問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』
6-248 声
背中に、これからのハルナの行動に対して、興味を示しているステイビルたちの視線が感じられる。
その緊張のせいか、心拍数が上がっていき心臓の拍動する音が耳の中まで聞こえてくる。
ゆっくとハルナは、壁との距離を詰めていく。
これまで”あの”世界で起きた盾の崩壊が、何の意味があったのか。この盾が本物であったとして、あの時と同じような行動を取った場合どういう結果になるのか……
ここにきて、今まで考えてきた答えがもうすぐわかるとなると、ハルナはさらに緊張して手のひらに汗がにじむ。
手にした盾を滑らせないために、ハルナは一度自分の服で手のひらの汗を拭きとった。
ハルナは壁に掛けられていた盾に手を伸ばし、軽く引き上げてL字の金具に引っ掛けられていた盾を取り外した。
手にした盾を裏返してみたりして、何か変なところが無いか、傷やひび割れなどがないか確認した。
そして、問題がないことを確認するとハルナは気持ちを落ち着ける。
特に変わりがないことを確認すると、ハルナはゆっくりと深呼吸をして、盾に意識を集中させた。
この部屋に充満している、かなりの量の元素をハルナは自分の中に取り込んでいく。
その流れで、手にした盾の中に元素を流し込んでいく。
「……ハルナ。それじゃ、足りないんじゃない?」
エレーナは、ハルナが何をしているのかを見て、自分の感想を伝える。
ハルナは、エレーナの言っていることが判っていた。
万が一この盾が壊れてしまったら、これ以上にハルナの知りたがっていることに対しての繋がりが途絶えてしまうことが気になっていた。そのため、ハルナは別な世界で盾を壊してしまったことが頭の中に残っており、ついつい慎重になってしまっていた。
しかし、エレーナの言葉にハルナは意を決して、その言葉に応えることにした。
「いく……よ?」
「――えっ!?」
エレーナは後ろに倒れそうなほど、見えない勢いがハルナから噴き出るのを感じた。
それは、ハルナの扱う元素の量が通常の精霊使いの量とは……それだけではなく今まで見たハルナが扱っていた量よりもさらに大量の元素を扱っていることに驚いた。
その量は、この部屋に充満していた密度の高い元素だけでなく、自分の中にあった元素もハルナの中に引きずり込まれていっていた。
そしてこの部屋の元素がほとんどなくなってしまったとき、ハルナの注いでいた元素の流れも止まってしまった。
この部屋に満たされていた多量の元素と、ハルナが保有していた考えられない程の元素が、全てこの盾の中に注ぎ込まれていった。
「……」
ハルナは、これ以上の元素を注ぐことはできないと、盾を再び壁に掛けようとした。
『……』
ハルナの耳に何かが聞こえた気がする。
ハルナは後ろを振り返り、エレーナたちの姿を見る。
「……なに?」
振り返れたエレーナは、ハルナの突然の行動にその理由を聞く。
「……いま、何か言った?」
「何も言ってないけど?」
『……ぁ』
「……え!?」
今度はエレーナにも、その声が聞こえてきた。
『……きこえ……すか?……るナ……こえま……』
今度は、何者かにはっきりと呼ばれている気がした。
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