問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

6-167 見覚えのある者13









「え?」

アルベルトに命を助けられたと同時に、自分の立場にも気を使ってもらったことに対し、この精霊使いの女性は完全に理性という壁が崩壊してしまった。



「わかりました……」


そういうと女性はアルベルトの裏側に回り、ベットの反対側に向かって歩いていく。



「私、今からあなた達をお守りします!」


「「……え?」」




その対応に驚いたのは、アルベルトとエレーナだった。


「ちょっ……ちょっと、待って!どうしてあなたが……私たち……を?」


エレーナの言葉に、勢いで出てしまったことに後悔してしまう。
好きになってしまった人の奥さんに、その理由など口に出せるはずがない。


「わ……私が……そう!私があなた達を助けたいのです!!」


「そ……それは……助かるけど……?」



その間にエレーナは、生まれたばかりの我が子を自分の胸の中に抱き寄せ、その子の安全を確保する。




「いいのですか?……本当に」


「え!?えぇ……お、お任せてください!」



アルベルトは、突然味方に付いた精霊使いの女性を心配する。
しかしその精霊使いは、問題ないとのことだった。
考えたくはなかったが、この精霊使いが自分たちを油断させて裏切ることも考えた。
だが、今までの経験から、この女性の言葉には嘘が含まれていないとアルベルトは判断した。
なぜか同性に厳しいエレーナからしてみれば、その考えは”甘い”と言われていただろう。

自分が他の女性に対して肯定するような判断を下した場合に、良く指摘されていた。
そのためその心配の根源は、他の異性に向きはしないかという心配もあったのだろうと判断していた。
だがそれも、アルベルトと一緒になり二人の子を授かってからは、その対応も次第に少なくなっていった。



エレーナは、アルベルトが行った確認した内容を聞き、この女性を信頼することにした。
今のこの状況はかなり不利で、少しでも味方が欲しいところだった。



「ありがとう……あなた、名前は?」


「そうですよね!?私の名前は……」



精霊使いが、エレーナの言葉に応えようとしたその時……


「お前もこの愚か者たちと共に王国を裏切るのか?……”ミカベリー”」

「う、裏切るも何もこれが本当に王国のやり方なのですか!?私は”王国の方が間違っている”としか思えません!!」



ミカベリーのこの言葉を聞き、エレーナはこの女性が本当に自分たちに味方をしてくれているのだと確信した。
そうとなれば、ミカベリーの安全も確保しておかなければならいと、静かに眠るわが子を再びベットの上にもどし、エレーナは足元にかかっていた布をまくり上げた。
そこにはきれい肌の太ももがさらけ出され、この場にいる男たちはその視線を一瞬エレーナの足元から離した。
エレーナは何事もなかったかのようにめくれていた足元を服装で隠し、ベットから足を下ろして床に立ち上がった。
それと同時に、自分の背後に無数の凍りの粒を浮かび上がらせて この場の緊張感を高ませた。



「……さぁ、逃げるなら今のうちだからね?久々だから手加減できないかもしれないからごめんね」









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