見出された運命の先に

イミティ

第2話

 ちょっと短めで申し訳ない。まだもうちょっとこのシリアスな空気続きます。







 「ごめんなさい、叶恵を部屋に連れていくわね。ずっと居られると刀哉君も落ち着かないだろうし」
 「そんなことは……いや、そうだな。丁度俺も、少し外の様子を見たかったところだから、俺が連れてくよ」
 「病み上がりじゃないの?」
 「病気ってわけじゃないし、平気だ」

 そう言いつつ、俺は起き上がって、眠る叶恵を腕に抱く。
 鍛えているため、叶恵ぐらいなら余裕で持つことが出来る。お姫様抱っこのようになってしまうのは仕方ないが、まぁ、今更気にすることもないと思うので、このままで行こう。

 「それにしても、ずっとつきっきりってのも、過保護な気がするんだがな」
 「仕方ないでしょ。命に別状はないとは言え、一人で突っ走ったおバカさんとなれば、誰だって心配にもなるわ」
 「美咲みたいにか?」
 「茶化さないで、もう……そうよ、私みたいによ。これでいい?」
 
 唇を尖らせつつ言う美咲に笑って悪い悪いと謝りながら、廊下に出る。叶恵の部屋はそう遠くないし、美咲の部屋と隣だ。

 しかし、確かに廊下の雰囲気は重い。ここはそうでも無いが、上は燃え、下は血痕などが凄まじいはずなので、この階層が最も安らげるはずだが、それでも、息苦しい空気が漂っている。

 思ったよりも、キツイのかもしれない。誰も彼も俺みたいになる訳じゃない。自分のためを思えば、これ以上死ぬ可能性があるようなことはしたくないだろう。

 「今のところ大丈夫そうな奴ら、分かるか?」
 「そうね……樹君はキツそうだけど、それでも周りほどじゃない。あとは門廻せど君と鎮目しずめ君、あと二三と……みのりえんじゅちゃん、かしら。万全とは言えないけど、皆私ぐらいには平気だと思うわ」
 「そうか……声をかけるのは最初はその辺からかな」

 聞いてみれば、美咲の言葉は、凡そ予想通りの内容だ。特に慎二は当たり前のように思える。
 樹は、確かに普通よりは精神力があると思う。だが飛び抜けているわけじゃない。だからこその、キツイけど大丈夫ぐらいの感覚。

 その少しの会話だけで叶恵の部屋には着く。中へと入り、そっとベッドに寝かせてあげれば、改めて申し訳なさが浮かぶ。

 「謝るのは起きてからにね」
 「分かってる……心配する側の辛さも知ってるからな」
 
 俺が拓磨達を心配していたように、叶恵もまた俺の事を心配してくれてたはず。俺は助けに行ったが、叶恵は動けなかった。

 その時のもどかしさは、やるせなさは……多分、辛い。

 「こういう時、お詫びに何してあげたらいいんだか。それとも言葉だけでいいのか」
 「……自分で考えなさい」
 「それも分かってる。しっかりと謝れば、叶恵は許してくれるはずだ」

 眠る叶恵に、俺は笑いかける。歳は同じだが、どこか妹のようにも感じているのだ。拓磨や美咲、樹は親友だが、叶恵だけはちょっと違う。

 守らなきゃいけない、みたいな。家族に近いんだろう。

 伊達に幼馴染みをやってる訳じゃない。

 叶恵の部屋から出れば、美咲はこちらを向く。

 「それじゃあ、私は部屋に戻ってるわね。今日と明日は何も無いって言ってたし、刀哉君もまだ起きたばかりなんだから、休みなさいよ?」
 「あぁ、もう少ししたら休む」
 「その言い回し、まだ何かするつもりなの?」
 「変なことはしない。ちょっと話を聞くだけだ」

