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山口 犬

6-293 風香










ハルナはサヤからの言葉……自分を否定する言葉に全身の力が抜け、足場の上で座り込んだ。





自分では二人の仲は、そこまで悪くないと思っていた。
ちょっとした考えのすれ違いで、サヤは自分のことを勘違いしているのだと思っていた。
だから、その関係の改善も些細な”勘違い”を取り除くだけで、あの幼い頃の二人の関係に戻れるものだと、ハルナは信じて疑っていなかった。




だが今は、そんなに簡単なものではないとハルナは気付いた。
共に行動していたあの時でさえ、サヤは自分への怒りを抱いたまま一緒に過ごしていたのだという。
ハルナは、どうしてそんなにまで自分が嫌われているのか判らなかった。
その疑問を解消する唯一の手段として、ハルナはその疑問をサヤに投げかけた。




「……どうしてサヤちゃんは、私のことが嫌いなの?」





ハルナは高い位置から見下ろしていては、その問いに答えてはもらえないと判断し、途中で止めていた足場を再び戻していった。
盾の創造者はハルナに警告を発していたが、ハルナはそれ以上に自分が楽になりたいという思いから、頭の中に響く言葉を無視してサヤからの言葉を欲した。




ハルナが地面に到達しても、サヤはハルナに攻撃を仕掛けてくる気配はなかった。


サヤはゆっくりとハルナに近付き、地面に腰を下ろした。
ハルナもサヤに促されて、その場に座り込む前に土の属性により、その場に簡単な円柱状の物体を二つ用意しサヤもその上に腰を下ろした。





「……なんでアタシが、アンタのこと”嫌い”かって話だっけか?」




その言葉にハルナは、膝の腕で組んだ手に力を込めて頷いた。
それを合図にして、サヤはハルナに自分の昔の話を語り始めた。





二人は別々の親から同じ時期に生まれ、重なり合う接点は祖母が一緒であるということ。
ハルナは下に風香という妹がいたが、サヤは一人っ子だった。

少し離れた地域に住んでいたが、一般の道路で一時間もかければ到達するような地域に住んでいた。
そのため一家としての仲は大きな問題もなく、お互いの家族間での交流は盛んにおこなわれていた。

だが、年が重なるにつれて、サヤの中に一方的な軋轢が生れていった。

初めに感じたものは、風香という妹の存在だった。

ある日、ハルナに妹が生まれた。
誕生祝を行うということで、サヤの一家はハルナの家に招待された。
そこには、人形のような可愛い赤子が安らかな顔で眠っている姿があった。
サヤは片手に抱えてた人形を放り投げ、風香が眠っているベットの柵にしがみついた。

何の心配もしていないような表情で、ゆっくりと眠る姿……小さな爪がある短くて愛らしい手……弾力のある皮膚と少し離れていても感じられる独特の熱と香り。


そんな風香を見ているサヤの横に、ハルナがそっと近づいて同じように風香の姿を見る。




「どう?かわいいでしょ?私の妹なんだって……ずっと待っていたの。お母さんのおなかの中にいたんだってさ」


「へぇ……いいなぁ」





サヤの口から漏れた言葉は、自分にはいない姉妹という特別な存在が羨ましい感情から出たものだった。











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