異世界歩きはまだ早い

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第十五話 おサムライさんの消失

「と言うことでピタ、トメ、ユイリー。交代しよっか。」
 
 いきなりの提案に魔法使い見習いのユイリー・シュチュエートは疑問をていした。
 
 「かなみちゃん、それって『相手を』ってこと?」
 「そっ。この男の人に負ける気はしないんだけど……たぶん、かなみじゃ勝ちきれもしない。けど、かなみ以外の皆が力を合わせれば無力化できる相手だと思うからそっちは頼みたい。ソギマチあの四人はかなみに任せてくれて大丈夫だから。」
 
 かなみはニカッと笑うとソギマチ達の方を向き言葉を再び紡ぎだす。
 
 「ソギマチちゃん達に聞きたいんだけど、もしかして四人に分身したせいで、力も四等分にされちゃってたりしてない?」
 
 少女がなんでも無いように言うと、ネコミミが四つ同時にピクリと動いた。
 
 蝦藤(えびとう)かなみは分身の欠点をようやく見抜いた。
 それはあまりにも単純かつ大き過ぎる欠点であったが、全てが実像というインパクトとモフモフミミシッポの魅力に取り憑かれ、あのチート少女かなみでさえ、見抜くまでに時間を要してしまった。
 
 「気付いてたのかっ……!?」
 「バカっ! また余計なこと言ったなぁ!?」
 
 素直過ぎるソギマチ達の反応により確信するかなみ。
 その口角は自然にゆっくりと上がっていく──。
 
 「どうせなら、一人とは言わず四人とも捕まえちゃおっかなぁ……。」
 
 両手を顔の前ですり合わせ、何かを企むように微笑むかなみ。
 その姿はまるで、笑みだけで喜怒哀楽を表現する母親のそれに似ている。
 
 それを見たトメが反応に困ったように言う。
 
 「か、かなみさんが一人で大丈夫そうでしたら、ワタクシ達は別に構いませんが……。」
 「うんうん。」
 「私もそれで大丈夫ですよ。」
 
 
 ピタやユイリーが流れに乗せ同じように賛成する中、今しかない! とばかりにソギマチフォースが一斉に逃走をはかった。
 
 「あっ! 逃げたぞかなみ殿!」
 
 縄に縛られたソギマチを三人が担ぎ上げ、脱兎のごとくエイサッサ。
 スピードには自信があるのか、あっという間に砂粒ほどの大きさになった。
 
 「じゃ、そっちは頼んだよ!」
 
 そう言ってかなみはトップスピードで駆け出していく。
 
 「待てーー!」
 
 砂を巻き上げていく乱暴な走り方にも関わらず、その距離を一気に縮めていく。
 
 「来てる来てるっ! 来てるよぉ! はやくぅぅ! 追いつかれちゃうよぉぉおぉ!!!」
 
 縄に縛られたソギマチは、後方より迫り来る無邪気な笑顔の少女に対し、ただ見ていることしか出来ず、じたばた暴れながら叫び続ける。
 
 「このままだとみんな捕まっちゃうよ!」
 「ならここは三手に別れて逃げるべきです。そうしましょう。」
 「あいわかりした! せーのの合図で散開するぞ!」
 
 〝知識〟〝真心〟〝技術〟によるひとり会議が終わり、三人が意を決する。
 
 「え、……ちょ、ちょっとぉ……? そんなことしたら、ソギマチさんが」
 「「「せーのっ!」」」
 
 三人がバラバラの方角に走り出しすと同時に、担がれていた聡明担当のソギマチが地面に落っこちた。
 
 簡単に言うと〝聡明〟は捨てられたのだ。
 
 「えぇぇ!? うそぉ!!」
 「時間稼ぎは頼んだよっ!」
 「いつか、助けに行きますので。」
 「それまで頑張るんだぞぉ。」
 「この、裏切りソギマチィーーっ!」
 
 〝聡明〟の叫びも虚しくニタッと笑う影がソギマチに重なった。
 
 「ままま待って、いや! お願いしますっ! モフるのだけはっ! モフるのだけは許してぇ! …………ニャァァァァアアンッッ───!!!!」
 
 
 
