こえず、寝ていた脳が少しずつ覚醒していく。
ゆっくり頭まで覆っている布を下すと、眠気が一瞬にして飛んで行った。
「わたしの部屋じゃない…」
わたしが寝ている場所はわたしの部屋ではなかった。
見慣れない家具たちに囲まれて、ぽつんと敷かれた布団に隠れるように寝ていたのだ。
あれ、あれ?確か……
ゆっくり昨日の記憶とたどっていき、ようやくここが葵さんの空き部屋だって理解することができた。
にしても、スマホやケータイがないと、こういうときに時間を確認したりアラームをセットすることができないから不便だと思う。
今時、高校生なのにスマホを持っていないのはきっとわたしくらいだから。
葵さんに言われた通り、寝る前にかけた鍵を解除して、葵さんがいるだろうリビングに向かうと、明かりはついているし、ローテーブルの上には洗濯し終えたわたしの洋服が置いてあるのに、葵さんの姿がなかった。
とりあえず、葵さんが来るまでソファー前のラグに座ることにした。
少しすると、スマホを片手に納得できない顔をした葵さんがリビングに入ってきた。
「おはようございます」
葵さんの様子が心配で声をかけるのに戸惑ったけど、自然な感じで挨拶をしてみた。
「え、ああ…おはよう。寝れた?」
「はい、結構ぐっすり。おかげでお寝坊です」
「目覚ましかけてなかったのか?」
「……スマホを持たせてもらってないので」
そういって苦笑したわたしに、葵さんは優しい声で「ごめん」と言った。
「結衣は今日、学校行きたい?」
「え……、できれば…」
今の私には学校しか居場所がない。
ここがなくなったら本当に一人ぼっちになってしまうと感じるから、休むことで存在を忘れられることが怖かった。
「……じゃあ、休めないな」
ぽんっと私の頭に手を置く葵さんの顔は、優しくて、少しだけ…切なそうに見えた。
「ご飯食べたら、結衣の家に一度帰ろう」
「…はい」
お母さん、どうしてるかな。
もう、仕事に行ったかな。
昨日、葵さんがお母さんと話をしてくれたみたうれいだけど、心配してくれたのかいはな。
それとも、どうでもいい感じだったのかな。
葵さんからお母さんの様子を聞くことが怖くて、葵さんが朝食を準備してくれている間に乾かしてもらった下着と制服に着替えた。
わたしの部屋とは全然ちがうのに、すごくリラックスした気持ちでソファーを背もたれにラグに座ってテレビを見ていた。
こんなにのんびりした朝は初めてかも。
いつもお母さんにびくびくして、朝は息をひそめるように行動して、みんながまだ来ていない一人ぼっちの教室で仮眠をとっていた。
朝のテレビを見たのも久しぶり。
「あ…!」
「ん?」
できた朝食をローテーブルまで持ってきてくれた葵さんがわたしのあげた声に反応した。
「好きだった俳優さんが、結婚だって…」
わたしの悲しそうな声と目線につられるように葵さんもテレビに目を向ける。
「…ああ、結衣はこういう顔が好きなんだ」
「かっこいいじゃないですか。中身もイケメンなんですよ?まだ28歳なのに結婚なんて…」
「人気絶頂のときに結婚なんて踏み切ったよな。まあ、28歳なんて結婚適齢期じゃねーの?」
「そうですよね…」
ふと、お母さんが結婚したときの年齢を思い出した。
「結衣のお母さんも結婚早かったんじゃねーの?」
お皿を並べ終えた葵さんは最後に飲み物を持ってきてくれて。
わたしのコップにはオレンジジュース、葵さんのコップにはコーヒーが入っていた。
「はい。そうなんですよね……」
「成瀬さんの年齢で成人した息子がいることもびっくりしたよ」
「涼助くんにあったことあります?」
「あるよ。たまに連絡取り合ったり、一緒にカラオケ行ったりするよ」
「そうなんだ!普通に仲良しですね」
「まあ、年そんなに変わんないから」
「あ…そっか、葵さんもまだ若いですもんね。ちなみに、今おいくつなんですか?」
「26」
「…え?」
「意外と年いってんだわ」
わたしの反応に慣れてるみたいで、葵さんは気を悪くした様子はなく手を合わせてからご飯を食べ始めた。
「結衣のこと童顔だっていいながらも、俺もまあまあ若く見えるんだよ」
「24ぐらいだと思ってました」
「今年27歳だから、やや若く見えるぐらい?」
「いやいやいや…20代前半と20代後半はだいぶ違って見えます…」
葵さんの職業にもびっくりしたし、葵さんの実年齢にもびっくりした。
最初のときに年が近いって言ってたから、涼助君と同い年だと思って、余計に24歳だと確信してから聞いていた。
「葵さんももうすぐ結婚適齢期ですね」
わたしも手を合わせてから作ってもらった朝ごはんを食べ始める。
「そうだねー。最近、友人の結婚式も増えてきたかな。ご祝儀貧乏だよ」
「そんなに包むんですか?」
真面目に聞いたわたしがツボに入ったみたいで、葵さんが飲んでた味噌汁をぶっとふいた。
顔をよけて笑いを隠そうとしているけど、肩を震わす姿がばっちり見えている。
「自分の結婚式のときはしっかり回収しないとな」
そういってこの話を締めた葵さんに、聞いておかなきゃいけないことを見つけた。
「葵さん、彼女は…!?」
「え?営業妨害するつもりですか?」
軽くあしらうように発言する葵さんの顔は意地悪ーく笑ってる。
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