見出された運命の先に

イミティ

第19話


 すみません、少し遅れてしまいました!

 今回は料理回的な。料理とか私は全然、それこそ自分の料理の腕は電子レンジレベルと言えるほどに知らないので、少ない描写でもめちゃくちゃ苦労しました( ̄▽ ̄;)
 何か違和感あっても見逃してくださいな。







 そういうものかと軽く納得する。俺としても交流を持つのは全然構わないのだが、随分とグイグイ来るなと。
 
 隣のルリは既に巻き込まれないように視線を外している。会話は俺に任せるつもりなのだろう、ルナやミレディの時のようにならないために。
 
 テーブルに頬杖をついて少し気安い雰囲気を出す女性、テレシアさんは、俺とルリのことを一度交互に見た。

 「さて、と。話題としてはありきたりになっちゃうんだけど、二人はやっぱり迷宮が目当てでここに?」
 「そんなところです。そういうテレシアさんの方は、この街に慣れているような気がしますが……」
 「私はもう長い間この街に住んでるからね。ただ迷宮が目当て、というわけじゃないけど」
 「じゃあここに住んでるのは昔からいるから、という理由ですか」
 「どちらかと言うと仕事の都合上という感じかな。私は色々な場所を巡りたい旅人気質なんだけど、成り行きからね」

 どんな仕事かは知らないが、冒険者といったフットワークの軽い自由な職業ではないらしい。この街といえば探索者だが、もちろんそれだけじゃなく他の職業だって沢山あるだろう。
 むしろ、移動しながらできる仕事の方が少ない。

 「それはそうと、迷宮、もう入ったかい?」
 
 自分のことを話すよりも、人のことを聞きたい。そう分かりやすくテレシアさんがテーブルの上で組んだ腕に顎を乗っけて、こちらに問いかけてきた。
 頬杖よりも更にリラックスしたような、そして少しだけだらしないような、そんな体勢。

 まぁ、そういう人なのだろう。

 「先程まで試しに入ってましたよ、丁度」
 「それはそれは、どうだった?」
 「一階層目は問題ありませんでした。な、ルリ」
 「……」

 声は出さず、コクンと頷いて控えめに返事をする。一階層目、ゴブリン種が蔓延る最初の階層は余裕と評しても問題ない程に安全で楽だった。
 慢心はしないつもりだが、流石にあそこで危険に陥ることは、それこそ数百体のゴブリンが突然四方の通路から押し寄せてくる、ぐらいの異常事態でないと有り得ないだろう。

 それも上級魔法を使えばある程度一掃出来そうな気はするが。

 「その感じだと、もしかして冒険者として活動してたのかな?」
 「少しだけですけど」
 「兄妹揃って?」
 「……まぁそんなところです」

 正確にはルリの方が先に冒険者登録をしていて、そこに俺が合流しただけだが。
 ルリの方に向いた視線は、ルリ自身が拒絶している。あまりテレシアさんのことを好んでいない様子で、どこか不満げにも見えるのはそういうことからなのだろうか。

 「あらら、嫌われちゃったね」
 「すみません、人見知りなんですよ」

 ルリと家族という設定なので、一応口にしておく。ルリは人見知りというか、コミュニケーションに難ありというか、まぁ改善して欲しいところではあるな。
 
 「そういうテレシアさんは、探索者としては活動してないんですか?」
 「ん、たまーにね。基本的には街に居るから」

 先程の仕事関係だろうか。ただやはりというか、戦闘もこなせる人らしい。
 見た目と戦闘力があまり関係ないこの世界では、中々把握が難しいところもある。目の前の女性も、パッと見では華奢で、運動神経は良くとも戦闘なんてできないように見えるがそんなことは無いようだ。