──────────────────────
 
 ~~モテゾウサイド~~
 
 
 少女の断末魔がどこからか聞え、分かりやすく頭を抱える男、ワシュウ・モテゾウ。
 
 剣士とはほど遠いゆったりとした風貌の細いモテゾウの前には、七人の男女が立ちはだかっている。だがそちらに関しては毅然(きぜん)たる対応を示す。
 それは姿はまるで、七人を敵とすら認識していないかのように静寂を纏っていた──。
 
 「……どうやら、ひよこを仕分けている時間は無さそうだ。」
 
 辺り一面を巻き込みながら向かってくる砂の渦。
 それは轟音と共に凄まじい勢いで迫っていた。
 
 じきに荒野は砂嵐それに支配される。
 
 「うそだろ……!? このタイミングで砂嵐かよっ!」
 「そこまでの規模じゃねぇみてぇだな、視界が奪われる前にやっちまうか……?」
 「無茶言うな! 迂闊に出れば……殺られちまうのオチだ。」
 
 一度その強さを目にしている冒険者達は慎重だ。
 その慎重さを嘲笑うかのようにモテゾウは口を開く。
 
 「奪われるのが、視界だけで済むと良いな。」
 
 滲み出る猛者のオーラ。
 
 瞬時に悟る。
 決して安全とは言えず、時には命を掛けることもある冒険者達だからこそ分かる。分かってしまう。
 
 あれは祟り。触れてはいけない祟り領域
 
 本能が相手にしてはいけないと警告する。故に一歩身を引いてしまう。
 
 後ずさりした冒険者達の心を折るつもりなのか、モテゾウはカタナに手を添え居合腰を取りながら目を瞑った。
 それはあのチート少女かなみをも一撃で仕留めた【両断域】の構えに他ならない。
 
 瞬間、白く光る円が武者を取り囲むように出現する。
 
 「ちっ、さっきのあれか! これじゃますます無闇に近付けねぇ……!」
 
 苦い顔をする冒険者達に質問が飛ぶ。
 
 「あれは、なんなんですか?」
 「そうか……ユイリーちゃん達は知らないもんな。ヤツの周りで光るあの白いサークル、あれより内側に侵入した者は、問答無用でぶった斬られちまうみたいなんだ。」
 「サークルより内側……か。なるほど、それで近づけないのだな。」
 
 ピタは状況を理解すると、トメがさっそく動いた。
 
 「でしたら、遠距離から魔法を放てば良い話ですわっ!」
 
 かなみに改良された魔導書スペルブックを開き、中の一節から火球魔法を放つ。
 
 無詠唱で放つ場合より二割増の威力と速さを兼ね備えた火球がサークル領域に触れた瞬間、蜘蛛の子を散らすように掻き消えた。
  
 トメは一撃では足りなかったと、火球を何度も撃ち込むがひとつの例外もなく全てが虚しく掻き消される。
 
 「そんなっ! ワタクシの魔法が全く通用しないなんてっ……!」
 「今の、見えたか……? いつ斬ったのかオレには分からなかった。」
 「ああ。オレもだ……けど魔法が消えたっつーことは、斬られちまったんだろ……?」
 「ピタ。アナタは?」
 
 トメの傍で様子を見ていたピタの額から一筋の汗が流れる。
 
 「……辛うじて見えた。ヤツは間違いなく剣でお前の魔法を斬っていたぞ。抜く瞬間は見えなかったがな……。」
 
 モテゾウの一刀を目で追えたのは、この中ではピタが唯一であった。
 周りの反応からもピタはその事を察し自分なりの総括を始めた。
 
 「ヤツの抜刀術は、瞬速と謳われたこの私でも見切れそうにない。問題はあのサークルがある限り、物理も魔法もヤツに届かないと言うことだろう。本体をどうにかしなければ、サークルは止められそうもないが……」
 
