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山口 犬

6-130 ソイの記憶2











「お前は……ジュエ……俺の妹、ジュエのことを覚えているか?」



ステイビルはその名を聞きいても、表情は変わらなかった。
ソイはその気配に苛立ちを感じながらも、ステイビルに怒りのこもった言葉を続ける。



「そうか……お前にとっては、そんな小者の娘など記憶にないということか、外道め!?」




ソイはそう言って、奥歯を強く噛みしめてその力によって痙攣したように顔が振動している。
そのことからもステイビルに対して、並みならぬ怒りを抱いていることがイナやナルメルにも伝わってきた。


「で、その娘はいま……どこに?」


「お前が命令して殺したんだろうがっ!!!親もいない俺たちはただ生きようとしただけだ!!それを……それを……お前が……お前たちがその暮らしをっ……!!!」



興奮のあまりに肩で息するソイの呼吸を、ステイビルは冷静な目で見つめている。
そして少し呼吸が落ち着いた頃、別な質問を投げかける。



「すまぬが、お前……いや、お前たちの身に何があったのか説明をしてくれないか?」

「っ!?どこまで俺たちを馬鹿に……!いいだろうとも……俺たちに何があったか、お前たちが何をしたのか教えてやる、自分が犯した罪をよく聞け!!!」




そう声を荒げたソイは、今の自分がこのような状況になるまでの経緯を話した。
どうせこの状態では自分の命はなくなることが決まっている……ならば、今までの自分の恨みを全てステイビルにぶつけて呪いながら死ぬことをソイは選んだ。






「俺たちは親のいない者たちを引き取っている施設の中で育った……」



その施設は、ソイランドとフレイガルの途中にある村で、王国によって造られた町だった。
施設に入る理由は様々で、国を守るために親を失った者、一般国民であっても国に認められた者、そして大きな力を持つ家から推薦を受けてやってくる者がいた。

ソイとジュエは、幼いころからとある商人の家で使用人として暮らしていた。
親の顔は覚えてはおらず、自分たちがなぜこの場所に居るのかもわからなかった。
この家では、子供でも人としての扱いがされずに、”奴隷”のような仕打ちをうけていた。

それはソイだけに限らず、他の子供たちにも同じ境遇だった。

だが、ここでは食事もとれて、雨風をしのぎながら屋根の下で眠ることができる。
この家の主は、時々子供たちを……特に男性の子供を寝室に呼んでいた。
もちろん、ソイも玩具として扱われてはいた。
それさえ我慢すれば、ジュエと二人でここにいることができると、ソイは自分を押し殺し働いた。


ある日ソイの運動能力の高さが買われ、その家から王国運営の施設に移動することが決まった。
ソイはこの施設に入る際に、ジュエと一緒にという願いを出した。
本来であればソイ一人だけだったが、ジュエをあの家に残しておけば何が起きるかわからないと、二人一緒でと懇願し、王国もソイの資質の高さを買ってその要望を受け入れた。




その数年後、王子の命令と言われ女性の従者を差し出すことになった。
その対象に、ソイの妹であるジュエが選ばれることになっていた。








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