見出された運命の先に

イミティ

第5話


 文字数が多かったり少なかったりしますが、キリのいいところで区切るとどうしても中途半端になってしまうんですよね。
 どれくらい違うかと言うと、前話が6100文字に対し、こっちは2500文字。







 ───もちろん、一度でも攻撃が入ることなんてなく。

 グレイさんも朝の時間はそう長くないようで、時間にしては十分といったところか。

 それでも、俺は地面に倒れていた。

 体力は? まだまだ有り余っている。

 ただ、疲れた。息は荒くないし、汗もほとんどかいていないが、取り敢えず倒れ込みたい気分だった。剣をぶつけ会う度に、差が分かるというのは辛いものだ。
 すぐにサッと起き上がって、体についた砂をはたく。

 「……しかし、貴殿は本当に、ただの学生だったのか?」
 「………えぇ、ただの学生でしたよ。事実、何度も動きを指摘されました」
 「確かに、私は色々と指摘した。だが貴殿は一度の指摘でそれらを全て直していたし、そもそも最後の方の動きはもはや……」

 グレイさんなりに、俺の動きは単なる学生にできるものとは思えないらしい。俺はもちろん、先程も言ったように何ら変哲のない……とまではいかないが、少なくとも実は凄腕の暗殺者とか、実は改造人間とか、実は異世界帰りの勇者とか、そんな『実は』と言えるような事実は全くないので、何も言えない。

 「身体能力はレベル1にしては驚くほど高いし、剣の扱いは少なくともぎこちなくは無い。動きに至っては本職の騎士と比べても何ら遜色はないだろう。これなら現状でも、レベル50が平均である私の騎士団で採用できてしまうほどだ」

 俺としてはこの身体能力でようやく『レベル1にしては』と言われる程度なのかと驚くぐらいだ。これでも肉体には自信があった。足は早いし、筋力はあるし、もちろん体力だって並ではない。

 それでも、恐らくこの世界ではまだ低い方なのだろう。でなければわざわざそんなことは言わない。
 ぶっちゃけ今の俺は地球に居た頃の二倍から三倍くらいの身体能力があると考えているが、それでもまだ、足りないのだ。

 「ありがとうございます」

 しかし騎士団で採用できるということは、総合的には及第点、と捉えていいのだろう。その点に関しては、俺はこの世界でも普通に生きていけると示している。
 平均レベルが50、つまり俺はレベル1にして、それらと同じとまでは行かなくとも、足を引っ張らない程度には認めてもらえたわけだ。

 グレイさんはその厳しい顔を僅かに緩めた。

 「どれ、体が少し汚れただろう。我が騎士団の兵舎には風呂があるから、使っていくといい」
 「え、風呂? 良いんですか?」
 「この時間なら誰も使っていないだろうから平気だ。それに、砂まみれで朝食を食べるというのも嫌であろう?」

 それは確かに。手も綺麗ではないし、着替えはもちろん、体は一度洗いたいところ……。
 何気に昨日はゴタゴタで風呂には入らなかったし、入れなかったし、それを考えると、昨日分も含めて入りたい。

 「じゃあ、お言葉に甘えて」
 「うむ、案内しよう。着替えはメイドから似たような服を一式貰っておく。部屋まで取りに戻るのも面倒であろうからな」
 「ありがとうございます」



 ◆◇◆


 大浴場とも言うべき風呂には、シャワーの代わりになんだろう、石が壁にはめ込まれていて、それに触れると僅かな吸着感と共に天井からお湯が降ってくるという謎の機能がついていた。
 もちろん鏡もあるし、シャンプーはないが代わりに石鹸もあった。お湯は熱々で身を癒すには十分かなと思う。

 大して現代と変わらず、不便さを感じなかったことに驚きながらも、風呂から出ればしっかりと替えの服を用意してくれていて、グレイさんに段々申し訳なくなってきた。騎士団長にそんなことさせていいのだろうか。

 「気にするな。身分としては勇者の方が断然上であるからな、誰も気にすまい」

 とのことで、本当に気にしていない様子。残念ながら勇者という実感はほとんど無いので、依然として普通の高校生、という認識のままだ。

 グレイさんとは兵舎で別れ、さっぱりした気分のまま歩いていると、その途中に昨日のメイドと出会い、「朝食の用意が出来たので食堂までお連れします」と、食堂まで連れていかれた。

 どうやらグレイさんに着替えを渡したのはこの人らしい。昨日からやたらと会うが、その辺りを聞いてみたら、なんでもこの人は俺専属のメイドらしい。
 俺を含めた勇者クラスメイト26人全員に一人のメイドがついているらしく、至れり尽くせりだなと思う反面、メイドや従者という存在に不慣れな高校生にとっては少しだけストレスかもしれない。

 それを緩和させるように、部屋のすぐ外で待ち構えている、なんてことはしていないのだろうが。

 そして迎える朝食。今日も昨日の夕食と同じように全員揃ってだ。
 ちなみに朝は軽いもの、とは言っても肉はあるが、昨晩程ではない。これなら十分美味しく頂けるし、胃もたれも起こしそうにない。

 食べている最中、メイドから早速「今日からは訓練があります」と簡潔に告げられたが、俺は事前に知っていたのもあって特に驚くことは無かった。

 「訓練、ね。騎士団が指導って、一体どんな訓練させられるんだよ……」

 樹がしみじみと呟いていたので、俺はサラダをつつきながら、ポツリと。

 「武器の扱いと基礎体力作り」
 「ありそうね。剣なら、素振りとかもあるんじゃないかしら」
 「うぅ……私、大丈夫かなぁ」
 「叶恵は………難しそうね。無理はしない方がいいわよ」
 「はぁい」

 叶恵は天然ではあるが頭は割といい方であるし、性格も優しく完璧であるが、運動神経は絶望的である。体育の評価は2。ちなみに1は見学のみで体育にほぼ参加しないない人に与えられる最低評価で、叶恵は授業には出ているから、最低限この評価が与えられている。
 
 そんな叶恵からしてみれば、当然武器の扱いとか言われても全くもって想像つかないはずで、美咲が素直に難しいと言ったのもそういう背景があるからだ。
 俺だったら『無理だからやめとけ』と容赦なく言うだろう。

 「しかし、叶恵はともかく美咲はこういうのは得意なのではないか? 剣道部に加えて、家も道場をやっているのだし、少なくとも俺達よりはアドバンテージがあると思うのだが」
 「あら拓磨、剣道と剣術は全く違うし、道場をやっているのはお爺ちゃんだから、あまり私とは関係ないわ。教わったのも初歩の初歩、しかも刀のちょっとした扱いぐらいだし。私のアドバンテージは、ほとんど剣道をやってたことだけね……それも怪我なんてさせないようにするスポーツだけどね」
 
 叶恵とは違い、美咲は運動神経がズバ抜けていい。男子を含めて比べても上位にランクインするだろう。身体能力も高いし、女子にしては筋肉も…………これ以上考えると鋭い女の勘で察知されてしまうので無になる。

 デリカシーねデリカシー。









 次回は明日のこの時間帯でございます。待っていてくださいね。

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