 ピタに合わせるようにユイリーが紡ぐ。
 
 「その本人が、サークルに守護られていて近付けませんね……。」
 「じゃあ、どうしろってんだ……!」
 「かなみちゃんは、オレ達なら出来るって言ってくれてただろ! だったら何としても勝たなきゃだろっ!」
 「何か、なんでもいいっ、弱点はねぇのか!?」
 
 強靱かつ鉄壁の守護りをどうにかしようと冒険者達は躍起になる。
 そうこうしている間にも、サークルは広がり続ける。
 
 焦るばかりの冒険者達をなだめるように、ユイリーは提案する。
 
 「落ち着いてくださいっ。相手は逃げようとしていた筈です。ここはやっぱり、無理に戦う必要はないんじゃないでしょうか?」
 
 その意見に対し異を唱え始めたのピタ。
 
 「それはかなみ殿からではないか? 我々から逃げるつもりがあるならば、あんな芸当をわざわざ見せるとは思えんのだがな。」
 「確かにそうかもしれないですが、無茶をして死なれたら嫌です。」
 
 二人の会話に耳を傾けていたトメは口元に指をあてがい状況を整理する。
 そして不自然な事態に気づく。
 
 「ワタクシ達三人を軽く相手取る実力があったにも関わらず、襲いくる訳でもなければ逃げる訳でもない……意図が読めませんわね。」
 
 ピタ、トメ、ユイリーの三人は一度武者に挑んだことがある。
 その際は全く相手にならなかったばかりか、軽く峰打ちにされ仲良く気絶させられてしまっていた。
 
 少なくとも接近戦においては、束になっても適わない相手が自分から攻めて来ない事態に対し、トメは疑問を抱いたのだ。
 
 「まさか、仲間が逃げるまでの時間稼ぎ……?」
 
 思考を巡らせども答えが出ない。
 そこに冒険者の一人が口を挟む。
 
 「ユイリーちゃん達、サークルはどんどん広がってる。もうちょい離れた方がいいぜ。」
 
 サークルの範囲に全員が注意を払う一方で、その中心にいる男は意外なことに、別のことを考えていた────。
 
 
 (ソギマチよ、聴こえるか。)
 (あれ、なになにぃ、モテゾウから意識を飛ばしてくるなんて珍しぃ。なーんか気持ち悪ーい。)
 
 ──【念話】。
 特定の誰かと意識を共有し合うことで行える心情会話術の総称。
 魔力や協調性、理解力、想像力、意識の高さなど、種類モノによって必要な要素は異なる。
 
 アンデッド同士を繋げる屍兵念話デットークが二人のチャンネルだ。
 
 モテゾウは【両断域】を維持する為に集中しているように見えてその実、【念話】に重きを置いていた。
 
 それは何故か──。
 
 (お主がどの・・ソギマチかは知らぬが、頼みたいことがある。某が敵を引き付けている間に石を探しだし破壊してもらいたい。)
 (あー、なんだ。じゃあ、さっきの発言はフェイクなのねぇ。モテゾウ、強者を前にしてよく我慢した。本気で逃げるつもりなのかと思っちゃったけど、見直したよぉ。)
 (フン……私欲を優先するほど、恩知らずではない。それより時間がない。砂に視界を奪われる前に頼むぞ。)
 (あいわかりした。期待しててよ。)
 
 男が逃げも攻めもしなかったのは、周りを欺き注意を自分に惹き付けるための芝居だった。
 そうすることにより、ソギマチが余裕を持って召喚石を探せるようにするのが目的──。
 
 要するに、男は初めから諦めてなどいなかったのだ。
 
 連絡を受け取ったソギマチが残りの自分達にも連絡を取り、優先事項召喚石の破壊の為に動き出した。
 
 砂嵐はすぐそこまで迫っている。
 
 
 
──────────────────────
 
 ~~〝知識〟のサイド ~~
 
 
 
