問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

6-173 見覚えのある者19








隊長が今ここでやらなければならないことは、この男が騎士団という集団から離脱することの阻止だと考える。
そのために、今この男からの問いに対してどのように答えるべきか考えた。



「だ、だからと言って団を抜けることは許されるものではないぞ!?それに……それにだ、このまま騎士団に所属していても、お前の強さを磨くことは可能だろうが!!」



その言葉を聞いている男は、アルベルトから戻された剣を掴み相手と打ち合った剣の痕を見つめる。
鍛えられた鉄と研ぎ澄まされた刃は、騎士団の中でも特急品の道具を渡されていた。
アルベルトと打ち合った剣の痕は、今まで見たことのない力だけでは付かないような傷が打ち合った数だけ残されていた。
その傷は、きっとこの剣以外であれば、その技によって折られていた可能性が高いと男は推測する。
自分の剣の丈夫さに、初めて男は感謝の気持ちを抱いた。
男はゆっくりと膝に手を付いて立ち上がり、ゆっくりと休ませるように剣を自分の腰の鞘に戻した。




「そうか……そういうところなのか……」


「な、何がだ!?」


「ふん……何でもないさ。あと、いくら止めようが俺はいま、この時点で騎士団を抜けさせてもらう」


男はそういいつつ、頭にかぶっていた防具を取り、腕、体幹、下肢など自分の身を守っていた王国から支給されていた防具を全て取り外した。



「これは、お前たちに返す。だけど、これだけは……頂いておくぞ。今までの王国を勝利に導いた……そう、手間賃としてな」


男は腰に下げた剣の鞘を数回軽く叩き、無理やりにでも自分の意見を通そうとする意志を示した。




「ば、バカな!!そんな身勝手な行動が”はい、そうですか”と簡単に許されるわけがなかろう!?それに、集団を何だと思っている!!お前の勝手な行動によって、仲間の命を奪うことだってあるのだ。騎士団お前を中心に動いているわけではない、”私”がこの場預かる隊長だ!!……おい、お前たち!」


隊長が合図をすると、真っ先に騎士団と兵士たちがこの男の周りを取り囲む。
その際に、防御に特化した兵が前列で取り囲み、その後ろに槍などを持った兵士たちが身構える。
そしてその後ろには、精霊使い達が防御と攻撃をできるように兵に護られるように配置されていた。


この陣形は、万が一この男が反乱を起こした際にと――この男には知らされていなかった――極秘で知らされていた陣形だった。
男は剣の熟練度は高いが、槍や弓などのそれ以外の武器は長けてはいなかった。
こうして中距離を保ちつつ一斉に槍などで遠くから攻撃すれば、いくらこの男でも無事はずはないと準備をしていた。



「ちょっと卑怯じゃないの、それ!?」


エレーナはこの状況を見て、思わず口を挟まずにはいられなかった。


「だまれ!これはこちらの問題だ!!次はお前たちだ、そこで大人しく待ってろ!!!」


隊長がそう叫ぶと、男を囲む外周から精霊使い達が攻撃を仕掛けるために準備を始めた。
エレーナとミカベリーには肌で感じるほどの元素が集まっていく感覚が判る、それがこの男に対して一斉に浴びせされられたら決して無事では済まないということも。



エレーナは、男を守るために自分の力で出来る限りの準備をしようとする。
が、腕の中にいた我が子が不快感からか大声で泣き始めた。









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