 その話をしている途中に、店員が皿を運んでくる。

 確か、スワンプロッグの炙り焼きと、そして俺がオーク肉の香草焼き。
 対面には時間的に同じだったからか、一緒に運ばれてきたコカトリスの卵焼きも配膳される。

 正直、予想以上にどれも美味しそうな見た目をしている。魔物も肉になってしまえば食欲をそそる見た目になるということか。

 「お待たせしました」

 そして更に飲み物。俺のところには水が、そしてルリにはワイン……果たして俺も対抗した方が良いのかは判断がつかないが、テレシアさんも同じくワインが運ばれていた。

 水は俺だけ……送迎役だろうか? まだ車の免許持ってないぞ。

 「……こういう店、もしかして初めてなのかい?」
 「あ、いえそういう訳じゃ。まぁでもあまり食べない種類のものではありますね」

 俺がどこかソワソワしていると思ったのか、少し呆れ気味にテレシアさんが聞いてくる。もちろんそういう訳ではないが、食べ慣れないものなので少し勝手がわからない感じはするかもしれない。

 ルサイアの王城では馴染みのあるステーキやサラダといったものが多かった。高級感もあったのだが、どこか日本と似ているというか……その点こちらの料理はまさに異世界特有といった感じだ。

 ルリのスワンプロッグなんか、一体どれだけデカいのだろう、見た目は足なのだが明らかにカエルのサイズではない。
 下手したら俺のオーク肉の方が量が少ないんじゃないかと思うが、そのオーク肉も結構な量だ。レストランでもこの量は中々出てこない。

 俺からしてみても明らかに多い。この世界の人間は食欲旺盛なのか。
 そして俺よりも多いそれを見て普通にしてるルリは、俺が把握している以上の食欲があるのか。宿で出る食事や携帯食などは大して食べていた記憶が無いのが余計にギャップがある。

 なお、テレシアさんの方に置かれたそれは、量的には女性が食べるに相応しい量だ……皿と乗っている料理の比率という意味では高級感溢れているが。

 「……」

 じゅるり、という音が鳴りそう。テレシアさんに視線を向けて、食べることを先に断わってから切り分けて口へと運ぶ。

 ───もし食レポが上手だったなら、俺は様々な語彙を用いてこの料理の味や食感などを表現出来ただろう。しかしながら俺にそんな経験は無いので、これを表すにはこの言葉しか出てこない。

 「ただただ美味い」
 「……でしょ?」

 オーク肉、恐るべし。香草焼きというのも何気に初めて食べたが、魔物の肉というのはこんなにも美味いものなのかと改めて思う。
 家庭的な味には程遠い。ただ濃い味付けのこれは贅沢な食事をしている感じがとても強く、それ故に食欲がそそられる。昼に携帯食という味気ないものしか食べていないとなれば尚更。

 ルリがどこか自慢げに頷いているのは、俺が勇者で異世界出身ということから、この世界の人間として誇っているのかもしれない。

 そんなルリだが、一口一口は可愛らしいものの、スピードを落とさず器用に肉を取っている。骨ありなのだが、あれは持って食べれる大きさでは無いしな。
 カエルの魔物の肉、少し気にならなくはない。

 「……ちょっと、食べる?」
 「ん? あー……じゃあ貰おうかな」

 そう聞いてきたのは、俺の思考を読んだのか、オーク肉を予想以上に美味しげに頬張ったからか。
 その提案に頷けば、ルリがフォークに肉を取り、それをあーんと俺に向ける。