 チート少女の脅威から、命からがら逃げ切った〝知識〟が召喚石探しに奔走し始めたのは、砂嵐が大荒野を呑み込んだ直後のことだった。
 
 砂嵐が来る前に見つけるつもりで息巻いていたソギマチもこれには焦った。
 
 一人が捕まり、一人が囮となり、実質残った二人が探索に当たっていたのだが、視界がかなり悪い。見つけられない可能性すら出てきた。
 
 「ん? にゃにゃあ、あれ。」
 
 辺りに誰もいないためか素の口調が出ている〝知識〟のソギマチは、まともに目が開けられない状態の中で岩に接触。その岩に触れながら歩みを進めていると、不審なモノを発見した。
 
 岩陰から靴のようなものがはみ出ている。
 恐る恐る声を掛ける。
 
 「なぁ、誰かいるのかぁ?」
 
 声に反応したのか、汚れた皮の靴が岩陰に引っ込んだ。
 それを見たソギマチは返事を待たずさっと裏に回る。──目が合った。
 
 防具を着た男がいる。
 その男は大事そうに何かを抱えたまま座り込んでいる。
 
 抱えていた何か──それは良く見ると光輝く真ん丸の水晶のようだ。
 くしくも、人口召喚石の特徴と一致する代物。
 
 「お、お前の持ってるその石……! さては召喚石だなぁ!?」
 
 ソギマチが気付くのとほぼ同時に、隠れていた男も少女が仲間ではないことに気付き、慌てて声を荒らげながら逃げ出す。
 
 ──男の正体、それはピタやトメを捜索しにやって来た五人の冒険者の内の一人だった。
 
 彼は気絶したユイリー達を仲間と共に助けた後、召喚石を持って街まで逃げるという大事な役目を任された。しかし、吹き荒れる砂嵐により方向感覚を狂わされ街に戻れなくなった冒険者は、近くにあった岩場に身を潜める選択を取らざるを得なくなっていたのだ。
 
 「その石を置いてけ! そうすれば命だけは助けてやろう。ゆーこと聞かなければ、命もないものと知れぇ。」
 
 長い爪をチラつかせ凄んでみるソギマチ。見た目の小動物感ゆえに脅しの効果はほぼ無い。
 だが、隠れることを選んだ男にとってそれはほんの些細なこと。
 なにせ、最悪の出会いであることに変わりはなかったからだ。
 
 少女には幾らか付け入る隙があるように見えたが、自分にどうにか出来る相手だとは考えられない。
 自分の命とこの石を秤にかけた時、召喚石は軽かった──。
 
 「ほ、本当に、渡せば見逃してくれるのか……?」
 「ソギマチがオオカミ少年にでもみえるか!」
 
 少女は更に凄みながら男のクビに爪を突き立てた。
 
 男が裏返るか細い声で鳴く。
 
 「ひぃ〜!ネコミミ少女です……!」
 「よし、それでいいんだ。……ってよくない死ねぇ!!」
 「うわぁぁぁ!!」
 
 見逃すフリをしたソギマチが右腕を振り下ろす──。
 
 「なんて、ジョーダンジョーダン。逃げたきゃ好きに逃げて。」
 
 NGワード“ネコミミ”が明らかに逆鱗に触れたように見えたが、ここは意外にも寛容。街の大まかな方角まで丁寧に指し示して伝える。
 
 「ただし一言言わせてもらう……。ソギマチは強くて優しくて、こわぁいオオカミさんだ。ガオー。」
 
 脅かすように両手を上げて凄む。
 
 「でもそのミミ……」
 「ガオーー!!」
 
 自分はオオカミであると最大限のアピールで押し切った結果、男は殺られると勘違いしたのか人工召喚石を置いて走り去ってしまった。
 
 程なくして、男の姿は見えなくった。
 
 「……さて、誰もいにゃいね。」
 
 周囲を確認したあと、すぐさま召喚石の解体ショーを始めるソギマチ。
 
 だが、地面に叩きつけたり、爪で引っ掻いたり、噛み付いてみたりしてみても、身震いしたくなる不快な音が鳴り響くだけで召喚石にはヒビ一つ入らない。
 
 「ダメにゃこりゃにゃー。後でモテゾウに斬ってもらわにゃだ。」
 
 そう言って少女は意識を集中させる──。
 
 (モテゾウ! 聞こえる? )
 (生憎今は忙しく、いつもみたく小噺を聴いてる余裕は──)
 (暇で話してるんじゃないよ。召喚石が見つかったんだ! ソギマチじゃ壊せないから早く合流しようよ!)
 (あいわかり申した。では森で待たれよ。)
 (森ね! あいわかりした!)
 