 皆の様子は見ておきたいし、拓磨も、せめて声だけはかけておきたい。
 美咲は完全に納得したようじゃなかったが、少なくとも俺は体に不調があるわけでも、特別疲労を感じている訳でもない。その旨を伝えれば、渋々頷いてくれた。

 美咲が部屋に戻るのを見届けて、女子エリアからは抜け出す。時間が解決してくれる者も居るだろうが、誰かの支えが必要なこともある。

 かと言って俺だけで回るのは難しいのも事実。こういう時必要なのが、やはりリーダーの存在だ。

 「一度様子を見てみるか」

 見てみないことには、拓磨の状態を把握することも出来ない。



 ◆◇◆



 拓磨の部屋は分かりやすい。何せ、俺の隣だ。
 静寂の中、拓磨の部屋もまた、音は聞こえてこない。俺は控えめに扉をノックした。

 「拓磨、俺だ。刀哉だ。開けてもいいか?」
 
 扉越しに声をかけてみるが、数秒待っても返事はおろか、歩き出すような音すら聞こえない。

 もう一度ノックをして、同じように呼びかける。しかしやはり、反応は返ってこない。
 
 生真面目な拓磨が、二度も来訪の音を見送ることは無い。聞こえていないなら別だが、音がしないということは行動もしていないということ。寝ていなければ、普通なら絶対に反応しているはずだ。

 「───開けるからな」

 一応言葉に出しつつ、俺は扉を開こうとする……が、鍵がかかっているのか、ドアノブが回らない。
 普段からわざわざ鍵をかけておく必要は無い。なのに鍵がかかっている理由は、そういうことなんだろう。

 「拓磨、居るんだろ? 開けてくれ。少し話がしたい」

 改めて、少し強めに叩きつつ中へ呼びかければ、今度は反応があった。微かに歩く音。それはベッドから降りる動作も混ざっていたようで、それだけで状況はイメージできる。

 だが、扉が開く気配はない。

 『刀哉か……意識が回復したのだな』
 「あぁ、どうにか。それより扉を開けてくれ。少し話がしたい」

 返ってきた声は、酷くやつれ、掠れていた。
 予想通り……いや、予想以上に辛いのだろうと思う。

 俺が呼びかければ、拓磨は恐らく、扉の向こう側で首を振った。

 『……すまない、今は一人にしてくれ』
 「色々悩んでいるんだろ? 誰かに話さなきゃ無理なことはある」
 『それでも、無理なものは無理だ……自分のことは自分で解決する。お前は気にしなくていい』

 拓磨にとって今は消化時間。もしかしたら自分だけではどうしようもない程に、難しい問題だ。だが、だからこそ他の人間に打ち明けるのは難しい。

 声音から、今は無理だろうなと俺は悟った。無理に押入るのは親友の特権かもしれないが、それが許されるのは良い方向に進む場合のみだ。
 今のタイミング、まだ拓磨は己の中で何も答えを見つけていない。その状態では俺とまともに話が出来るはずもない。

 きっと拒絶だけをするだろう。拓磨を更に更に追い込み、それだけでしかない。

 今は、引くしかなかった。

 「……わかった。また後で来るからな」
 『出来れば暫くは来ないで欲しい』

 俺の意思とは反対に、拓磨は強く、拒絶の言葉を残して部屋の奥へと引き返した。

 親友に拒絶されたからといって、悲しむことは無い。あれは必要なことで、拓磨の気持ちは一番理解できているつもりだ。
 その上で俺は、一時的にとはいえ拓磨に失望されることも視野に入れなければいけないだろう。今の拓磨は自暴自棄、いや、現実逃避を繰り返している。

 どう頑張っても他者の介入が必要だ。そしてそれは多分……拓磨と幼馴染みの美咲でも、男の親友である樹でも、ましてや叶恵でもない。

 ───他でもない、俺なんだろう。
 
  




 拓磨、ちょっと大変そうですね……書いてる私も心が痛いです。

 次回は明日、だと思われる! 頑張ります……!

 早いところ刀哉に旅をさせたいですね。

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