 あーん、だ。ルリの口もそれを示すように『あーん』と動く。

 天然なのか、意図的なのか。しかも幼い少女にやられるこれは……ルリにやられるそれは、一言で言えばグッとくる。
 
 「あ、私にはお構いなく」
 「……別に、兄妹なので恥ずかしくはありませんよ」

 テレシアさんが気を使ったのか笑って言ってくるので、苦笑いで返した。いやまぁ、実際には兄妹じゃないので多少恥ずかしさはあるが、一応これも慣れがある。

 差し出されたそれに自然に口をつければ、一瞬ルリが恥ずかしげにするが、それもすぐに戻した。意識していなければ気づかない程度の差。

 それはともかくだ……うむ。

 「こっちも中々、こってり系で美味いな……ありがとう」
 「……うん」

 カエルの魔物の肉と言ったか。カエルと言えば鶏肉の味がすると日本ではよく言われていたが、確かにそれだ。どこか手羽先のようにも感じる。
 味付けもこってり系で、非常に濃い。濃い味が好きな方である俺にとってもかなり好みの味で、満足度が高い食事である。

 もぐもぐと咀嚼し、その美味しさにお礼。

 「……わ、私も、トウヤの、食べたい……いい?」
 「あぁもちろん。俺だけ食べるんじゃあれだからな」

 そうすれば、オーク肉が食べたくなったらしいルリがそう言ってくるので、こちらも自然にフォークに肉を取って差し出す。
 先程の流れで俺も『あーん』の体勢になってしまったが、ルリはそれで良かった様子。

 多少恥ずかしがりながらも、それを口に含む。

 もきゅもきゅと、少し大きかった肉を頬張るルリは、飲み込んで一言。

 「……ん、美味しい」
 
 こちらも満足げだ。

 お互いに満足したところで、横目でテレシアさんのニヤニヤとした顔を捉える。

 「いやぁ、兄妹で仲睦まじい……私は胸がいっぱいだよ」
 「そうですかね?」
 「私の知っている兄妹は、そこまで仲良くないから余計にね。見てて頬が緩んでしまうよ」

 俺のもつ兄妹への認識は、非常に仲がいいものなのだが……まぁこちらの世界でも兄妹仲というのは多少険悪なことが多いのだろう。俺もそっちが一般的であることぐらいは把握している。
 
 でもルリを相手にこうなるのは、ある種自然だ。

 そう言っていれば、テレシアさんはその卵焼きをスプーンにすくってこちらへと向けた。

 「はいこれ、微笑ましいものを見せてくれた君達に、私からのお礼」
 「え、いやでもこれ高いやつでしょう? いいんですか?」
 「お金なら気にしてないよ。それにトウヤ君、君、これ気になってたんだろう?」

 確かに、確かに気になっていた。コカトリスの卵焼きってなんだろうって気になっていた。
 コカトリスの卵の卵焼きなのだろうが、金貨が必要な料理の味とは一体、と気になってしまうのは仕方ないだろう。

 そう考えているうちに、先にルリが横からパクッと……テレシアさんを苦手でも、貰えるものは貰うらしい。
 それを見てテレシアさんも気分を害した様子はない。むしろ笑って、改めて取り直す。

 「妹───ルリちゃんの方が食べたからね。君も遠慮なく食べていいよ」
 「……でしたら、一口いただきますね」

 流石にテレシアさんのような美人となれば同じスプーンというのは多少気にはなるものの、向こうが全く気にしていないようなので、こちらも努めて気にしないようにしつつありがたく貰った。

 ───ふわとろ。ふわとろだよこれ。

 「お味の方はどうかな?」
 「……流石は金貨の味、と言いたくなる美味しさです」
 「ハハハ、それは何より。私がわざわざ頼む理由がわかっただろう?」
 「えぇ、俺も今度機会があれば頼もうかなと思いましたよ」

 肉などとは違う種類の味。これはそう、上品な味わいと言おうか。
 市販の卵では絶対に味わえないまろやかで濃厚で、甘みのある卵焼きだ。コカトリスという魔物が非常に上質な卵を産むというのがよく理解できる。

 わざわざ外食に来た甲斐があったというものだ。








 オーク肉って実際どんな味なんでしょう? やはり豚肉なのか、それとも違うのか……。
 ちょっと今回もまた中途半端な感じがするんですけどね、時間に追われてしまったので。

 次回は明後日辺り。またお待ちを。

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