 
 
──────────────────────
 
 ~~モテゾウサイド~~
 
 
 
 「そうか! これを待ってやがったのか……!」
 「おいおいおいっ。これこそどうすんだよ……?」
 
 直下砂嵐により視界を奪われた冒険者達は、サークルもとい武者を完全に見失った。
 
 「とりあえずおめぇら! 死んでもヤツに近付くんじゃねぇぞ!!」
 「何処かもわかんねぇだろが!!」
 
 パニックに陥る冒険者達を再びユイリーがなだめる。
 
 「皆さん、落ち着いてください! 見えなくはなりましたが、それ以外は何も変わってないハズですッ!」
 「そうだ。ユイリー殿の言う通り、ヤツ自身に動きはなかった。サークルの位置を把握したいのであれば、小石でも投げ込んでみたらいいじゃないか。」
 
 ピタの提案に冒険者が反応する。
 
 「なるほど、その手があったか!」
 
 さっそく小石を拾い投擲してみる。
 
 投げた小石が真っ二つに割れれば、そこがサークル内だと認識できる。
 逆に、小石に変化がなければそこが安全は場所である証明になる。
 
 原始的なやり方ではあるが十分有効策になりえる対処法だった。
 
 そんなピタの提案に更にトメが磨きをかけていく。
 
 「範囲の変化を知るためにも、継続的に小石を投げ続けることが先決ですわ。冒険者の皆様、どうかそのお役目を引き受けてくださいませんか?」
 
 既に互いの姿すらも見えていないのにも関わらず、冒険者は全員即答で顎を引いた。
 
 「そういう事ならオレ達に任せてくれっ。」
 「野郎どもッ!! オレたちで位置を割り出して範囲を突き止めんぞ!! ありったけの小石をかき集めろォォォ!!!」
 「「「おおおおお」」」
 
 意見がまとまると冒険者達の結束は固く、拾っては投げ拾っては投げを繰り返し、遂にサークルらしき境界線を発見した。
 
 「ここだ! まちがいねぇ!」
 
 手に持った大量の小石を投げ続けながら範囲を見極める冒険者達。
 
 石が尽きるまでのその間こそが、限られたラストチャンス。
 
 ここで打開策を──そう考えていたトメであったが、具体的に何をしたらいいのか簡単には思い付かない。
 
 ──四方から小石を投げ続ければサークルの穴が見つかるかもしれない。
 でももしサークルに弱点がなかったとしたら、今すぐ全員で逃げたほうが得策かもしれない。
 確率だけを考えれば逃げたほうがいい。ただ、そうすると男を倒すチャンスは二度と来ないかもしれない。
 それがのちのちに響いてくるなんてこともありえない話ではない。
 
 そんなことをぶつぶつと言いながら悩むトメを見て、ピタが痺れを切らしたように言う。
 
 「トメ、策を練っているところ悪いが、もう行かないと冒険者の連中が危険だ……!」
 「分かってますわ! でも、隙が見当たらなければ近付くだけでも自殺行為でしてよ!?」
 「だったらあれにも触れず本体を叩けるような便利な魔法はないのか?!」
 
 なんと強欲な事を言うのか。
 領域に触れず、本人のみを狙う魔法。
 そんな都合のいい魔法なんて────
 
 その時、トメの脳内にある魔法が浮かんだ。
 
 「 ……ユイリーさん! 聞こえる? 」
 「は、はい!」
 「アナタ確か、【バーニングストーム】をランクダウンさせたオリジナルの魔法が使えましたわよね! あれで本体のみを狙うことは可能でしてっ!?」
 
 その作戦、吉と出るか凶と出るか。
 
 

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