問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

6-204 違和感14








「な……なぜ私が王国を抜け出してきたことを……!?」


驚くキャスメルにカステオは説明をする、西の国から東の国へ状況を探らせているスパイがいたことを。
当然、西の方へのスパイも送っていることを知っているが、東西どちらともその存在を看過している。
それは敵対を監視しているだけでなく、自国にとって相手国に反逆の手を持ち掛ける不穏な存在がいないかということも含まれる。

その一環として、キャスメルとステイビルのことも西の王国から送っていた諜報員によって、情報はカステオの元にも入ってきていた。




「そ……そうだったんですね」


「まさか、東の王子で”あった”キャスメルが知らなかったとは……失礼。そんなつもりで言ったのではない」


キャスメルは頭の中でつい先日まで競い合っていた兄弟のことを思い出す。
ステイビルはこのことを知っていたのだろうか……もし知っていたのであれば、知らなかったのは自分だけではなかったのだろうかと。

キャスメルは、せっかく忘れていた胸の苦しみが再び襲ってきた。



「そこで……だ。ステイビルがハルナと婚姻の儀式が始まる前にひと騒動を起こし、儀式を先に延期させ、そこでニーナのことをステイビルに伝えたいと考えている」



「しかし、そんなことをしてもステイビルがニーナ様のことを気に入るかどうか……」


「……そこは考えがあるのだ」


「考え……ですか?」


「そうだ、それはな……」





カステオは自分が考えていた内容を、キャスメルの耳の傍で伝える。
その案を聞いて、キャスメルにも責任があるため、この案に乗ってくる可能性が高いと感じた。


その案は、西の王国の国宝の剣が元になっていた。


キャスメルは闇の力を浄化する力があると、西の王国の国宝である剣を借りたままになっていた。
しかしその剣は、今現在どこにあるのかわからなくなっているという。
その国宝を紛失してしまった東の王国に対して、その責任の譲渡案として今回のニーナの受け入れを承諾してもらうという案だった。
だが、キャスメルはその案に何か物足りなさを感じていた。
本当にそれだけで、ステイビルはニーナとの関係を受け入れるのかということを。



「キャスメルのその表情も判る……ステイビルという男は、それだけでは決してこちらの案を飲むことはないだろう」


「――え?」



キャスメルは、カステオの言葉に驚く――自分の表情から思考を読み取り、それに対して間違っていないという態度で話を進めてきたことに。



「そこで……だ。その交渉に対して、こちらの”味方”となる者が欲しいのだが……」


味方と言われても、キャスメルの中には自分を推してくれる一部の貴族と、長い旅を共にした者たちしか思い浮かばない。
しかも、キャスメルとのつながりが強い王選の仲間も、半分はもうすでに自分から距離を置いていることは知っていた。
だからこそ、カステオが望む協力者という者に対して思い浮かぶものがなかった。

そしてまたしても、カステオはキャスメルが口にしていないその不安に対して自らが用意していた案をキャスメルに投げかけた。




「何……協力と言ってもそれは決して人だけではないはずだ」







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