クラス転移したら俺だけステータスが現れた件

S・R

2話 俺は女の子が好きなんだぁぁぁ!

「おぉ!成功だ!成功したぞ!」

 眩しい光によって目を閉じた後、男性の声が響き渡る。
 目を恐る恐る開けてみると、そこには巨大な女神のような像に、壁際には大きく太い柱が幾つも並び立っていた。
 窓や風が通るような場所は一切なく、完全な密閉空間となっていた。
 見た感じでは教会のような場所だった。

「勇者様の召喚に成功した!ハッハッハ!昔の文献を見様見真似で儀式を行っただけだが成功したぞ!」

 またもや男性の声が聞こえてきた。
 真っ白なローブを羽織っており、神父のような格好をした男だ。
 両手を大きく広げ、なにやら喜んでいる。

「え.......へ?どういうことなんだ.......」

 光磨は呆気に取られた表情をし、周りを見渡していた。
 昔からの付き合いのある俺なら間抜け面を晒しているようににしか見えないが、周りの人たちから見たら、イケメンが周りを見渡しているようにしか見えないだろう。

「コ、コホン.......すまぬな。喜びのあまりはしゃいでしまった」

 それは周りに立っている大人たちに言ったのか、それともクラスメイトたちに言ってるから定かではないが、申し訳なさそうな表情をしながら謝罪した。
 それを見た周囲の大人たちは、額に手を当てて深く溜め息を吐いている。

「えっと.......はい。大丈夫.......です」

 まだパニクっているのか、光磨は途切れ途切れで返事をした。
 ちなみに、俺は顔を真っ青にしながら、プルプルと震えている。
 何故なら.......

「うぉぉぉい!ネットの回線が切れやがったぁぁぁ!あと少しでラスボス倒せたのにぃぃ!ぎぃやぁぁぁ!」

 オンラインゲームで知らないプレイヤーと協力プレイをしていたのだが、突然ネットの回線が切れてしまい、ラスボスにトドメを刺す直前にエラーになってしまった。
 お陰で、今は頭を抱えながら発狂しているところだ。

「お、落ち着いて!またやり直せば良いじゃないか」
「やり直せばいい?ここまで来るのにどれだけの労力と時間を使ったと思ってやがるんだ!落ち着いてられるかぁぁ!」

 俺は教科書でゲーム機を隠しながら、午前中ずっとゲームをやっていた。
 それでやっとラスボスまで来たのに、エラーで終わっしまうのは納得できない。

「なんだ!?新種の魔物か!」

 何かと勘違いしたのか、鎧を着た騎士たちは武器を構えて、俺へ刃を向けてきた。

「ちょ!なんで武器を向けるんですか!俺の友達です!」

 それを見た光磨は、急いで俺の前に出て庇う。
 俺が女だったら惚れてたな。

「ぬ.......よく見れば人間.......これはすまなかった」

 と言って、先程まではしゃいでいたオッサンが深く頭を下げる。
 つか、このナイスでハンサムなガイである俺を獣かなんかと勘違いしたのか?
 失礼な野郎だぜ。

「ふぅ.......落ち着いた?」
「おう。武器を向けられた瞬間に落ち着いたぜ」

 光磨は爽やかな笑みを浮かべ、俺のことを心配そうに見つめてきた。
 確かに落ち着いたが、あと少しでチビるとこだったのは秘密にしておこう。

「ねぇねぇ!やっぱり二人ってデキてるのかな!」
「敵に囲まれた姫を助ける王子様.......最高ね!」
「.......王子様は力及ばず姫を助けることは出来なかった。そして姫は王子様の目の前で外道な騎士たちに.......これ以上は進んだらダメな気がするわ!」

 光磨が騎士の前に立ってカッコよく俺を庇っている時、腐女子共は更にマニアックな話な内容を妄想し始めた。
 そして、俺は自分の尻を抑える。

「お、おい!俺たちは騎士なんだ!変な勘違いをしないでくれ!」

 俺の行動を見た鎧を着た青年が、顔を真っ青にさせながら弁明を始めた。

「ふぅ.......そりゃあ、そうだよな。こんな勇ましい騎士たちに男色趣味があるわけ.......」

 そこまで言いかけて、熱い視線を受けた俺は反射的に尻を抑えてしまう。

「俺は複数プレイと無理矢理というのが好きでないのだ!お互いに愛し合いながら掘るのが好きなのだよ!」
「ぎぃやぁぁぁ!来るなぁぁ!俺は女の子が好きなんだぁぁぁ!」

 頬を真っ赤に染め上げて鼻息を荒くしながら近づいてきたので、俺は全力で距離を取った。
 俺に男色趣味は無い!

「やめてください!修斗くんが怖がってます!」

 その時、今度は春が両手を広げて前に出てきた。
 その姿は英雄のように勇ましく、そして美しかった。
 はっ!?なんで俺は見惚れていたんだ。

「やめんか。その少女の言う通り怖がっているではないか」
「はっ!申し訳ございません!」

 神父が止めた瞬間、騎士の青年は姿勢を正して謝罪した。
 しかし、もっと距離を取りながら謝って欲しい.......近すぎるのだ。

「僕は男です!間違えないでください!」
「な、なんだと!?まさか呪いで美しい少女の姿にされたのか!」
「違いますぅぅ!これが元々の顔なんですうぅ!」

 珍しく春が取り乱している。
 女の子と間違えられるのが嫌なのだ、!

「う、うむ。立派な男を少女扱いするのは失礼であったな。何度も済まない」
「ほんと失礼しちゃいますよ!」

 春は頬を大きく膨らませながら、プンプンと顔を赤くして怒っている。
 誰がどう見ても美少女だ。

 そして、やっと話を進められると思った神父の男はコホンと咳払いした後、口を開いた。
 しかし......

「あ、そう言えば.......ここは何処ですか?」

 春は神父が話をしようよしているところを遮り、片手を挙げながら質問をした。

「うむ。その質問を待っていた」

 と言って、神父は満足そうに頷いて質問に答えた。

「ここは君たちにとっての異世界.......その名もエルドである」

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