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山口 犬

6-313 ハルナがいなくなった日6










剣の創造者は、そこから更に語っていく。
自身が盾の創造者に与えてしまった情報の罪の重さについて。





これはまだ二人の創造者が、剣と盾に形を変える前の話し。


以前のこの世界を司る二つの存在はそこに姿はなく、一つのエネルギー体として存在していた。
それでもこの世界の中を創造し、見守っていくことについては何の不具合もない。
この世界を構成する部品ではないため、それ以上のことを望むことはなかった。






この世界で、肉体的な要素以外の特別な能力を扱える者は、自然界の生物階級の中では優位な存在となる。
既に剣の創造者と共に創りだしたその能力を扱えるラファエルは、この世界の全てにおいて頂点に立つ存在となっていた。

盾の創造者は、なんとか一人だけで新しく得た情報を、自分の創った存在に組み込みたいという意志にとらわれ、元素を扱えるよう生き物を生み出そうと改造することを試みる。


だが、その試みは失敗に終わってしまった。
様々な種族に対して改造を試み、その能力を新たに付け加えようとしたが、全ての種族がまともに”生きる”ことさえもできなかった。
実験を行っていくと、ある理由が判ってきた。
それぞれの生き物が持つ機能の中に、既に元素を扱うための”機能”を組み込む余地がなかったためだった。今の各種種族の機能は、いま組み込んでいる全ての機能を使用して生命活動を維持していたため、これを変更したり、削除したりすればその精密なバランスによって保たれていたものが機能しなくなっていた。

それでも盾の創造者は諦めることなく、幾度となく実験を繰り返す。その機能を入れ込むために既に作っていた機能を削ったり圧縮したりなどしたが、結局は”不完全な生き物”ばかり出来上がり、とても生きていける状態ではなかった。


その裏で、この世界の生き物に新しい生物に新しい能力を持つ者が生まれてきた。

――それは、魔素を扱う者だった

そのことに気付いた盾の創造者は、魔素を扱う者たちに付いて調査を始めた。
魔素を扱えるようになった者たちは、この世界では亜人と呼ばれる生き物たちが獲得してた。
その中でも特に、長い寿命を持つ種別の者たちがその能力を獲得していることが多かった。

盾の創造者は、その能力が使える者を攫い、その中身を確認をする。
だが、その中身は最初に自らが設定をした状態と何ら変化は見られなかった。





盾の創造者は、自身が作り出した存在が意図しない能力を身に付けていることに疑問を持つ。


(……どうして?何が起きてるの?)


次に盾の創造者が考えたことは、どうして魔素という存在があったことをもう一つの存在は告げられなかったのかということだった。



(あの者は……何か隠していると?)



そう判断した盾の創造者は、これまでお互いに――特別な理由などなかったが――接触を避けていた自分と同じもう一つの存在を探し始める。

お互いは自由な存在のため、どこにいるかも知る方法はなく、連絡を取る手段もない。




そこで、盾の創造者はある手段によって剣の創造者を導き出すことにした。
それは、魔物という存在を生み出すことによって、いま暮らしている生き物たちの平穏を壊していくことから始めた。







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