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山口 犬

6-269 ソフィーネとマーホン1








比較的ゆっくりとした朝を迎える。
エレーナと別れた後、ハルナはこれまでのことを思い出しながら、身体を横にした。
目を閉じて、眠っているのか起きているのかわからない状態のまま、ハルナは朝を迎えた。
それでも身体は、疲れたようすはない。


ハルナは寝袋から上半身を起こし、背伸びをして硬くなった背中を伸ばした。




「おはようございます、ハルナ様。よくお眠りになられましたか?」



テントから出てたき火の方へ歩いていくと、一番最後の当番であり、朝食の支度をはじめているソフィーネがハルナの姿を見付け声をかけてくる。



「おはようございます。はい、眠れましたよ」



「そうでしたか、それではこちらへ」




そういうとソフィーネはたき火の上で組み立てていた調理道具から少し外れた場所に椅子を用意し、ハルナに座るように誘導する。
ハルナもそれに応し、勧められた場所へ腰を下ろした。
ソフィーネは沸かしていたお湯をポットに入れ、少しポットを揺らして置いておく。
すると、お茶のいい香りが漂き始めた頃、ソフィーネはそれをコップに注き、ハルナに手渡した。


お礼を告げながら受け取り、カップを手にする。すると、お茶の温もりがゆっくりと手のひらから身体へと伝わっていく気がした。


朝といっても、まだ早い時間帯だった。
空は明るくなり始めているが、太陽はまだその姿を見せていない。
いつものハルナならもう少し眠っている時間だが、ソフィーネや世話をする者たちはこの時間から動き始める。



ハルナはコップの中身を数回口の中にいれ、身体の中からも温もりを広げていく。
そして、ソフィーネに向かって声をかけた。



「あの……ソフィーネさん。昨夜は煩くなかったですか?」



その言葉は、ソフィーネは最終当番であり、朝食の支度をし、さらには王都まで馬車を運転する役目もあった。
そのため昨夜のエレーナとの会話がすべては聞こえなかったにせよ、静かな夜の中で睡眠を妨げてしまったのではないかと思い聞いてみた。


「いいえ、大丈夫でしたよ?それよりハルナ様……気持ちは落ち着かれましたか?」

きっと、ソフィーネには会話が聞こえていたのだろうとハルナは判断し、そのことを気遣ってくれているのだと感じた。


「えぇ、大丈夫です。何とかやることをやってみようと思っています」


「それがよろしいかと思います……ですが、我々もできることはお手伝いいたしますので、お一人で気負わないでくださいね」



その言葉にハルナは、笑顔でソフィーネに応えた。


ソフィーネも王選の前から、ずっとハルナに付き添ってくれていた。
未だにメイヤとの仲は良くはないが、本気で憎んでいることもない。
それでも、ソフィーネはハルナのことを本当に近くで見守ってくれているありがたい存在の一人だった。


「では、そのまま少しお待ちくださいませ。皆様が起きてきましたら、お食事にしましょう」


「何か、お手伝いしましょうか?」


「いえ、ハルナ様にやっていただくことはございません。そんなことをさせてしまっては、私が叱られますので」


「……では、ハルナ様。わたくしがその間ご一緒させていただいても、よろしいですか?」


ハルナは、朝早くの時間に集まってきたもう一人の人物に声を掛けた。


「おはようございます、マーホンさん」







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