問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』
6-219 接触
その言葉を聞き、ステイビルは手にしていた料理を器において、テーブルの上に置いてあった布で口元を拭う。
「よし、今行く」
ステイビルの言葉に頭を下げ、伝令を伝える者は再び前線へと戻っていった。
そして十分程度の時間で、ステイビルは呼ばれた場所に出向いた。
「ステイビル様」
アルベルトはステイビルの姿を見付け、エレーナを置いて後方に下がっていく。
そして二人して使者に背を向けて、これから話す内容を悟られないようにした。
「アルベルト……これは?」
そこには既にアルベルトとエレーナがおり、グラキアラムからの使者と既に接触を行っていた。
だが、アルベルトとエレーナが問いかけても、その使者はステイビルだけに伝えるようにとの命令を受けていたようで、その内容を二人に明かすことはなかった。
「そうか……ご苦労だったな」
ステイビルはそう声を掛け、自分が来るまでに対応をしてくれたアルベルトを労った。
その言葉にアルベルトは一礼し、先に進み始めたステイビルの背中を追って歩きだした。
ステイビルは訪れた使者の後方に、軽度の武装をしたドワーフとエルフたちが整列しているの確認した。
再び視線を目の前に戻し、エレーナの近くにいる――恐らく自分のことを待っている――よく知ったドワーフの姿を見付け近付き話しかけた。
「デイム……今回は何事ですか?」
「お久しぶりです、ステイビル様……いや、今は国王様でしたね」
「今までのようにお呼びいただいて構わないですよ?それより……これは一体?」
「それはこちらのセリフですよ、ステイビル様。あなたこそ、こんなに連れてきて一体何をするおつもりなんですか?」
質問を質問で返し……さらには東の国王であるステイビルに対してのデイムの失礼な言動に、一部の兵士が怒りを表に出した。だが、それを兵士全体を仕切るアルベルトが手を挙げて制した。
本来であれば、そこからデイムに兵士の無礼を詫びることになるはずだが、アルベルトも兵士たちの気持ちが判らなくもない。その場は、お互いの気持ちを汲んで、制した以上の対応はとらなかった。
デイムもその対応に対しては、何の反応も見せずに、アルベルトに視線を一度ずらしただけで終わった。
「デイム……我々は、グラキアラムが急に連絡を閉ざしてきた理由が知りたい。何か知っていることはないか?」
「その件について、イナ様からステイビル様だけをお連れするように言われております……ご同行願えますか?」
「ちょっ……ちょっと待って、デイムさん!?今はステイビル様は一国の王なのよ?そう簡単に一人にさえるわけには行かないわ!?」
「大丈夫です……決して危害は加えませんし、お話が住みましたら無事にこちらまでお送りします」
「ですが、我々はその要求はのむことはできません。それであれば、我々も何もしないのでステイビル様についていくことは可能ではないですか?」
エレーナとアルベルトの言葉に、デイムは少し苛立ちを見せる。
強引にステイビルだけを連れて行こうかという考えが浮かび、それを実行しようとしたその時。
「待ちなさい、デイム」
並ぶ兵士の間をかき分け、デイムの背後からニナが声をかけた。
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