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山口 犬

6-279 ニーナとステイビル8









「……はい?」


ニーナは驚く


「それは……一体……?」


「か、勘違いをするのではない!?ただ、嫌われるということに慣れていないのだ!?……いや、ちょっとまて!嫌われるのはどうでもいいのだが……いや、良くないが……ど、どうなのだ!?」



「わたくしは……ずっと、ステイビル様への想いは、これまでと同じく変わってはおりません。ですが、わたくしの身勝手なわがままでステイビル様を困らせてしまうのは、望むところではございません。ですから……わたくし……この国を……出ていきますので」




「早まるな、ニーナ!私はお前のことが嫌いというわけではない。だが、お前の気持ちには応えることができない……それだけだ」



ステイビルは、ニーナが泣き始めて言葉が途切れ途切れになっていることに、慌ててニーナが自分に対して抱いている勘違いを否定する。



「わたくしは、ステイビル様にわたくしだけを見て欲しいとは願っておりません。なぜならば、ステイビル様にはすでにハルナ様という、ふさわしい方がいらっしゃいますので。このような状況で万が一ステイビル様が私に好意を持っていたとしても……えっと、それはそれでうれしいのですが……い、いえ。それは、ただの同情でしかございません。本当にステイビル様が捧げるべき愛情の先は既にお決まりですので、わたくしは……わた……は……」



ニーナはステイビルが自分のことが”嫌いではない”という言葉に対し、心の優しいステイビルに甘えてはいけないと自分を戒めようとした。
それを口では反論しようとしていたが、耳に残っているステイビルの言葉がニーナの感情に浸透していき、嬉しさのあまりにあふれ出る感情が抑えられなくなっていた。



「……!?」


感情が溢れるあまりに両手で顔を塞ぐニーナは、自分の身に起きたことが信じられなかった。
この部屋の中には自分とステイビルの二人しかいないはずだが、自分のことを抱きしめてくれている人物がいた。
その驚きに涙は奥へと隠れていき、自分の身体をしっかりした腕ながら優しく包み込んでくれる感覚が心地よい。


「ステイビル……さま?」


その正体は見えないが、この状況を生み出しているとされる人物の名をニーナは口にする。
だが、その返事はいつまで経っても聞こえてはこない。

ニーナは顔を覆っていた手を外し、その手を自分を包み込んでくれている存在の身体へと恐る恐る回していく。
しかし、その行動にも相手から拒否をされることもなく、お互い二人の身体を支え合うような形となった。
ニーナはハルナに対し、謝罪の言葉を頭の中だけで浮かべる。
それと同時に、この時間だけは許してほしいと神々に許しを請う。


ステイビルとニーナはお互い近付きすぎているため、相手の顔は一切見えない。
だが、抱き合っている状況はお互いの身体の熱と、通常よりも早まる心臓の拍動が感じられていた。


「ニーナ……私の身勝手なお願いを聞いてくれるか?」


「……はい」


「お前はハルナがいない間は、私の傍で支えてくれないか?」


「もちろんです……わたくしは、ずっと……初めからそのつもりでおりました」


「……そうか。私の願いを聞いてくれるか」


「……はい」


二人はそれ以上の言葉を交わさず、お互いの顔も見ずこの体勢のまま時間が流れていった。








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